世界の美しい瞬間 38
38 擬似
とある海外の俳優さんの佇まいや立ち居振る舞いに単純に憧れた、36の記事の後日談である。
なんと、痩せた。
とくにラインが美しくなった。
一般人のぽっちゃりがちょっと痩せたよという程度のことだが、この数年太り気味傾向にあった私には、1ヶ月前にきつくて履けなくなっていたスカートのジッパーが上まで閉まったのには驚愕した。
ちなみに、回せる予算がないのをいいことに、体重計が家にないずぼらぶりも先に開示しておく。
最も痩せにくい下腹しか採寸していないが、そこですらマイナス2.5センチと判明。うおおおお。
もちろん、それなりに努力した。
アプリを使って初心者向けの筋トレを30日間時々休みながらした。(筋トレなど一番嫌いであった。)
通勤で歩く距離をほんのわずかだが延ばした。
1食置き換えも3週間くらいしてみた。
しかし、1週間に1回は揚げ物食べてお酒も飲んだし、お菓子だって食べた。
かなりダイエットとしてはゆるくやった。
そして、上記と同じことは、過去やったことがあり、1ヶ月でここまでの成果は出たことがなかった。
たったひとつだけ、上記にプラスした習慣がある。
それは、ほぼ毎日、例の俳優さんの全身の写真、ないしは動画を観ることだ。
憧れの、身体のあり方使い方が「あれ」だ、ということを脳に自然にたたき込んでいるのだ。
すると、後から自分の変化に気付いた。
不思議と、動くことやカロリーを控えることに苦が少なく、階段の利用や、ちょっと歩こうが増えた。
路面店のガラスに映る歩く姿を修正したり、自然と鏡をよく見るようになった。
異性の有名人に抱く憧れは、擬似的な恋心でもある。あんな美しい見た目の男性もいるのだな、実際に見たいものだと思う。
もし幸運にも会えるのが明日であるとすれば、今わたしにできることは何か、と未来に対して手を打つ気分なのだ。
一生会えなかったとしても、それはそれでいいのだ。彼の存在のおかげで、何かしら変わったわたしと新しく出会う誰かが、性別関わらずいるだろう。
そして、今までの自分だったら回避したり敵視していたかも知れない人を、素直に好きになり、相対する瞬間が訪れるかも知れない。
そしてついに、貯まった某ポイントを、体重計と交換した。
新しいリップも、着てみたかったスカートも注文した。
このまま冬に突入するべく底冷え始めた京都で、
まるで春先のような動きをしている自分の変化は、立冬の時分なのに啓蟄のようで、
なんだかそわそわしている。
ほんの少し痩せただけで、この効能。
擬似でも恋心は抱くものである。
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