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86%の彼

放課後の教室
この後どこ行くかワイワイ話してる
いつもの光景、いつものメンバー
女の子2人男の子3人は中学からの仲良し5人組
私の居場所だ
彼はいつも通り私の隣の席に座っていた

「今日はいい天気だね」私に話しかける
「カカオ86%だよ。君の好きなやつ」
彼はそう言って私にチョコを渡す
彼は私の目を見て笑った
この少年のような笑顔に私は弱い。

中学の時から身長が20センチ伸びた彼は
サッカーをしていたから筋肉もあって
更に優しい。
学校でモテモテだ。

そして彼はいつもチョコをくれる
私は甘いものが好きだけど
でも彼が好き
だから彼がくれるチョコは 苦くても嬉しい
彼は私がチョコを食べるのを見て 笑顔になる
私は彼の笑顔が好き
だから彼がくれるチョコは 苦くても笑顔になる
彼は私が苦いチョコが好きだと思っている
私は彼が好きだとは言えない

「僕、彼女ができたんだ」
私は彼の言葉に驚いた
「え、本当?」 私は彼の目を見た
「誰なの?」
「君の友達だよ。あの子、知ってるでしょ」
そう言って運動場の練習している陸上部の女の子を指さした

彼は私の心を裂いた
彼女は活発で目立つタイプの子だ、私とは真逆だね。
私はいつも通りの笑顔で「おめでとう。幸せになってね」
彼は笑っていたけど返事はなかった

彼はカカオ86%のチョコが好き
苦いけど深い味わいがすると言う
君も好きでしょ?っていつも分けてくれる
好きとは言ったことないのにな。
彼がくれるチョコは苦くて私の心を揺さぶる
私はミルクたっぷりの甘い甘いチョコレートがいいんだけど
彼がくれるから素直に受け取る

彼はとても優しい
風邪をひいたときも
寝坊した時も
必ずそばにいてくれる
そんなやさしいところが好きになった
そんな彼はみんなにもやさしい
私だけじゃない

私は彼に思いを告げることはない
もう遅いとわかっているから
私は口いっぱいにカカオ86%のチョコをほおばる
教室から部活終わりの彼女と帰っている彼の後ろ姿を見る
私は教室の窓から青い空を見上げて涙をこらえる
甘くない思いが心を溶かす
遠くから彼の笑顔を見つめる
彼女と手を繋ぐ姿が胸を突き刺す
私は静かに86%のカカオを味わいながら彼の幸せを願う
いつものメンバーが窓から彼に手を振る
みんなが私の肩に優しく手を置く
泣いちゃうじゃないか。

甘くない思いと友情が私を強くした
青い空をみて小さく
さよなら。をつぶやく
彼への想いを 私の心が満たすその一片を
彼に捧ぐ。


あとがき

彼女の切ない恋と友情の物語りです
彼女は想いを告げることなく
彼の幸せを願い、自分の想いを青い空へと吹っ切りました
いつものメンバーもわかっています
あえて言葉にはせず行動で支えてくれます

「彼が少年のように笑う姿は無邪気で可愛かったです
彼の優しくしてくれるところ惹かれていました
彼が私にチョコをくれるからちょっと期待し
彼が好きなチョコを食べることで彼に近づこうと思いました」

彼の行動は彼女の心を裂いたけど
彼の甘くない思いは彼女の心を溶かしました
青い空は彼女の悲しみを照らし
奮い立たせてくれる青春の1ページとなりました

儚く美しい詩や物語が好きです★また明日も頑張ろって思えるようなものご用意しています♡ぜひご覧ください。いっしょに素敵な世界線へまいりましょう。