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介護の学び#8【その仕事は誰のため?】

介護業界での20年近くの経験をもとに、学んだことについて投稿していきたいと思います。

今回のテーマは【その仕事は誰のため?】です。

介護の仕事をしていると、誰のために今の業務を行なっているのかがわからなくなることがあります。

そのため、介護現場では「それは誰のためなのか」ということを、立ち止まって考える機会が大切です。

そんなの…サービスを受ける利用者様のためでしょ?
何を言っているんだ…

と思われる方もいらっしゃると思います。

確かにその通りでなのですが…

利用者様にサービスを届けるために、前段階として整えなければならないものはたくさんあるんです。

その中の一つに【働く人たちの環境づくり】があります。

介護の仕事は、生活という連続性のある中で、途切れることなくサービスを提供していかなければならないものです。

加えて、介護は人対人の仕事であり、日々の変化を把握しながら利用者様ごとに違った対応をしなければならないなどの柔軟性も求められます。

とはいえ、働く介護職にも時間の限りがあったり働く職員数にも限りがあります。

このような多忙な状況で介護職は、体と頭と心【感情労働、頭脳(知識)労働、肉体労働】の3つをフル活動させなければならないんです。

職員の過度の疲弊はより良いサービスの妨げになり、結果的に利用者様に提供するサービスの質、ひいては利用者様の生活の質を低下させかねないんです。

だからこそ、働く環境づくりである職員の負担軽減や業務効率の向上が必要になってきます。

簡単に表現するのであれば…

「職員たちが良い状態でなければ、より良いサービスの提供がしづらくなってしまう」

ということです。

このことは非常に大事なことなのですが、バランスが必要です。

とはいえ、多忙な状況のうえで多重課題をこなさなければならないという状態では、バランスが取りづらくなってしまいます。

その結果生まれてしまうのが、職員の働きやすさや負担軽減が主となりすぎてしまった仕事です。

だからこそ、定期的に【その仕事は誰のため?】と立ち止まることが必要なんです。

「利用者様へのサービスの質と職員の負担軽減、どちらが大事なんだ!?」

という議論は介護現場では良く起こります。

しかし、これについてはどちらか一方が大事なのではありません。

どちらも同じく大事であり、現状の資源とニーズ(ご要望)に対する実態を把握しながら、相対的に日々検討していかなければならないものなんです。

介護の現場で学んだ【その仕事は誰のため?】

施設を利用して長期でサービスを受けられる方は施設が自宅のような存在になっていきます。

とはいえ、自宅と同じように寛げたり自由になんでもできるわけではなく、外出や交流、生活時間の使い方も少なからず制限が生まれてしまうことが大半です。

そのような状況の中での楽しみの一つに【食事】があります。

朝昼夕の食事ももちろん楽しみにされていますが、やはりプリンやケーキ、お菓子などの中間食は利用者様にとって大きな楽しみの一つです。

ご家族がお土産に持ってこられたものとあれば、より一層楽しみにされます。

ここからはとある利用者様の話です。

定期的に家族様がおやつを持参し面会に来られる方で、その利用者様は面会と持参されるおやつをいつも楽しみにされていました。

しょっちゅうというわけではなく、月に1~2回程度です。

おやつは面会時だけのものではなく、家族様は「後日も楽しめるように」と、ある程度の量を持参されていました。

冷蔵が必要なものもあり、職員でお預かりしたうえで、利用者様からのご要望があればお渡しさせていただく形をとっていました。

おやつという存在自体に加えて、家族様からのおやつということもあり、お渡しするととても喜ばれていました。

そんなある日、職員の業務改善会議が開催されたときのことです。

議題の一つに「預かりおやつの廃止」があがっていました。

おやつを預かる量が多すぎて、管理や提供に時間が取られすぎてしまうため統一ルールとして「おやつの預かり、持ち込みを全面廃止したい」という内容でした。

利用者様1名ではなく施設を利用される多くの方がおやつを預けられるため、確かにおやつの量は多くなっていました。

私はどれくらい大変でどの程度の業務的な支障が出ているのかを尋ねると「たくさんありすぎて大変なんです。どれくらいなんて日によります。結構支障はでていますし、職員たちは困っています。それに食中毒が出たら施設的にも問題ありますよね」とのことでした。

その時、別の職員の一人が【それって…結局は一体誰のためなんでしょうか】という一言を場に投げました。

その職員は介護をはじめて1年も経っていない職員でした。

……そこから、職員たちは時間をかけて話し合いました。

結果的に、一部制限等にかかる食品のルールは定めたものの、おやつの持ち込み全面廃止にはなりませんでした。

私はこの時【その仕事は誰のため?】ということを立ち止まって考えることの大切さを学びました。

【その仕事は誰のため?】という一言は、主を変えることで色んな角度からの見方を与えてくれて、目指す先の共通認識を生み出してくれました。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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