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意識・クオリア・情報処理主義

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暇に飽かせて意識について考え始めたら、おもしろくてたまらなくなりました。 残念ながら、哲学についての専門的な教育を受けたわけではないですし、そもそも学がありませんので、素人の思い… もっと読む
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汎・情報処理論:意識、感情、そしてAI

汎・情報処理論:意識、感情、そしてAI


汎心論と情報処理「死と意識:汎心論から汎情報処理論へ」の振り返り

前作「死と意識:汎心論から汎情報処理論へ」では、意識の謎に迫るために、汎心論という哲学的立場を出発点として、情報処理の観点から意識を捉え直すことを試みた。汎心論は「すべてのものに心がある」と主張する哲学の立場だが、従来の汎心論では、意識の成り立ちや意識レベルの差を説明するメカニズムが十分に示されてこなかった。

そこで前作では、

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死と意識:汎心論から汎情報処理論へ

死と意識:汎心論から汎情報処理論へ

1.はじめに

人間に意識が存在することを、ほとんどの人は疑わない。人間は、考えることができ、感じることができる。犬や猫に意識があることも、多くの人は認めるだろう。彼らも感情表現が豊かで知能があり、意識を持っているのだろう。では、ネズミはどうだろうか。魚はどうか。昆虫になると、意識を認めない人の方が多いかもしれない。ウィルスに意識は?

ロボットやAIに知能は認めることはできても、意識と言われると

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『リンゴの気持ちは知らないけれど ~「メアリーの部屋」からの脱獄~』

『リンゴの気持ちは知らないけれど ~「メアリーの部屋」からの脱獄~』

1.はじめに

意識のハードプロブレム、つまり物理的な脳のプロセスがどのように主観的な意識体験を生み出すのかという問題は、現代の心の哲学において最もやっかいな問題の一つとされている。

前回のコラム『意識はハート♡プロブレム:知覚・体験・意識の連続性』では、知覚と体験の本質的な同一性や、意識の階層性と連続性に着目し、情報処理の観点から、意識のハードプロブレムは存在しないことを論じた。

今回は、ま

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意識はハート♡プロブレム:知覚・体験・意識の連続性

意識はハート♡プロブレム:知覚・体験・意識の連続性

1.ジョージの家

ジョージは優秀なエンジニアだ。彼はTVの仕組みについて徹底的に学び、すべてを理解していた。ブラウン管、電子銃、蛍光体、電子回路……。でも、彼の家にはTVがない。

ある日、友人が彼に尋ねた。
「ジョージ、君はTVのすべてを知っているんだから、TVを見たことがなくても、TV番組を見ることがどのような映像体験なのか説明できるんじゃないか?」

ジョージは自信を持って答えた。
「うむ

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本当のクオリアが何なのか、教えてくれよ。

本当のクオリアが何なのか、教えてくれよ。

1.クオリアという謎への招待1.1 「ばか」とクオリア

「ばか」という言葉を聞いて、あなたはどのような感情を抱くだろうか。怒り、悲しみ、恥ずかしさ、あるいは軽蔑や侮辱の念だろうか。おそらく、その感情は人によって、そして状況によって大きく異なるはずだ。

例えば、見知らぬ人から突然「ばか」と罵倒された時と、恋人が甘えるように「ばか」とつぶやいた時とでは、感じ方は大きく違うだろう。前者では怒りや不快

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データからアートへ:創造性は組み合わせの妙

データからアートへ:創造性は組み合わせの妙

先日、Twitterでひとつの投稿を目にした。主旨はこうだ。

・AIの創造性は幻想である。
・AIは学習データの組み合わせでアウトプットを生成しているだけ。
・データは有限なので、いずれパターンは収束してしまう。
・AIの創造性とは、性能の低さゆえに生じるハルシネーション。
・AIの性能が上がると、より最適な回答を出力するようになる。
・その結果、出力のバリエーションは逆に減る。

なるほど。確

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