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エッセイ𓆸こういう事を考えている

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何も考えず生きていくのは楽で怖いので、時々考えるようにしている。 思いつくまま。エッセイ。
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記事一覧

怖いこと

怖いこと

2024.4月

子供の頃、死ぬのが怖かった。
怖くて怖くてたまらなかった。
あの頃死ぬ事は、ママとパパと(ついでに兄にも)会えなくなるということだった。

次に怖かったのが誘拐される事で、誘拐も会えなくなるから。

-完全に母に見せられていた火曜サスペンスの影響だったと思う。火サスは私の人間形成に大きく関わっている。-

子供の時、だから私はいつも毎夜、死神にも悪い大人にも見つからない様に、布団

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私きっと慣れないよ。

私きっと慣れないよ。

ちょっと振り返って2月のこと

「ここに骨壷でいてもおかしくなかったなぁ」
炬燵で寝転がりながら父が言った。

…本当だよ
私にもリビングに骨壷が置かれている光景が容易に想像できた。

「神様がパパを返してくれた。最高のプレゼント。」
2日後が誕生日の母が涙ぐみながら喜んでいる。

同じリビングで、同じ日のことだ。

…カオスだ。



1月突如入院した父は、家族に大きな打撃と数えきれない恐れを

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頭の中の蜘蛛の糸

頭の中の蜘蛛の糸

2024.1月末

白い半透明の糸が1本、左右に渡っている。

その糸は時にピンと張ったり、だらりと垂れ下がったり、太くなったり千切れそうな程に細くなったり、朝露をたたえたり、カラカラに乾いたり、変容していく。

ああ、蜘蛛の糸だ。と思う。
横に張った、蜘蛛の糸。

という情景がもう1週間頭の中に浮かんでいる。「切れないで欲しいと」ずっと。ずっと。ずっと、

原因不明の発熱で父が入院してから約2週

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水玉の世界を生きている

水玉の世界を生きている

2023年、年末

あれ、あの人最近見かけないな。
職場に向かうバス停で、ふとそう思った。

朝、テレビで目にした『今年亡くなった有名人特集』のせいかもしれない。
1年を振り返るみたいに思い返す。

クリニックで働いている。

患者さんの中にはやっぱり印象的な方もいて。
祖母に瓜二つのあの方や、おばあちゃん役の片桐はいりさんにそっくりなあの方や、来たことを忘れて日に何度も来ちゃうあの方や、笑い方が

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それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

12月の、たぶん今年最後の満月の日

四分の1ほど残ってた綿棒を落っことして全部ダメにしちゃったのはクリスマス前で、ひとり大騒ぎしていたら夫に「俺、綿棒使わないしな」って言われた。

クリスマスを何日か過ぎた夜、会社から帰ってきた夫が「買ってきたよ」って渡してくれたのは綿棒だった。
毎日毎日買い忘れて帰ってくる私に気がついていたんだって。

それってやっぱりアイラブユーじゃん

「愛してるってこと

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それはもう綱渡りをする人みたいに

それはもう綱渡りをする人みたいに

12月末 すごく年の瀬。

遅い通勤、駅までの道を俯いて歩いていたら視界に靴下が入った。

靴下?

ちょっと色褪せた水色地、側面に沿って白い線が一本入った靴下がすいすい視界の左上を出たり入ったりしている。

え?と思って顔を上げたら2メートルほど先で若い男の子が右足の靴を脱いで逆さまにしていた。バランスをとる靴下の右足は器用で、綱渡りの人のそれの様で、何度かすいすい、すいすーいとした後に一度も地

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安全なこっち側の世界で卵の如く(散文)

安全なこっち側の世界で卵の如く(散文)

 9月、台風がきた。金曜日

 雨は言われていたよりもひどくなくて、少し肩透かし。被害が無くて喜ぶべきだ、わかっている。喜んでいるしホッとしている、けれど少しだけ残念に思ってしまうところもあり、私の大人の部分が罪悪感を抱える。私の中にはまだ初めての雷に興奮したあの頃の、保育園児の私が生きている。脈々と。

 昼。歯医者に行こうと外に出たら寒くて、出掛けに部屋に戻ってシャツを羽織った。東京で真夏日じ

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私の後悔。夫の後悔。

私の後悔。夫の後悔。

「今日、閻魔様に判決を下されるんだって。」

 お義母さんのこの言葉、2回目だなぁと思いながら頷いたところで車は寺に着いた。
 「3回忌のタイミングで、閻魔様が天国に行くか地獄に行くか決めるんだって」先月の電話でも義母は教えてくれた。

