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さおりのエッセイ

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エッセイらしきものを書いたら、ここに貯めることにしました!
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記事一覧

史上最強の男

銃口は私に向けられていなかった。
それは確かだ。
でも、私の胸は撃ち抜かれ、まだあの場所に留まっている。

うだるような、と千人の作家が書きそうな暑さの真昼間、私はクーラーを求めて彷徨い、実際、数時間は、カフェや百貨店の涼しい風に当たりもしたのだ。けれど直にあの忌々しい頭痛が鎌首をもたげ、私の頭をキリキリと縛るので、仕方なく私は自室のあるマンションへと引き返してきた途中だった。

駅前は2日目の祭

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誰がために鐘を鳴らすか

7〜8年前のこと、フリーター時代に、平日の誰も来ない展望台の売店で店番をしていて、あまりの暇さに頭がぼんやりとしてきたそのとき、ある小説のストーリーが思い浮かんだ。それを実際に書いてみると、自分の気持ちが溢れてきて、表現の巧拙はともかくとして、その訴えたい内容は、これから先の自分の書く文章の行く先を示す羅針盤のようなものだと気付いた。それから何回か手を入れた小説をnoteに投稿した。

私は、私の

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ねがいごとをしないで

ねがいごとをしないで

7月7日。今日ひとつ、願いごとが叶った。人を傷つける願いごとが叶った。

人を傷つけたくないという願いごとは、いつも叶うことがない。

自分のために祈るのをやめたとき、自分を愛する人を裏切り、自分のために祈るときもまた、同じ。

私が眠りにつくとき、世界に平和が訪れる。ずっと眠っていたい。

7月7日。ねがいごとなんかしてないで
ひこぼしになって、やってきて

さおりの「おり」は、おりひめの「おり

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地球の色

誰がなんと言っても、地球は青くないよ
ちゃんと感じ取ったんだ
わかったんだ

君が言ったことがよくわかったんだ

君の見えない器官から流れてくる君の血液

それでわかったんだよ

なんにも要らないってさ

誰がなんと言っても

例え芥川龍之介が許しても

私は許さないよ

地球は青くなんかないってわかったんだから

誰もが賞賛する歌も
誰もが嘆く駄作も

意味なんかなくて

欲望は、ただこのために

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古き良きものから学び、聡明になる。自分のなかにある力を信じて立ち向かう。お互いの価値を尊重して輝く。#なりたい自分になるための三箇条

夜の電話

夜の電話

やっと永い昼が終わったから、家を抜け出したよ。みんなが大好きなPOPで醜悪な夕焼けは、まだ地球の端でたゆたんでる。

けど、夜だ。スキップしたいね。

風が吹き抜けて青いスカートを揺らしても、闇夜に溶ければ問題なんてない。

goodbye sunshine 夜ってだけで楽しい

the pillowsの歌の歌詞が頭に浮かぶ。

the pillowsの歌に出てくる「キミ」って、いつもは恋人

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自由でいられますように

大阪の伯父が、入院先の病院の水道や電気などの設備がメタメタ(私の母の表現)になって転院を余儀なくされたとのこと。でも本人は元気そうで、無事、転院先でも透析を受けられていると聞いてホッとしました。
伯父の看病で大阪に行っている母も言っていましたが、関西方面の方々は、まだ余震などで不安を感じていらっしゃる方も多いかもしれません。何も出来ず、こういうときにどういう言動をすればいいのかも分からず大人になり

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闇の奥は真実か

たった一度、翻訳を読んだだけでジョゼフ・コンラッドを語ることはできないのはわかっているが、せっかく「闇の奥」を読みおわったので、直後の率直な感想を書いておくのもいいかもしれない、と思った。

本当はその前にトーベ・ヤンソンの「誠実な詐欺師」に心を奪われていることを書きたかったけど、春が過ぎてしまってなんとなく季節感が違うことで躊躇した。でも私にとっては、「闇の奥」も、人種差別や人間の原初的な欲望の

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それはひとつの答え

それはひとつの答え

ときどき、目の前が真っ暗になることがある。

どう進んでいいのか、わからない。
後ろを振り返っても何もない。
暗闇は好きなのだ。
でもそこは闇でさえない。
大きなぽっかりとした「虚無(ナダ)」

それにとらえられたら、じっとそこを抜け出せるまで耐えるしかない。
アロマもヨガもアートさえも届かない。
手を伸ばした先から「なんにもなくなる」。
もがけばもがくほど、近くにある見えない宝物を壊してしまう。

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片っぽだけ失くす

片っぽだけ失くす

昨日、雪の混乱のなか、イヤリングを片方なくした。貰ったもので、とても大切にしていたから、あっけなく失くしたことに、かなりショックを受けている。

今年は、手袋も片方失くした。何度も何度も失くすので、しばらく手袋はつけないで何年か過ごしたが、今年は絶対に失くさないように、ちょっと高めの気に入ったものを買おう、とかなんとか言って、その通りにしたら、失くした。こちらはもう諦めきれず、片方の手袋だけ持ち歩

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本を捨てた

本を捨てた

本棚を眺めていて、読みたいと思った本を手に取り、しばらく読んでいた。何度も読んだ本。とてもいいことが、たくさん書いてある。その本を閉じて、捨てた。ゴミ袋につっこんだ。

私は本が好きだ。自分でも文章を書いているから、自分の書いた文章をそんな風にされたら、気が狂うかもしれない。売るとか手放すのではなく、私は本を捨てたのだ。そんなこと、これまでありえなかった。なんてことをしたのだろう。なんてことだ。

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欲張りな子供と

欲張りな子供と

お陰様で体の具合は良くなって、この一週間は随分といろいろなことがありました。

メリアンさんのライブに行って感動したことや、ナマの翠さんと笹塚心琴さんにお会いしたこと、大学時代のゼミ同期生たちとの新年会で言われたり泣いたり思ったこと、そして、今日はヒエロニムスボスの「快楽の園」の映画を観て、ちょっともう、抱えきれないくらいの刺激を受けてしまって、若干気持ち悪いです。

その一つ一つが私にとってすご

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結果を求めるよりも

結果を求めるよりも

祖母に電話をしても、すぐに切られてしまう。元気かどうかの確認が終われば、その他の瑣末なことは、余計なこと。

日頃の疲れを労おうと、温泉に連れていっても、祖母の娘である我が母は、ゆっくり温泉に浸かってなどいられない。カラスの行水とは、このことだとばかりに、ものの数分で出てきてしまう。

そう、私のせっかちは遺伝なのだ。

祖母も母も私も、話し方はのんびりしてるし、比較的に穏やかな性格なので、おっと

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雪の女王の謁見に敬礼を

10年ほど前に、4年間、仕事の関係で札幌に住んでいた。

今は関東にある実家の近くで久しぶりの一人暮らしを満喫している。関東にも、積もるほどの雪が降った。

札幌に住んでいるときは、冬が来るのが怖かった。同時にとても惹かれていた。夜のすすきのの街でオレンジ色の街灯に照らされた雪の影がチラチラと、積雪のある道路に流れると、胸がドキドキした。寒さは、いつまでも慣れることはなく、一度経験すると、その恐怖

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