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旅で見つけた"スキル”を磨く二拠点生活。フリーランス料理人の挑戦【おてつびとインタビューVol.36】

今回は東京と愛媛の二拠点を行き来し、料理人として活躍している霜鳥 豊さんにお話をうかがいました。

●参加したおてつたび●
愛媛県今治市「旅館さわき

ご経歴を教えてください

現在、出張料理人として都内で働きつつ、愛媛県の旅館でも働く二拠点生活をしています。

元々は料理の専門学校を卒業し、レストランに勤めていました。その後フランスで洋食の修行に励み、帰国後は都内のブラッスリーでシェフを約7年ほど経験。34歳で独立し、出張料理サービスのシモラボを立ち上げました。

そして、2022年におてつたびで訪れた愛媛県大三島(おおみしま)の旅館さわきさんにご縁があり、現在は1ヶ月のうち3週間は旅館さわきで働き、残りの1週間は東京で出張料理人として働いているんです。

愛媛県今治市「しまなみ街道」にある大三島。瀬戸内の海に囲まれている

おてつたびを知ったきっかけ

2019年頃に『ガイアの夜明け』というテレビ番組でおてつたびが特集されていたのを見たんです。「面白いサービスだな」と思いましたが、その時は忙しかったのですぐに行こうとは思いませんでした。

34歳でフリーランス料理人となりましたが、新型コロナが流行し、仕事が減ってしまった時期がありました。せっかく時間があるなら、今このタイミングで日本各地の食材や郷土料理を学びたいと思うようになり、おてつたびの募集を見るようになったんです。

食材や料理に関われる募集を中心に探していたなかで見つけたのは、愛媛県今治市の大三島にある旅館さわきでした。大三島は瀬戸内海に面しており、海と山の食材に恵まれています。最初は初めての環境に飛び込むことに不安もあったのですが「学んだことは今後の仕事にも活かせるはずだ」とポジティブな気持ちが不安を上回り、思いきって申し込むことにしたんです。

初めて訪れた大三島。ここから新しい生活がスタートしました

おてつたびではどんなことをしましたか?

2022年7月、旅館さわきでのおてつたびが始まりました。調理場のお手伝いで魚の下処理をしたり、布団の上げ下げや洗濯をしたりと旅館全般の仕事をしていました。

本当に色々と勉強になりましたね。自分はもともと洋食を専門にしてきたのですが、和食はやり方が全然違うんですよね。刺身の切り方、魚の下処理の仕方など、毎日が学びの連続でした。

旅館さわきは家族経営で、料理は大将と女将、若旦那がメインで切り盛りしていました。パートの方も多くいらっしゃるのですが、みなさん長く働いている方が多かったですね。女将や若女将をはじめ、働いているみなさんはお客さま想いでお話上手。自分も出張料理人としてお客さまのお宅に伺って料理をご提供するので、おもてなしの面でも学ぶことが多かったです。

お話上手で名物となっている仲居さん
(お客様も笑いが絶えないそう…)

女将さんは本当に愛情深い方です。従業員への愛情も深くて、賄いにもその愛が溢れていましたね。

一日の旅館業務も終盤を迎えた頃、女将さんは忙しそうに動き始めます。従業員みんなの賄いを作るんです、それも毎日。揚げ物や焼き物、煮付けなどのお料理も手間ひまかけて作るんですよね。本当に凄すぎます。そして、仕事が終わった方からそのお弁当をひとりひとり受け取って帰っていくんです。なんなんだこの温かさは……と一人で感動してしまいました。

一日のお仕事が終わる頃、部屋で一つ一つ賄いの味を噛みしめると、本当に旨いんです。料理も愛情の深さも、全てが勉強になります。ありがたいことですね。

女将が毎日手作りする賄い弁当。従業員ひとりひとりへの愛情がこもっている

そんな女将さんから、おてつたび中に「よかったらこっちに来てみない?」と声をかけていただきました。僕自身はフリーランスで身軽でしたし、もっと勉強したいと思っていました。それに温かく面倒をみてくださる旅館さわきに居心地のよさを感じていたので、東京と愛媛の二拠点生活を始めてみることに決めました。

