【短編小説】地球救済作戦
巨大な月の前にある一隻の宇宙船。それは地球を救う為の希望の星。成功すれば、人類史に残る大偉業。しかし失敗すれば、人類史なんてもの自体なくなるし、そもそも地球がなくなる。そして今、船内にいる二人の男の頭には、失敗の二文字が渦巻いていた。
「もう終わりだ。地球に残した家族も、ローンを組んで買ったマイホームも、地球も俺も、すべて終わりだ……」
沈痛な面持ちで口にするのは、伊澤一。この宇宙船の飛行士であり、地球の救世主である。いつもは、見事にセンターで分けられている黒髪だが、今は