見出し画像

【船頭多くして船山に登る】(新釈ことわざ辞典)記事版

結果的に船が山に登るようなイノベーションが生まれれば、当初の目的と異なるとはいえ、こんな素晴らしいことはない。しかし、ほとんどの場合、船頭たちは行き先や航海法を巡って主導権を争い、疲れ傷つき、船は難破する。野党共闘はなかなか成功しない。

まもなく始まる参議院議員選挙でも、《野党共闘》はあまりうまくいっていないようですね。
前回の衆議院議員選挙で立憲民主党が共産党と組んだら大企業労組の立民党離れが起こりました。

《船頭》がたくさんいると、乗船客は、
「一体、船はどちらに進むのだろう?」
と不安になります。
《船頭》の思惑もそれぞれ異なっていることが航海中に顕在化し、互いを罵り始めたりすると、船から降りたい、という客も出てきます。

共闘の《目的》は、
野党が団結し、選挙で政権与党を打ち破ろう!》
ということだったのですが、
『船頭多くして……』となってしまいました。

いや、待てよ……。

『……船、山に登る』だったよね?

いっそ、《野党共闘》して、本当に山に登ってみてはどうでしょうか

➀ まず、《選挙》は忘れる。忘れることにより、各選挙区の候補者はどーのこーのといった《もめ事》から解放される。

➁ 国会では、政府与党を追及するのは《本質的な問題》のみに絞り、スキャンダルは《文春砲》などに任せて、時間とエネルギーを節約する。

➂ 野党間の理念や路線の違いは一切無視する。「野合じゃないか!」と言われたら、「野合結構!」と答えよう。

そして、結集したエネルギーの全てを、

《議員立法》


に注ぎ込む
のです。

朝・昼のワイドショー、夜のニュース番組を見ていると、深刻な国内問題、例えば、
・空き家の放置問題だったり、
・水害危険区域の宅地乱開発だったり、
・栄養不足下にあるネグレクト児童への対応だったり、
・デジタル通貨によるマネーロンダリングの問題だったり、
・オンライン診療が普及しない「壁」の存在だったり、
ありとあらゆるケースでコメンテーターが口にするのが、

『法制化が遅れている』

です。
しかも、個別の問題が発生し、真因が顕在化するたびに、

『法制化が遅れている』

何度も何度も、同種の問題で出現するワードです。

だったら、ワイドショーやニュース番組で、
『法制化が遅れている』
といわれるたびに、法案作成の是非や優先順位を吟味し、重要な案件から作成・提出に取り組んではどうでしょうか。

え? なんですって?
「与党と違って役人を使えないから、情報不足で不十分な法案になってしまう」
「提出したって、多数与党に否決されてしまう」
「どうせ野党案が否決された後で、よく似た与党案が出てきて成立し、手柄を横取りされてしまう」

それでもいいじゃありませんか。
野党共闘のおかげで、積年の問題に対する「遅れていた法制化」がようやく実現したのです。
《自己満足》しようではありませんか。
《幸福とは自己満足にある》のです。

『船頭多くして、船が《議員立法》という山に登った!」
ことに自己満足し、幸せを感じましょう。
苦労して法案を作った《野党共闘》のメンバーは、もうすっかり「同志」です。「チーム」です。

……あれ? ……あれれれ?
……確か、小学校6年の「社会」科で、「三権分立」について習った時、国会の役目は「立法」でしたよね。
だったら国会議員は、法案を審議するだけでなく、議員立法した法案をどんどん提出してもいいはずです。

だったら、それは「船が山に登った」わけではなく、
《船頭が多くても、船が進むべき方向に進んだ》
というわけですか。
もめがちな「選挙」とか「理念」ではなく、《具体的な問題解決》が推進力となり、チーム一丸となってひとつの方向に進んでいったのですね。

え、なんですか?
「自己満足じゃ選挙に勝てないよ。選挙に勝たなきゃ政権は取れないよ」

「選挙で勝つ」のは、《手段》であって《目的》ではないです。
《手段》を先に考えるのではなく、まずは政治の《目的》である、《課題解決》に力を注ぎましょうよ。政権与党ではない野党のみなさんにとってのそれは、

《議員立法》

です。

そして《選挙》では、(公約もいいけれど)議員立法による提出法案とその審議過程を《実績》として掲げましょう。
その中で、ひとつひとつ説明しましょう。

「この法案は、多数与党に否決された」
「与党が否決した後、パクリ案を出してきた」

有権者は、おそらく、
《A党とB党が選挙協力をしている》
ことよりも、
《A党とB党がチームを作ってこんな法案を提出した》
ことに関心があると思いますよ。

……もちろん、野党のみなさんは既に《議員立法》に努力されています。でも、法制化が遅れている課題はもっともっとたくさんあります。
本記事の目的は、
《野党共闘》は、そこにこそ全力を尽くし、素晴らしい《野合》の実績として欲しい
── というです。

どんな議員立法法案が提出されているのでしょうか? 我々有権者は、知らなければいけませんね。
・内閣法制局の議員立法データは、

・野党第1党である立憲民主党が関与した提出議員立法データは、

にまとめられています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?