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この世のものとは思えぬ悪臭に出くわした話

※性的な表現を含みます。苦手な方は読まないようにしてください。

※未成年の方は読まないようにしてください。









史上最凶の悪臭に出くわしたことがある。

その哀しくも儚い記憶を、ここに供養する。

以前、街コンに行ったことがある。
出会いを求める男女が集まるイベントであり、仲良くなれば連絡先を交換して後日デートなどし、そのまま交際に繋がることもある。

そこで、お互い第一希望同士でとある女性とカップリング(アプリで言うマッチングのようなもの)をした。

ややぽっちゃりはしていたものの、顔が可愛く好みのタイプで、アニメの話などで盛り上がった女性だ。
仮に加奈と名付ける。
今思いついた名前なので、特に意味はない。


後日デートをしたのだが、やはり会話のテンポなども合い楽しい時間を過ごした。
相手からも好印象だったように思う。

そして2回目のデートだが、加奈の家に行くことになった。

と言うのも、加奈がLINEでプリンターの調子がおかしいと話していたのだ。
そこで、直せるか分からないけど私が様子見に行ってもいい?→いいよ という流れだ。

プリンターの具合を確かめるという名目で、加奈の具合を確かめようとしていたのが本心だが。


さて、加奈の家に行き約束通りプリンターを見たのだが不具合の原因はよく分からなかった。

その後は映画を観たり談笑したりして過ごし、なぜか泊まることになったのでお風呂を済ませ…。

始まった。イチャイチャが。
(倒置法)

実はこの時点で不穏な空気は少し感じていた。

(あれ、思ったよりふくよかだな…。)

元々ぽっちゃり体型というのは分かっていたが、出会いが冬だったので服である程度体型が隠れていたのだ。
薄着になったところをよく見ると想像以上にふっくらしていた。

まぁ多少の誤差は許容範囲だ。
ハグ、キスなどをした後セオリー通り上半身から攻略していく。

服の中に手を入れた時、ある違和感に気づく。

む…胸が…

胸が……

ないっ……!


ないと言うか、どこを触っても脂肪、脂肪、脂肪。
手が脂肪の大海原に迷い込んだとでも言うべきか…どこが胸なのかわからないのだ。

加奈本人はEカップと言っていた。

しかし蓋を開けてみれば、あれだ。
ふくよかな女性にありがちな、周りの脂肪をかき集めて胸を寄せているパターンだ。
カップ上では大きめのサイズに見えるが、実際はそうではない。

この時点で半ばヤケクソになっていたが、ここまできたら最後までやり切るのが紳士というもの。
やっとの思いで上半身の愛撫を済ませ、ついに下半身の攻略へと移行する。


そして加奈のパジャマのズボンを脱がせた時…



ヴォエエエッッ!!!!!!



瞬間、強烈な臭気が襲いかかってきた。

む わ っ … … !


強く酸味の効いた、何か。
ザリガニの腐った臭いなどという表現があるが、そんな感じかもしれない。

100匹のザリガニの死骸を壺の中に入れ、カビの生えたチーズとアンモニアで味付けし、蓋を閉じ10年間熟成させることで誕生する悪魔のスープ。

例えるならそんな臭いだろうか。

その毒霧は嗅覚だけでなく視覚をも刺激しているようで、少しずつ視界がぼやけていく…。

ゆっくりと。

意識が混濁していき…。


私は気を失った。



……………


…………………………。


ハッ。

意識を取り戻す。

状況から察するに、気絶していたのはほんの一瞬だけだったらしい。
冷静になった私は、この状況をどうにかすることにした。

まず、激臭の原因に蓋をせねばなるまい。
この劇物は、ともすれば黒魔術にでも使われかねないレベルのシロモノだ。

つまり、下ろしかけたパジャマを再度履かせた。

当然動揺するのは加奈だ。
ここまでしといて止めちゃうの?的な事を言っていた気がする。

「いや、まだ会ったばかりだし…。」
などと言ってごまかした。
しどろもどろになっていたかもしれないが、精子に関わる生死に関わる事なのだから仕方ない。

確かに一度その気にさせたのに中途半端に止めるのは気が引けるが…。

申し訳なさは非常に感じていた。


加奈とのその後だが、後日告白された。

当然断る事になるのだが、正直に「局部から激臭がするから」などと言えるはずもない。
他に好きな人ができた、などと言ってやんわりと断った。

実はこの加奈、当時20代前半にして交際人数は2桁というモテる女性だった。
実際顔は可愛かったし。

そのため、きっと今頃素敵な男性と結ばれているのではないだろうか。


私は元々臭いに敏感なタイプで、特に酸味の効いた臭いは苦手だ。
そのため私の苦手な臭いだという事ももちろんある。

しかしそれだけではない、やはり特別な事情があるとしか思えない悪臭だった。
しかもあれ、お風呂に入った後だったのに…。

普段から股を洗う習慣がないのか、あるいは何らかの病気を抱えていたのか…。

ともかく、これが私の悪臭体験の一部始終だ。

ほろ苦くもどこか切ない、青春の物語と言えるだろう。

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