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【毎週ショートショートnote】ツノがある東館

お題:ツノがある東館


 うちの事務所はデカい。

 日々日本全国の組が縮小を余儀なくされている中で、どうにか移転を免れてバブル時代に建てられたデカい事務所を構えたままでいられている。そしてそのデカさは襲撃の備えにと、本館・西館・東館に建物が別れている事も大きな要因だ。
 本館はもちろん親父や若頭等、上の方々が詰められる所で、俺のようなヒヨッコの下っ端は西館・東館に詰めるのがほとんど。どちらが上も下もない。だがそんな西館・東館にもたったひとりだけに許される"上"がある。

 それが東館の角係だ。

「この角、親父が昔カチコミで撃たれた時に偶然弾除けになったんすよね?」
「おう。それ以来うちじゃ守神だ。丁寧に拭けよ」
「うっす」

 年季の入った水牛の角。そこに残る一発の弾痕は、この事務所を建てて間もない頃、襲撃に遭った親父を守った証拠だそうだ。本来水牛の角は割れやすく銃弾を弾くなど不可能。だがこの角はその不可能を成し遂げ、守神へと昇格した。
 その不可能の実現は買い付けた親父曰く、「中国で祈祷してもろたからやろ」らしい。兄貴が紫煙を吐いて続きを呟く。

「うちがまだこのデカさ保ててんのもそれのおかげだ」
「……じゃあここで煙草吸うのは止めた方がいいんじゃ」
「あ?」
「すんません」


ツノがある東館に引っ張られ過ぎて、「一行目で惹きつける」があまり意識出来ていなかった。
何なら書いている途中で楽しくなって忘れていた。
シンプルに反省。

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