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あなたの思い出買いますから(仮)

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悲し思い出。しあわせな思い出。ひとには必ず思い出の品がある。そんな思い出にまつわる品ものが集まるお店のお話です。
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あなたの思い出買いますから(仮)④

あなたの思い出買いますから(仮)④

 バスケットの中を見るとこの匂いのワケがわかった。紅茶が茶葉が入っていたからだ。それも高級そうな英国紅茶。 もしかしたら何十年も時を経てこの中で忘れさられていたのかもしれない。
 多分あの息子さんのお母さん、つまりおばあさんのものだろうから、置いてある場所から考えるとかなり背の高い人が上にあげたのだろう。
おばあさんの旦那つまりおじいさんが上げたのかな?
と、頭の中にお爺さん像が浮かんだ次の瞬間、

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あなたの思い出買いますから(仮)フランスアンティーク③

あなたの思い出買いますから(仮)フランスアンティーク③

日中は、まだまだ日差しが強く、汗がじわじわと滲んでくるが、ふと吹く風や日陰に入るとサラッとした感触の空気を感じる。秋がゆっくりとやってきているんだなと、開けた窓から入る風で感じながら作業を続けていた。

普段使いの食器や、カトラリー、台所周りの調理器具をワレモノ 、金属、燃えるものなどに分けていき手早く袋やカゴに分けていき、有名なメーカーの食器などは「イカシ」ボックスに丁寧に入れていく作業を繰

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あなたの思い出買いますから(仮)                                    第1話 フランスアンティーク②

あなたの思い出買いますから(仮) 第1話 フランスアンティーク②

何が見えるのかというと、もし曰く付きならそのモノにまつわる人や思いが、スライドみたいにパッ、パッと変わりながら見えてくるのだ。
前から霊感的なものは強かったが、この仕事を始めてすぐにそんな能力(能力と言えるかどうかわからないが)に、少しずつ気づいてきて、あることをきっかけに、一気に開花してしまったのだ。

それは、ある老夫婦にまつわるものだった。

いつものように社長の携帯が鳴って仕

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あなたの思い出買いますから(仮)

あなたの思い出買いますから(仮)

第1話 フランスアンティーク遠くで事務所の電話が鳴った。察するに仕事の依頼のコール音だった。
僕がいる作業場は、離れた事務所に電話はあるが、社長の携帯と連動しているから携帯と固定電話の両方が鳴るようになっていて、フリーダイヤルと普通の電話でコール音が違うので仕事の依頼かどうかすぐわかるようになっていたのだ。

「はい。便利屋です。どのようなご依頼でしょうか?」社長の声が聞こえた。

僕が

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