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振り返ればいつも死んでいた

今日、部屋を片付けていると昔の会社の給料明細がわんさか出てきた。丁寧にB5の小さなファイルに挟まれていて、パンパンに膨れ上がっていた。そのままポイっと捨ててしまいたいところだが、当然のごとくめちゃめちゃ個人情報だし何かしらの処理を施さなければならない。そのまままた放置しようかと一瞬考えたが、割とかさばるソレはいつか始末しなければならないのだから、と鉛のように重い腰をあげることにした。
家にある手回し型のシュレッダーは「2枚以上入れないでください」と注意書きがしてあった。しかも紙を入れる口は小さい。そんなこと言われても、困るんだよなあと半泣きになりながら手で4枚に縦に引きちぎるところからスタートする。ちらっと中身を見てみると、2017年9月と書いてある。約2年前かあ、と思う。


確か2年前は名古屋に出張に行って、お店の開店準備を手伝ったはず。初めての出張。周りは旅行気分で軽く行ってきなよ、なんて言っていたけれど、全然そんなことなかったし、むしろ社運をかけた売り場づくりをしなければならないと色々な思惑に巻き込まれ、何度か肝を冷やしたような記憶がある。早めにホテルに帰ってゆっくりできるなんて、嘘をつかれてホテルに帰れたのは夜中の0時で、そこからパソコンを開いて溜まっている仕事を処理したんだった。全部、全部、嘘じゃんか、と。
ちょっと思い返しただけで、ぐんにゃりとした気持ちになる。思い出してしまった記憶を抹消するかのように、勢いよく手回しのハンドルをゴリゴリと前に回す。


社会人になってまあまあな年数が経った。転職をしてしまったから、何年目という意識がより希薄になっているが恐らくは5年目になるんだと思う。この5年という年月を振り返ると、いつも私は死んでいた記憶しかない。死んだ魚のような目をしながら、日々を生きていた。その年月に生み出したお金の明細は、今私の手によって切り刻まれているわけだ。
あの時はいつ日の目をみるんだろうと思っていた。ライターや編集といった、文字に携わる仕事を追い求めていたはずなのに、新卒ではメーカーの営業。最終的には自分が選択した仕事ではあったけれど、当初の目標とはかなりズレていることは分かっていた。ここからどうやって編集者に繋げるんだ?とずっと思っていた。やりたいことがあるのに、うまく摑み取れない。自分の現状に、自分の将来に悲観して、死んでいた。

けれども、周りからも引かれるくらいの異常なまでの執念が今の仕事、「編集者」に繋がっているかと思うと、未来とはどうなるかわからないなと思う。営業で手に入れたちょっとした経験を次のとある仕事に繋げ、そこで培ったちょっとした編集経験を、さらに編集者という仕事に繋げることができた。泥水をすするような険しい道のりだったけれど。パラパラと細かく刻まれた明細を眼下に、そんなことをぼんやりと考えた1日だった。

いつもたくさんありがとうございますっ!