Risako Hata

東南アジア専門ジャーナリスト。 「女記者が見た、タイ夜の街」シリーズを執筆しています。

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最近の記事

「女記者が見た、タイ夜の街」コラム)裸で踊るおじさん達から考えるジェンダー

タイでは、さまざまな夜の景色を見てきたと思う。それは、政府関係のイベントや大使公邸のパーティーといった公式な場から、日本式のカラオケクラブ、西洋人が集まるプールパーティー、地元民しか行かないナイトクラブ、地方のあやしい飲み屋まで、場所によって集まる階層や人種が異なる様子は、清濁混合するタイというそのものを表していた。 その中でも、私が好きな夜の会がある。首都バンコクの日本人が集まるエリアにある、昭和の匂いが漂う日本式居酒屋。敷いてある座布団はシミだらけで、メニューも黄色くな

    • 「女記者が見た、タイ夜の街」第7回:韓国がタイ人を入国拒否する理由

      ■出身地も入国拒否の理由に? #แบนเที่ยวเกาหลี (韓国旅行禁止) #ตมเกาหลี (韓国入国管理局) 2023年10月、韓国に渡航したタイ人が入国拒否される事例が相次いで発生し、こうしたハッシュタグがタイのX(旧ツイッター)でトレンド入りする事態となった。 タイの英字紙ネーションによると、入国に必要な書類を全て揃えていたにも関わらず、持ち込む金額が多いという理由で入国拒否された事例や、これまでの韓国への渡航頻度が多すぎるとして、入国を断られた例な

      • 「女記者が見た、タイ夜の街」コラム)75歳男×19歳女カップルから見る幸せの形

        国際色豊かな都市、バンコク。 一歩街へ出れば、アジア、欧米、中東など、世界各国の人種が交錯し、言語が入り乱れる。 私は20代の若かりし頃、40代のイタリア人男性と交際していた。 バンコクの全てが目新しく、エネルギーに満ち溢れるこの街のとりこになっていた私は、とにかく動いて、さまざまな界隈に顔を出していた。 彼とはそんな時、多国籍な人種が集まる交流会で出会ったのだ。 彼と交際して驚いたのは、イタリア人というのは、本当にいつも愛を表現している。 例えば、デートで待ち合

        • 「女記者が見た、タイ夜の街」第6回:タイ人の人身売買最大の市場、日本

          ■怪しい日本語の売春仲介サイト 「(●●県●●市●●町)短期ビザ2月3日来た新人タイ人オススメハズレないマンション可愛い子サービスいい優しい人気20歳155*45*D」 これは、日本のある売春仲介サイトに掲載された文言だ。 あやしい日本語の羅列とともに、「本日の出勤者」として、アジア人女性らの露出した自撮り画像が続々と掲載されている。 こうした売春仲介サイトは、隠語で「中華マンション」と呼ばれ、タイ人だけではなく中国やベトナムなど多国籍な外国人の売春を斡旋している。

        「女記者が見た、タイ夜の街」コラム)裸で踊るおじさん達から考えるジェンダー

        • 「女記者が見た、タイ夜の街」第7回:韓国がタイ人を入国拒否する理由

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          「女記者が見た、タイ夜の街」第5回:スラムから這い上がった女性たち

          ■「タイ人でも近寄りたくない」 「病気、薬物、売春がはびこる、タイ人でも近寄りたくない場所だよ。そんな所へ何しに行くんだ?」 タイの首都バンコク最大のスラムと呼ばれるクロントイスラム。高層ビルが立ち並ぶ中心地からわずか数キロの場所に、約10万人の低所得者層が暮らしている。トタン屋根の粗末な住宅が密集し、場所によっては電気がまだ通らない家もある。 タクシー運転手に「クロントイスラムに行きたい」と告げると、冒頭のような答えさえ返ってきたことがある。 タイでは経済成長に伴

          「女記者が見た、タイ夜の街」第5回:スラムから這い上がった女性たち

          「女記者が見た、タイ夜の街」第4回:夜遊びにも「タイパ」と「モラル」求める新世代

          ■「タニヤはダサい」 「タニヤなんてモテないおっさんが行くところ。女性と話すために金を払って、なにが楽しいか分からない。それならクラブに行って素人をナンパしたほうがよっぽど楽しいよ」 そう話すのは、タイに駐在経験のある20代の日本人男性、A氏だ。A氏は食品関連会社で働き、バンコクに2年間駐在していたが、かつて日本人でにぎわいを見せていたタニヤ通りに行ったのは、付き合いで一度きりだったという。 「それに・・・なんというかタニヤの雰囲気って、すごく古臭くて、ダサい。あそこ

