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【映画感想】Coda あいのうた

耳の聞こえない家族を昔から献身的に支える主人公・ルビーが、家族や自分のやりたいことに向き合う様子が描かれた作品「Coda あいのうた」。

ひとつの作品を通して様々な感情、考えを巡らせた。相変わらずとっ散らかっているけれど、熱が冷めないうちに書き留めていく。普通にネタバレしています。

家族仲が良くて、ルビーは通学しながらお家の漁業も支えている。毎朝3時起きで漁での仕事をして、学校の授業も頑張っている。本当に凄いし立派だ。その反面、家族への違和感もあった。

家族をサポートするのが日常で、通訳を雇うなどのお金をかけられないから学生の娘が身を粉にして家業を助ける家庭環境…。リアルだなと思うし、実際はもっと大変な家庭もあるのだろう。
程度が違えど、辛いものは辛いし、きっと弱音を吐けない、頼れない人も多いはずだ。ルビーが授業中に居眠りしてしまうのも、ちょっとは許してほしいと思ってしまった。

とても仲が良い家族だけれど、家族で唯一耳が聞こえるルビーが陸での仕事の通訳で頼られっぱなし。今までもたくさんやりたいことがあったと思うけれど、それを諦めて家族を優先してきた責任感の強さ、費やした時間の大きさ、彼女の悲しさを感じた。家族からの重圧を感じるパートは観ていて辛くなってしまった。家族もルビーを頼らざるを得ない状況で、もどかしさも感じていただろうな。

歌うのが好きで合唱部に入り、そこから少しずつ自分が目指したい道が見えて、家族と向き合ったり、葛藤する彼女が、たくましいなと思った。

V先生という癖の強い素敵な指導者に見出してもらえたことも、本当に運が良かった。それも、過去にトラウマがあっても「合唱部に入部する」ことを決めた彼女の選択から始まった。人生の分岐点だなと思う。

最終的にルビーが自分のやりたいことを選択して、ある意味、”家族の呪縛”から解放された光景に、私自身も非常に励まされた。

もちろん家族のことを支える選択も、素晴らしい決断だ。やりたいことがあったのに自分を押し殺して選んだ選択でなければベストだけれど。本人が納得する決断であれば、何を選んでも腹をくくってやっていけると思う。


映画から少し離れるけれど、なかなかの家庭環境で育っていると「早く実家出たほうがいい」とか「やりたいことをやりなよ」など、周りに言われることが多いはずだ。

ただ、複雑な環境で育ってきて家族にずっと頼られてきた子供が、その環境から抜け出すには、相当な覚悟と、きっかけを掴む力が必要だと感じる。
ルビーの場合は、歌の存在が本当に大きかったのだなと、映画を通して改めて実感した。


耳が聞こえなくても、ルビーの歌で人々が楽しみ、涙する様子を見た父親の心境の変化にも、グッとくるものがあった。家族みんなでルビーの進路を応援してくれる様子も、嬉しく感じた。


当日になって音楽大学の試験に行く急展開には洋画らしいスピード感を感じた。思い切りがあっていいですよね。観た後に、背中を押してもらえる、爽やかなあたたかさも感じられる作品だったな。

《children of deaf adults》聴覚障害のある親をもち、自身は聴覚に障害のない人。

CODA(コーダ)の意味 - goo国語辞書

タイトルの意味が、ルビーの家庭での状態と、次の章に進む「Coda」のダブルミーニングだと知った。彼女は幸いにも、自分の新たな章に進むことができた。板挟み状態になって、もがいている人にも、一つのきっかけを提示してくれるような作品かもしれない。


沢山ある映画作品の中で、こうして心が揺さぶられる一本に出会えたことで、自分の凝り固まった考えや荒んでいた気持ちが、少しずつ解れていく気がする。普段観ないようなジャンルも沢山観ていきたいなと思った、休日の午後でした。


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