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彼とクラゲ~色なきもの~


薄暗く広い空間に
深く広い水槽がある
彼は水族館に来ていた

目の前には無数のクラゲ
悠々自適に泳いでいる

それは泳いでいるのか
漂っているのか
水の流れに身を任せ
それは自由に浮かんでいた

クラゲに魅了された

何を考えているのだろうか
どうやって生きているのだろうか
その神秘的で美しい姿が目に焼き付いた

クラゲは彼をどうみているのか
彼はクラゲをどうみているのか
果てしないはてなが渦巻く

それは彼を現している
何を考えているの?
どうしてそうなっちゃったの?
その暗黒的で孤独な姿が心に刺さった

いつだってひとりで
今日もひとりで
きっと明日もひとりだ

それでいいって言い聞かせて生きてきた
それは仕方がないことだって心を閉ざした
クラゲが黒く光ったように見えた

クラゲは漂う
彼を見下すように
クラゲは躍る
彼をあざ笑うように

どんどんクラゲは黒くなる

どんどん
どんどん

本当にそれは黒いのか
本当にみんな黒いのか

まるでクラゲが話しかけてきたように
言葉が入ってきた

目の前にいるクラゲは本当に黒いのか
親・先生・友達は本当に黒いのか

「前を見てごらん、私たちは何色に見える」

彼の目には涙があふれる
黒いと思っていたクラゲは無色透明で
薄暗い水族館に無数に漂っている

青いクラゲ
白いクラゲ
虹色のクラゲ
ピンクのクラゲ

いろんな色が見えた

彼は自分が見ようとしてこなかったことに気付いた

クラゲのような世界が揺らめいていた
何に囚われていたのだろう 何に怯えていたのだろう
心がふわふわと揺れるような気がした

ありがとうクラゲ
君たちは僕の人生の色だ


彼の目にはクラゲの光が残った





解説

主人公

この物語の主人公は中学生の男の子です
学校にはあまり行けていないです
黒髪で目を覆うような前髪
細身の色白の男の子
スラっとした身長で大人びて見えます

物静かで感情を表に出さない彼は
一重で目つきが少し悪いです
目も悪いので(ゲームのし過ぎ)
にらんだように見えてしまうのが悩みです
中学生の中では背が高いので目立ってしまいます

何かきっかけがあったわけではないけれど
なんとなく居場所がないような空気で耐えられず
学校を休みがちになっています
もうすぐ中学3年生。
部活もしていない、成績も決していいわけではない
進路なんて考える余裕もないけど時間だけが過ぎていく

存在価値

小学生までは背も小さめで目立つこともない子だったけど
中学生になってからぐんぐん背が高くなり友達との距離を感じてしまう
決して友達が多かったわけではないけど、なんとなく一人の時間が増えていった
担任は学校に来ないことに対してだけは言ってくる
「学校は友達もいて、楽しい行事もあってみんな張り切ってるぞー。」
一週間に1回は先生からの電話に強制的に出さされる
聞いてもないことをぺらぺらと。

そんな姿を見た父は
「先生だってお忙しい中お電話してくださって~」
と社交辞令をつらつらと。
それを横で聞いている母は
「みーくんは頑張ってるもんね」とまだ小さい弟をだっこして涙目。

どいつもこいつも何もわかっていない
学校に居場所なんかなくて居づらくて仕方がないのに
だから、なんも頑張ってないのに
なんで逆のことばかり言うんだ

誰か一人でも、彼を認めてくれる存在があれば
少しは違うのかな。
こういう悩みは案外身近な問題だと思います

海月


彼の名前は「海月」
くらげと書いて「みつき」
彼は両親を恨んだ
だって、絶対くらげくんになるから。
ふわふわしたところがくらげだって言われる。
小学生まではよかったけど、中学高校社会人となると
説明さえもめんどくさくなりそうだ。

ほんもの

普段家からでない
そんなみつきに母が水族館のチケットを買ってくれた
「気分転換になると思うよ、一緒に行こうか?」
なんて言ってくるけど
家にいても居場所はないから平日一人で水族館へ向かう

そして物語が始まるわけです^^

ある意味本物に会いに行くわけですね。みつきが偽物ではないですが。
敵対心?的な感覚でしょうか。

リンク

くらげをみるみつき。
自分とリンクする部分があると感じています
ふわふわしているところや
水槽で漂っている姿

そして自分の姿をくらげに投影していきます
自分の中の深くて不気味で真っ黒な気持ちがあふれ出てきます
くらげが黒く光ったように見えたのこそが
自分を投影した瞬間です

あふれ出る思い

ずっと恨んでいた親への気持ち
嫉妬していた弟への思い
みつきを見ようとしない先生
距離を感じる友達
大っ嫌いな自分

くらげを見ていると
いろんな感情があふれ出てきました
「前を見てごらん、私たちは何色に見える」
くらげが問いかけてきます
投影されているので、自分自身が自分に質問している状態です
そしてみつきは涙します。

くらげの問いかけにハッとした自分がいました。

自分が見ていた世界はちっぽけで
自分がこうだと思い込んでいた世界だったんじゃないかと

それは、青色白色虹色ピンク色といろんな色のくらげを目にすることができたからです。

自分の感情に蓋をして勝手に小さな世界に閉じこもっていたから
見てもいないのに、きっと周りは黒いやつらばかりなんだと自分に言い聞かせていたんじゃないかと

それが、なんとなく違うんじゃないかなって思えてきました
だって、いつだって両親はそばにいてくれて
弟は「にぃに、あそぼー」っていつも部屋に来てくれて
先生も毎日電話をしてくれて、変わってほしいと言ってるけど
みつきは週に一回しか電話を変わらないから
友達も話しかけてくれそうなのに、近づけさせないオーラをみつきが出していたから。

それは、自分を守るためだったはずだけど
いつのまにかすべてを人のせいにしていたんじゃないかなって。

そして彼はクラゲを通して
今まで見てこようとしなかった部分に触れてみようと思うのです
時間はかかるかもしれないけど、ちょっとずつ。前へ。

すすむ

くらげと海月(みつき)
同じようで違っていて
でもどこか繋がっている不思議な関係

みつきはくらげじゃないけど
くらげっぽい自分も含めて自分だから。
ふわふわと自分らしく生きててもいいんじゃないかな。

両親が名付けた「海月(みつき)」
海に映る月のようにゆらゆらとそして美しく
優しく深く素敵な大人になりますようにと願いを込めて。

最後に

周りがすべて敵だらけな時ってありますよね。
自分がやさぐれてしまっているのかもしれないし
周りが本当にキツイのかもしれない。

誰も味方はいなくて
殻に閉じこもっている人もいるかもしれない
一人の時間は大事だし、その時間があるからこそまた進める
そばにいてくれる人はいてくれるから。

どこでどんなスイッチがあるのかわからないのが人生。
せっかくの人生楽しみたいなぁ
あなたの世界はそこだけではないからね
↑自分自身にいってます(笑)



儚く美しい詩や物語が好きです★また明日も頑張ろって思えるようなものご用意しています♡ぜひご覧ください。いっしょに素敵な世界線へまいりましょう。