 義父の3回忌の法事の日。カンカンと晴れ。
 葬儀の日は雨だったなぁと空を見上げる。
 3回忌と言ったって日程は生きてる人間に合わせているので、閻魔様もこちらの都

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ある日々。散文として。

ある日々。散文として。

ある日曜日。夫が買ってきてくれたモスバーガーの袋を開けたら、ジンジャーエールとオレンジジュースが、ものすごい緑の液体となんか溶けた泡に変容していてめちゃくちゃ笑った。
 飲んでみたらメロンソーダとたぶんコーヒーシェーク。
 コーヒーシェークは溶けまくっていてなんだか飲んじゃいけないものみたいだったし、メロンソーダは家で見ると緑すぎた。



ある月曜日。父と母を大きな病院に検査に連れて行った。病

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とうもろこしの皮を剥く ✈︎(コロナが5類になった日)

とうもろこしの皮を剥く ✈︎(コロナが5類になった日)

5.8 月

 褒められる事が好きなタイプなので、連休は夫の好きなものばかり作ってしまった。(どうせ作るなら褒められたいじゃない)
 初日こそ手巻き寿司だったけれど(カレーが食べたいと言い張る夫をねじ伏せて)、コロッケ、ハンバーグ、唐揚げ、カレー、ささみカツ、コロッケパン、生姜焼き。間にマックを挟んだ。
 実にやんちゃである。昼・唐揚げ、夜・カレーなんて日もあって、もう完全に成長期。身長伸びてるか

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運命の出会いも白馬の王子もタキシード仮面もネッシーも探せばいる

運命の出会いも白馬の王子もタキシード仮面もネッシーも探せばいる

 見たことが無いものや体験した事が無いことはみんなおとぎ話だと思うタイプだ。

 運命の出会いなんて無いし、白馬の王子様も居ない、タキシード仮面はただの変質者だし、ネッシーはハリボテらしい。
 だから絶対に、うそ、大袈裟、夢物語、と思っていた、四十肩。

 ギックリ腰はわかる。やっちゃったんでしょ?ぎっくり。うんうん、やりそうやりそう。ぎっくり。従兄弟もやってた。
 ヘルニア、わかるわかる英語ね英

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プリン編[料理エッセイ・食べる記憶#2]

プリン編[料理エッセイ・食べる記憶#2]

 プリンが食べたい。

 夜中に浮かぶこの手の衝動はいっそ暴力的に頭の中を支配していく。

 プリンが食べたい。

 なめらかなプリンも良いけれど、今食べたいのは昔ながらの硬いプリン。作れるだろうか。と考える。
 プリンって結局、出汁を牛乳に変えた茶碗蒸しでしょ?

 プリンは硬めがいい。カスタード部分はさっぱりと、カラメルはほろ苦く、さらりと流れるものが良い。

 頭の中にあるプリンは、どこで出

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コロッケ・白玉編[料理エッセイ・食べる記憶#1]

コロッケ・白玉編[料理エッセイ・食べる記憶#1]

 料理エッセイが好きでよく読む。読むだけで幸せになれるから。

 料理も好きだ。
 料理中、過去の記憶がこぼれ落ち私の心はとても饒舌。

2月 祝日

 夜。なんの材料も無いなぁと思いながら冷蔵庫を漁っていたら、先日買ったまだ芽が出ていない元気なじゃがいもと、少し前に冷凍してあったひき肉が出てきた。(ちなみに野菜室の奥には芽が出ているじゃがいもがあって、そっと見守っている)
夕食にコロッケを作る。

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軽やかでいたい

軽やかでいたい

 マンション入口の御影石に一粒、節分の豆が転がっていた。黒に白が映えるなぁと思いながらぼうっと見つめる。
 節分からひーふーみー…え?すごい日にちが経っているのに、鳥は食べきれなかったのだろうか?
 撒かれすぎて飽きたのかもしれない、し、もしかしたら節分の豆なんて本当は食べたく無いのかもしれない。撒いた後の事は鳥に任せようなんて人間のエゴなのか。

 キョロキョロと私が撒いたピスタチオを探してしま

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