お父さんもいいお父さんだよ!
これは家事も育児も行う私の夫を母が絶賛するのをみて、ちょっとしょんぼりしている、そんな私の父のお話です。
私の母は専業主婦。父は仕事人間で、定年のない仕事に転職しアラウンド70になった今でもバリバリ働いている。
家事は母、稼ぐのは父、という完全分業制。
まぁそういう時代だったわけだけど、その体制でずっと、40年以上やってきた。
だから、私が結婚して夫が家事も育児もしているのが、彼らにとって大変なカルチャーショックらしい。
絶賛される夫の影で
そんなわけで、夫は私の両親に絶賛されている。
「お仕事帰りで疲れているのに自分でお皿を洗っていた」
「自分で料理していた」
「子どものオムツを替えていた!」
「さっと子どものお着替えもしていた!」
そのくらいで絶賛されるなら代わりたいという方もいるだろう。(私もだ)
とにかく自分の息子(私の兄)が赤ん坊を抱っこしているだけでなんだかびっくりする、と言う母と、「自分にできないことを出来る人は尊敬する」という父によって大絶賛されているのである。
私も自分の夫が褒められるのは嬉しいし、心がほこほこする。
ただひとつ気になるのは、父が「それに比べて自分は……」とややしょんぼりしている気配が時々感じられること。
いい父の条件
確かに父は家事・育児はあまり(ほとんど?)しなかったかもしれない。
でも私にとってはいい父だった。
なぜかと考えてみると
・夫婦仲が良かった
・人柄を尊敬できた
・暴力や理不尽がなかった
・家族を大事にしてくれた
からだと思う。
尊敬するのに苦労しない、ありがたい親なのである。
ちなみに仲の良い夫婦なので、母も私の夫と父を比べるような嫌味なことは決して言わないだろう。
ただ父が、我が身を顧み、しょんぼりしているのである。
だからある日、父にささやかながらエールを送った。
両親に息子を見に来てもらった際、帰り際に「本当に良い旦那さんだね、大事になさいよ」と母が言った後、「本当にねぇ……」とやっぱり父がそこはかとなくしょんぼりしていた。
だから思わず、「そうだね、ありがたいと思う。でもお父さんもいいお父さんだよ!じゃあまたね!」と漫画だったらウインク星付きで言い放ち、ドアを閉めた。
父のはにかんだ顔が見えた後、ドア越しに母の「『お父さんもいいお父さんだよ』ですって、うふふ」と嬉しそうな声が聞こえた。
毒親育ちを反面教師にした父
私は両親ガチャに成功したクチだが、父はそうでなかった。
今で言うところの毒親育ちで、親との確執、また兄妹の不仲は根深かった。
実家からの電話に出ているときはいつも冷静な父とは思えないほど感情的で、まるで別人。
極力関わりたくなかったようで、私は父方の親戚との思い出がほとんど無い。
大人になってから知った父の兄妹関係も、互いに憎み合う感じでなかなか激しかった。
そんな父だけれど、父自身は夫婦仲良く、円満な家庭を築いてくれた。
自分の嫌な体験を反面教師に、色々勉強して、考えて、夫婦円満を維持するよう努力した。
なるべく子どもを束縛せず、自らに判断させ、守るところは守りながら自立を促してくれた。
沢山良いところがある父だけど、私はそこを一番尊敬している。
家族の形は様々で、時代の影響を受けるし、個人の考え方、好みも異なる。
父は家事をしなかったが、それはもう、そういう時代だったのだと思う。
私だって両親の時代に生きてたら専業主婦をやっていたかもしれないし、父だって今子持ちになったらもうちょっと家事育児をやっていたかもしれない。
おそらく現代は「夫婦仲を良くし」「家庭を維持」するために、男も女も働いたり家事育児をしたり、複雑なことが求められるようになったのだろう。
そう考えると、良い親の条件は「家事をやる・やらない」とか「稼ぎの量」といったものだけでなく、もっと根本的なところにあるのかもしれない。
そんなことを改めて考えて、身が引き締まった。
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