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放火の報道はテロリストを利する可能性がある件

▼今年の1月、〈「クールジャパン」の裏側ーーアニメの綱渡り〉というメモをアップした。

▼上記メモで紹介したのは、

「20代で平均月収9万円」

「深夜アニメでは年に何回か、どこかの作品で、絵が乱れる「作画崩壊」や、放送延期といった事態が起こっている。現場の頑張りでギリギリもたせる綱渡りが続いている。」

などの現状、そして、「クールジャパン」を盛り上げようとしてきた経済産業省が、「アニメを支える極めて重要な皆さん」であるアニメーターを、直接支援することはない、と明言した事実などである。

▼昨日、海外でも大きく取り上げられた「京アニに放火」の大ニュースに、筆者は言葉を失った。2019年7月18日21時03分配信の京都新聞記事から。

〈33人の死亡確認、平成以降最悪 京都アニメーション火災〉

〈18日午前10時半すぎ、京都市伏見区桃山町因幡の映像制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオで、近隣住民から「建物1階で爆発音がし、煙が出ている」と119番があった。市消防局によると、3階建て建物が全面燃焼し、従業員ら男性12人、女性20人、性別不明1人の合計33人の死亡と36人の重軽傷者を確認した。火災による死傷者数が60人を超え、平成以降で最悪の大惨事となった。京都府警捜査1課と伏見署が、殺人と現住建造物放火等の疑いで捜査している。

 京都府警によると、出火当時、従業員や出入り業者73人がいた。1階に侵入してきた男(41)が受付近くでガソリンのような液体をまき、「死ね」と叫びながら火を付けたとの目撃情報がある。男はポリ容器を持ち、現場には複数の刃物とハンマーが落ちていたという。府警は付近の路上で男の身柄を確保したが、男も負傷しており、現在は病院に搬送されている。府警は男が建物に放火した疑いがあるとみて、回復を待って事情を聴く方針。

 また府警によると亡くなった人の発見場所は1階に2人、2階に11人、2階から3階への階段に1人。3階から屋上への階段が19人だった。

 午後4時現在、消防車両65台が出動。午後になっても鎮火せず、逃げ遅れた人がいないか確認作業を急ぐとともに、救護所を設置するなどした。

 京都アニメーションは1981年創業。「響け!ユーフォニアム」や「けいおん!」などの人気アニメを制作している。〉

▼京都アニメーションの第1スタジオの防災対策がどうなっていたのかも気になるが、それよりもはるかに気になったのは、〈捜査1課によると、確保された男と似た人物がこの日、容量20リットルの携行缶二つを持って近くのガソリンスタンドを訪れ、ガソリンを買っていた。現場近くに携行缶二つと台車のほか、包丁数本とハンマーが入った手提げかばんとリュックサックが残されていた。〉(2019年7月18日、朝日新聞デジタル)という報道だ。

今から2カ月後の9月から、ラグビーのワールドカップが日本で開催される。来年には、東京オリンピックが開催される。

筆者は不勉強で、40リットルものガソリンを、ガソリンスタンドで、携行缶で買えることを知らなかった。

世界的には有名な京都アニメーションの建物で、こんなにもたやすく悲惨な事件を起こすことができるということを、世界が知った。放火した人には、おそらく政治的なテロの意図はなかっただろうと思うが、この放火のニュースは、テロを起こそうと考えている人に対して、「日本の弱点」を世界中に知らしめた。

▼京アニで放火するよりもはるかにセキュリティーのゆるい、チケットを買えば誰でも入れるスタジアムにせよ、駅にせよ、誰でも入れる銀行にせよ、デパートにせよ、こうしたニュースが詳しく報道されればされるほど、それらの場所を狙ったテロの手口も増える可能性がある。

2015年には、東海道新幹線で焼身自殺した人がいた。そのせいで、巻き添えで亡くなった人がいた。あの事件も、テロ対策の観点から見ると、今回の事件と似ているのかもしれない。

そうした事件を報道するメディアの動きは止めようがないし、止める必要もない。日本のテロ対策の部署が、この事件を受けてどのような有効な対策を講じるのかが気になる。

(2019年7月19日)

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