          「女記者が見た、タイ夜の街」第4回:夜遊びにも「タイパ」と「モラル」求める新世代

          「女記者が見た、タイ夜の街」第3回:日本式性接待の実態ー裸の付き合いは絆を深める?ー

          ■既婚者でも関係ない 2015年某月、タイで記者として働き始めた私は、バンコクのカラオケクラブで、初めて「性接待」というものを目の当たりにしていた。 妙に広く、薄暗く、たばこの匂いが充満するカラオケルーム。つい先ほどまで居酒屋で、ごく普通に会食し、カラオケで盛り上がっていた男性ら3人の膝上には、それぞれタイ人女性がまたがって、人目をはばからず体をまさぐり合っていた。 男性らのワイシャツははだけ、連日の不摂生がよく分かるぽっこりと出たお腹が、暗闇の中でもよく見える。

          「女記者が見た、タイ夜の街」第3回:日本式性接待の実態ー裸の付き合いは絆を深める?ー

          「女記者が見た、タイ夜の街」第2回:コロナ禍の日本式風俗店に潜入

          ■コロナ禍で闇営業 2020年6月のある平日の昼間、タイで新型コロナの影響を受けた厳しいロックダウンが敷かれている中、私はバンコクの人通りのない路地に足を踏み入れた。 目の前には、派手なピンク色で「Doki Doki Massage」と書かれた看板。日本でいう「ファションヘルス(注1)」に位置づけられる風俗店で、当時、雇われ店長だった日本人のA氏に取材できることになったのだ。 日本人が多く集まるこのエリアには、日本式の風俗店が多数出店しており、日本語の看板さえよく見か

          「女記者が見た、タイ夜の街」第2回:コロナ禍の日本式風俗店に潜入

          「女記者が見た、タイ夜の街」第1回:バンコク・タニヤ嬢に泣かされた夜

          (注:このルポには、セクハラなど性的な描写が出てきます。タイ人女性の名前は全て仮名です) ■長い夜の始まり 2023年5月のある平日、私はタイに在住する3人の男性らと、成り行きでバンコクの歓楽街、タニヤのクラブに向かっていた。 3人のうち1人は、タイで事業を展開する50代の日本人男性で、タイ在住歴は30年以上のA氏。前職で取材させてもらったことを機に交流することが増え、会食に呼んでもらっていた。 その日、A氏から紹介されたB氏とC氏も、A氏と同年代の男性で、20年以上

          「女記者が見た、タイ夜の街」第1回:バンコク・タニヤ嬢に泣かされた夜

          「女記者が見た、タイ夜の街」プロローグ:タニヤで見た沈みゆく船

          2015年、私は初めてタイのバンコクにある歓楽街、タニヤ通りを訪れた。 きらびやかな日本語のネオンの下、カラオケクラブや風俗店がひしめく。「リトル歌舞伎町」とも呼ばれるこの通りには、露出した女性らが、何列にも並んだ椅子に座って客を待ち、商品のように陳列されていた。 そのそばで多くの日本人男性が一目をはばからず女性を吟味し、気に入った娘と店の中に入っていく。日本の歓楽街よりはよほど派手に、正々堂々と公で売られる性を目前に、女性の自分はただただ驚くしかなかった。 しかし、2

          「女記者が見た、タイ夜の街」プロローグ:タニヤで見た沈みゆく船

          なぜ私が絶版になった「タニヤの社会学」を蘇らせたいのかータイの女性軽視問題についていまこそ考えたいー

          2000年に発刊され、その後ある事情により絶版になった「タニヤの社会学」。タイの首都バンコクにあるタニヤ通りはこれまで、日本人駐在員が接待をする夜の街として発展を遂げてきた。同書は、そうしたタニヤ通りの存在に疑問を抱いた日本人駐在員の妻が執筆し、当時大きな波紋を呼んだという。その内容は、「なぜタイで性産業が発展しているのか」「現地の女性たちは本当のところどう思っているのか」「タイの地方はなぜずっと貧しいのか」といった、筆者が長年探求している問いに答えてくれるもので、ジェンダー

          なぜ私が絶版になった「タニヤの社会学」を蘇らせたいのかータイの女性軽視問題についていまこそ考えたいー

          東南アジアジャーナリスト・泰梨沙子(はた・りさこ)過去の執筆記事

          はじめまして。東南アジア(主にタイ、ミャンマー、カンボジア、ラオス)を専門に記事を執筆しておりますフリージャーナリストの泰梨沙子(twitter@hatarisako)と申します。 2021年10月に勤めていたメディアを退職し、フリージャーナリストに転身しました。それを機にツイッターを開始し、ありがたいことに投稿をシェア、いいねしてくださる方も増えてきました。 こちらでは簡単に自己紹介と、過去の執筆記事を掲載しております。 【仕事】 ●フリージャーナリスト、翻訳家(英日)

          東南アジアジャーナリスト・泰梨沙子(はた・りさこ)過去の執筆記事