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とある妊婦の脳みそ【8】クックパッドの主婦モチベ引き上げ力のすごさを勝手に語るよ

前回、妊婦ボケの話をした。

そんな脳みそが溶けかかった日々、ウクレレと並行してはまったことが、もうひとつ。

それが、お菓子づくりやパンづくりだ。

主婦の趣味としてはド定番、なのかもしれない。

だが、それまでは「何かイベントごとがあるときにだけ重い腰をあげてドッコイショとお菓子づくりをする」程度だった自分にとって、「朝起きて粉から作った焼き立てパンを朝食に食べるのがさほど珍しくない」程度にまで日常に手作りが溶け込むというのは、個人的にはかなりの革命だった。

これもひとえに、食い意地のおかげかもしれない。

食べることが好きで、よかったなぁ。

*  *  *

ところでそんな中、たくさんお世話になったのが、言わずと知れたレシピサイト、「クックパッド」だ。

もちろん、以前からレシピを閲覧するだけの用途ならばよく使っていたのだが、なんとなく煩わしさを感じて無料会員登録などはしていなかった。

それが、料理の頻度があがるとレシピをストックしたくなって、「まぁ、しかたないか」と当初はしぶしぶ無料会員登録をしたのである。

自分は傍観しているだけでいいと思っていたのに、ついに、会員たちがこぞって「つくれぽ(そのレシピを見て実際に作ったよ!と報告する、写真入りのミニ投稿)」をやりとりしていたりする、あの“クックパッド・ワールド”に足を踏み入れてしまったのだ。

いやはや、しかし。

最初はそんなふうに、むしろ抵抗感を持ちながら登録したはずなのに、しばらくしてみたら私もいつの間にか、せっせと「つくれぽ」を投稿したり、なんならレシピもちらほら投稿するようになってしまったではないか。

失礼ながら以前は「ただのレシピサイトなのになぜこんなに人気サービスなんだろう」とすら思っていたが、そんな自分の変化を経て、「あぁ、人気サービスになるにはやっぱり理由があるなぁ」と認めざるを得なかった。

というわけで今回は、そんなふうにナナメから見ていた生意気な主婦がまんまとのせられてしまった、クックパッドのサービス設計のすごさについて(私個人が勝手に思ったところを)書いてみたい。

*  *  *

まず、主婦のモチベーションを引き上げるしくみがすごい。

女性の好きな、「ちっちゃいご褒美」がどんどんくるのだ。

例えば自分で新しくレシピを投稿すると、必ずまずは「新着レシピ」のページに表示される。

全国から続々と投稿されるので、twitterのタイムラインのようにすぐ後ろへ流されて目立たなくなるのだが、すぐに表示されることでまずはちょっと嬉しくなる。

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そして、その後のフォローがすごい。

特に自分が初めて投稿したレシピには、逐一こまめにお知らせがくる。

「あなたのレシピが新着レシピに掲載されました!」

「あなたのレシピが初めて(だれかの)Myフォルダに入れられました!」

「あなたのレシピが初めて印刷されました!」

noteをやっている方なら、この「反応がどんどん返ってくる」ことがどんなにモチベーションを引き上げてくれるか、実感としてわかってくれる方も多いはず。

また、いわゆるMyページからは毎日のアクセス数を見ることができ、その推移も折れ線グラフで毎日確認することができる。可視化というやつだ。

自分のレシピがどれだけの人に閲覧され、何人のMyフォルダに入れられ、印刷されたかも、ひと目でわかる。加えて、「今週、あなたのレシピが●●●回見られました」と、週間レポートまで届けられる。

さらに、初めての「つくれぽ」が自分のレシピに届いた日には「祝!つくれぽ」というサブタイトルつきで「このレシピに初めてのつくれぽが届きました」とお祝いすらしてくれるのだ。

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しかし、何よりすごいと思ったのは、利用者の母数がとてつもなく多い分、何のつながりもない無名の人が突然ポッと登録してレシピを投稿しても、上のようなお知らせが、驚くほど短期間のうちにどんどん届くということだ。

つまり、新参者の受け入れ体制がすごい。

レシピさえよければ、例えばtwitterやnoteのように、フォローしてフォローされて……と頑張ってつながりをつくろうとせずとも、勝手に評価されて人気レシピになれる会員の土壌と運営のしくみが用意されている。

世の中にはいろいろなSNSがあるけれど、人気サービスになってから登録しても新参者には楽しさがよくわからないままフェードアウト……ということが多いと感じていたので、クックパッドのこの「救い取り力」には感動。

むしろ、“さほど興味を持たずにやむを得ず登録してみた”私のような新規登録者に、“サイトの楽しさやしくみをちゃんと伝えて継続的なファンになってもらう”ことをとても意識しているのだな、と感じた。

