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天怪地奇の中国


天怪地奇の中国

 中国に関する随筆【ずいひつ】集です。主に、中国に伝わる不思議な話を取り上げています。

 本書の帯には、こうあります。(一部に、環境依存文字があります)
 『ワンダーランド中国では、馬は舞い、鳥は喋【しゃべ】り、鬼は跋扈【ばっこ】し、人は大酒を呑む。  一読すれば哎呀【アイヤー】、驚倒【ビックリ】!』

 まさに、このとおりの本です(^^)
 中国の文化が好きな方、不思議な話や妖怪が好きな方に、お勧めです。

 本書の著者は、中国美術史家だそうです。博覧強記ぶりに、感嘆するばかりです。この方でなければ、本書はならなかったでしょう。心から、そう思います。

  この方の語り口も、いいのですね(^^) 平明で、誰にでも、わかりやすいです。それでいて、品を落としてはいません。上品な文章、という言葉が似合います。
 「古き良き中国」が、この方の文章に、凝縮している気がします。

 本書の中で、私が好きな話を、一つ、挙げてみましょう。

 唐の時代のことです。都の長安に住むある商人が、隴山【ろうざん】というところで、一羽の鸚鵡【おうむ】をつかまえました。自在にものを言う鸚鵡でした。商人は、鸚鵡をとてもかわいがりました。
 ある時、商人は、無実の罪で投獄されてしまいます。幸い、数日して、疑いは晴れました。家に帰った商人が、我が身の不運を嘆いていると、鸚鵡が言いました。

 「数日、牢獄にいれられたくらいで、いつまでも嘆かれますな。わたしなどはもう何年ものあいだ籠【かご】の中にとじこめられたまますごしているのですよ」

 商人ははっとして、鸚鵡を、もとの隴山へ放してやりました。
 そののち、商人の友人や知人が隴山を通ると、木の枝にとまった鸚鵡が、

 「私の御主人様は、その後つつがなく元気におすごしでしょうか。どうかくれぐれもよろしくお伝え下さいまし」

 と言うのでした。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

第一章 舞う馬
第二章 佳人
第三章 虎
第四章 北京の鮎
第五章 漂流
第六章 瓢箪【ひょうたん】のみのるころ
第七章 狐惑
第八章 仙人の山
第九章 年越しの酒
第十章 正月の酒
第十一章 鳥のこころ
第十二章 長命菜
第十三章 名は呉妙応、七百余歳
第十四章 犬の微笑
第十五章 墓中の不思議
第十六章 隣の鬼
第十七章 怪しの石
第十八章 猫の鼾【いびき】
第十九章 水仙の夢
第二十章 老舎茶館にて
第二十一章 そは何物ぞ

あとがき



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