見出し画像

ランニングにおける着地方法と特性について

着地方法といえば 大迫選手の【フォアフット着地】が有名ですが、今回はそれぞれの特性を見ていきたいと思います。

着地方法

着地方法は大きく3つに分類されます。

画像1

○踵着地(ヒールストライク)

・習得しやすく、日本人ランナーに多い
・アキレス腱への負担が少ない
・着地時にブレーキをかけている

○足底着地(ミッドフット)

・習得に時間がかかる
・つま先着地ほどアキレス腱に負担がかからない
・ブレーキをかけることなく前進できる

○つま先着地(フォアフット)

・トップ選手に多い
・アキレス腱や足底に負担がかかりやすい
・前方への推進力を止めることなく進める

一般的には上記のように言われていますが、果たして本当でしょうか。
研究を通して見ていきましょう。


踵着地 vs つま先接地

研究では、踵着地とつま先着地で比較されていることが多いです。
最近の研究結果をいくつか紹介していきます。
結果のみを知りたい方は【まとめ】をご覧ください。


・RFS 走法(踵着地)では大きな衝撃を利用し慣性による前方回転力を打ち消すことで、立脚期に大きく前方に進むという特性がみられた。一方、FFS 走法(つま先着地)では衝撃を少なくし慣性により円滑に前方に回転し,立脚後半において蹴り出す力を大きくすることで、遊脚期に大きく前方に進むという特性がみられた¹。

画像2

つまり、つま先着地の方が少ないブレーキで前に進めるということです。


・地面反力の挙動は、RFS 走法(踵着地)では二峰性、FFS 走法(つま先着地)では単峰性であり、RFS 走法の最初のピークがランニング障害の要因の一つと考えられていることからら、FFS 走法の方が,受動的衝撃による障害は発生しにくい可能性がある。その一方で、FFS 走法は RFS 走法に比べ、足関節の底屈に作用する腓腹筋・ヒラメ筋 の作用が大きいため、FFS 走法においては RFS 走法よりも腓腹筋・ヒラメ筋に負担が集中しており、負傷の要因となる可能性がある²。

画像3



・どの着地方法でも怪我の発生率には大きな差はないつま先着地足首やふくらはぎへの負荷は増す可能性がある³。


踵着地膝関節への負荷が高くなるため、膝蓋大腿関節を損傷する可能性がある。つま先着地前足部への負荷が高くなるため、足部の疲労骨折やアキレス腱炎などのリスクを高める可能性がある⁴。


つま先着地は踵着地に比べて足底筋膜への負荷が高い可能性がある⁵。


・怪我発生率やランニングエコノミー(車でいう燃費)に関しての最新のシステマティックレビュー・メタ解析では、
『ストロークパターンと障害リスクに関するエビデンスは後向研究に限られており、NRFSによるランニング障害発生低下が報告されているもののエビデンス不足とみられる。ランニングエコノミーに関しても同様である。ただし、ランニングメカニクスに関する測定値ではNRFSによる負荷軽減が示唆されている。⁶』
との結論になりました。


まとめ

・怪我発生率は変わらない。
・つま先着地は足首や足部に、踵着地は膝に負担がかかりやすい可能性がある。
・バイオメカニクスの視点では、つま先着地の方が負担が少ない。

研究結果より、どちらの着地方法が良いとは断言できません。
個人の機能・能力を評価した上で選択する必要がありそうです。


<参考文献>
1)NAOTO HIDA, SHINICHIRO ISHII, SUMIKO YAMAMOTO. Effect of Foot Strike Pattern on Propulsion in Running. Rigakuryoho Kagaku.2016;31(6): 815–818.

2)Shozo KAWAMURA, Harutoshi YUKAWA, Akira HIRAI,Shinsuke AOYAMA and Masami MATSUBARA.Study of joint reaction force, moment and muscle activity of lower limbs during running(Comparison of the rear foot strike and the fore foot strike).Transactions of the JSME (in Japanese).2016.

3)Hamill J, Gruber AH. Is changing footstrike pattern beneficial to runners? J Sport Health Sci. 2017;6(2):146-153.

4)Wei Z, Zhang Z, Jiang J, Zhang Y, Wang L. Comparison of plantar loads among runners with different strike patterns. Journal of Sports Sciences. 2019;37(18):2152-2158.

5)Chen TL-W, Wong DW-C, Wang Y, Lin J, Zhang M. Foot arch deformation and plantar fascia loading during running with rearfoot strike and forefoot strike: A dynamic finite element analysis. J Biomech. 2019;83:260-272.

6)Sports Medicine. 2020;volume 50, pages885-917.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?