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実際、私がポッと出で会員登録し、初めて投稿したレシピもそれなりに人気レシピとなった。

するとまた「あなたのレシピが人気検索でトップ10入りしました!」「あなたのレシピが人気検索で1位になりました!」と逐一お知らせが届く。

そしてそのレシピに届いた「つくれぽ」が10件になると「話題のレシピ」というページに表示され、メールでも「あなたのレシピが話題入りしました!」と教えてくれる。

もちろん人気検索のランキングは毎日のように入れ替わっているし、話題入りレシピも大量にあるので、すぐに流れていく(その分、多くの人が人気入りしたり、話題入りしたりすることができる)。

それでも、どんなに小さくても、誰かに評価され、「おめでとう! 話題! 人気!」と言われると、楽しくなってしまうのが人情というもの。

特に主婦になると、掃除や洗濯をしても褒められることはなく、おいしいものを作っても毎度感想を言われるわけでもないから、「自分が起こしたアクションに対する誰かのちょっとしたプラス評価」が、ものすごく嬉しかったりするのだ。

この“小さいご褒美がどんどん届く”しくみ、さすがだなぁと思ってしまう。

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三大欲求のひとつである「食」というキーワードを軸にしたSNSと、ベテランから新参者まで、幅広い層の主婦のモチベーションをたくみにあげるフォロー体制。

うーん、すごい。

だがもっとすごいと思ったのは、その人気が何年間も続いていることだ。

さきほどの新着レシピ欄を見ていると、本当にどんどん、気持ちのよいくらいのスピードで会員たちが自分のレシピを投稿していく様子がわかる。

朝でも昼でも、夜でも。日本全国の人たちが今も、ものすごい勢いでレシピを投稿し続けている。

これだけ大量のレシピがすでに登録されていて、もう飽和しているんじゃないか?と思っていたのだが、ここも、さすが新参者にもやさしいクックパッドさん。

クックパッドの利用ガイドラインの中には「同じ料理でも、ちょっとしたコツやアレンジを加える創意工夫によってわがやの味があると考えている」ということが書かれていて、「クックパッドは、この創意工夫の積み重ねが、より気持ちよく活発に行われる場になりたい」とつづっている。

例えば肉じゃが、のような定番料理でも、“その人なりのひと工夫”があるレシピならば喜んで受け入れる。似たような料理でも、ちょっとしたオリジナリティがあればよしとする。その方が楽しい。

がちがちの規則で縛るのではなく、そんな自由度の高い姿勢でいてくれるからこそ、投稿するほうも遠慮なく、次々とレシピを投稿したくなるのだ。

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最後になるけれど、「つくれぽ」が続々と投稿され続けるしくみもうまいなぁ、と嘆息してしまう。

会員は、Myフォルダと呼ばれるところに自分の気になったレシピを登録しておくことができるのだが、この「好きなレシピの保存可能数」は「つくれぽ」を投稿することによって増やせるというしくみがあるのだ。

自分のつくった料理記録を紹介したいという以外にも、「保存レシピ数を増やしたい」というわかりやすいモチベーションがはたらくことによって、「つくれぽ」投稿の母数が増える。

すると、すでにあれだけたくさんのレシピがあるにもかかわらず、新参者のレシピに対しても、それなりのレシピにはそれなりの数の「つくれぽ」が届くのだ。

そして「つくれぽ」が届くと、レシピ作者もモチベーションがあがる。新しいレシピを作りたくなる。さらにサイトが活性化する。

そんな好循環が生み出されているなぁ、と思う。

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ところで、これだけいろいろと暑苦しく語っているものの、私はクックパッドの回し者でもなんでもない。単なるいちユーザーである。

ただ、過去に少しでもマーケティングやPRをかじった身として、いち主婦となった今、改めてクックパッドのサービス設計に感銘を受けただけなのだ。クックパッドさん、そりゃ人気出るわ、がんばってるわと。

以前のnote、「人はいつも自分の目線でしか世界を見られないものでして」に書いた話とつながるが、“違う立場に身を置きながら、それとはまったく違う立場を高い精度で想像し、捉えられる”ということが、私にとっては深い尊敬の対象なのである。

“妊婦”というテーマからはもはや関係なさそうな今回のトピックだけれど、これも私にとっては、妊娠して主婦という立場になって初めて気づけた世界のひとつ。『とある妊婦の脳みそ』的には間違っちゃいないのです(笑)。

当然のように生活に浸透しているサービスこそ、その裏側を想像してみるとおもしろい。

とある妊婦の妄想は、今日も自由にかけめぐる。

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。