これから挑戦したいこと

しばらくは出張料理人として旅館さわきと東京で活動を続けていきます。将来的には、日本各地、そして世界各地を周りたいと思っています。これはもう心に決めていることですね。僕は人と人をお繋ぎするのが好きですし、これからは“食“を通して人と地域も繋げていきたいと思っています。

料理をする時は、その土地の素材の魅力を引き出すことを大切にしている
ご家族の記念日、会社のパーティーなど、これまでさまざまな場所で料理を作ってきた。人の笑顔を見るのが大好き

夢を目指すなかで、旅館で島の歴史・文化・郷土料理を学べたことは本当にありがたい経験でした。本来は、いざ料理の勉強に行くとなると宿舎も交通費も全部かかるものですよね。おてつたびを活用すると、宿泊先もあるし時給もいただけるので、その点が本当に魅力的だし貴重に感じました。この経験を活かして、料理の幅を広げていきたいと思っています。

さわきでは、毎日活きのいい大量の魚と出会える。それぞれの魚の声を聞きながら、丁寧に調理する
大三島に来たら、ぜひ大将と若旦那のつくる舟盛りを食べていただきたいです。本当に美味しいんですよ
約30年間さわきで働いているベテランのパートさんからも、郷土料理の作り方を教えていただきました。地の素材を三杯酢に漬けるところ
旅館の隣で経営するうどん屋さんの厨房にも立つ。うどんの製麺や出汁づくりにもこだわっている

おてつたびの魅力は?

おてつたびのいいところはたくさんありますが、最大の魅力は人との出会いだったと感じています。旅館の方もそうですし、一緒になったおてつたびの仲間も普段の生活では絶対に会えないような方ばかりで面白かったですね。20代の若者から定年退職した方まで、いろいろな人とコミュニケーションを取ることができました。

おてつたびの旅人は一人で来る人が多いので、芯があって強い人が多い印象があります。大学生でもバックひとつで知らない環境に飛び込むわけですから、ある程度の覚悟がないとできないですよね。ひとりひとりに強さがあって、だからこそ話していて面白いし刺激をもらえました。

また、おてつたびでは携わったことのない分野の仕事も経験できますし、どんな職種の方にとっても学びが多いと思いましたね。

おてつたびを利用してみたい方にひとこと

出張料理人として活躍する霜鳥さん。お客さまのご自宅にて

実は僕、おてつたびを利用するかどうか1年くらい迷っていたんです。当時、僕は料理のプロとして働いていたものの、自分に未熟さを感じることも多く「これからどうしようか」と悩んでいました。

環境を変えたいと思いながらも、30代半ばだった僕は新しい場所に飛び込むことに勇気がいりましたし、フリーランスで独立していたので、再び組織のなかで働くことに葛藤もあったんですよね。

でも「やったことのない仕事を経験してみたら、新しい道が開けるかもしれない」と一歩を踏み出し、結果的に旅館さわきで人生が変わり道が広がりました。

振り返ってみると、おてつたびはメリットがとても多かったと思います。百閒は一見にしかずといいますが、本当にそう。話を聞くだけでなく、自分で経験することは何より大事だと実感しました。もし参加を悩んでいる方がいたら、あれこれ考える前に一度飛び込んでみてはいかがでしょうか。きっと、新たな発見がありますよ!  

編集後記

料理に情熱を注ぎつづける霜鳥さん。得意とする西洋料理に加えて和食の知識も身に着け、夢に向かってぐんぐん進まれている姿にエネルギーをいただきました!

しまなみ街道は、いつか行きたい場所のひとつです。訪れる際には、大三島にある旅館さわきさんに泊まって、地元のお料理を食べてみたいです……✨これからの活動も応援しています。ありがとうございました😊

【取材:園田 稚彩 執筆:やまくぼ


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