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#136 TU/e アイントホーフェン工科大学

オランダ、アイントホーフェン工科大学での勤務が始まりました。今日は、大学と学生文化を少し紹介したいと思います。アイントホーフェン工科大学はオランダ語で Technische Universiteit Eindhoven なので、TU/e が愛称です。



オランダの大学制度

オランダには日本でいう「大学」に相当する教育機関(大学院まで備える研究大学)はたった14校しかありません。オランダの人口は約1,770万人で、「東京都市圏」の人口が約3,400万人であることを考えると、その半分程度の規模の国ということになります。日本には約800の大学がありますので、オランダの大学がかなり少数精鋭であることが分かります。
 ドイツに似て、大学に行かなくても問題なく就職して生活していける土台がある一方、12歳の段階で、「中等職業教育」「高等職業教育」「研究大学」のどのルートに進むのかが決められます(賛否両論あるようです)。

研究大学では、学部(4年間)と大学院修士課程(2年)までが「学生」としての扱いで、授業料を支払います。日本から留学するには、大学院修士課程で年間約320万円の学費がかかります。学費が無料(事務手数料のみかかる)ドイツの大学とはかなり違いますね。

そして、大学のホームページをどんなに見ても、僕が今いる「大学院博士課程」の学生募集や入試要項は見つかりません。学生は修士までで、博士課程大学院生はドイツと同じく大学スタッフとして雇用される立場になります。つまり「仕事」として研究をすることになるので、学費は完全に無料で、相当額(残念ながらドイツよりは少し安い💦)のお給料が出ます。金額は、日本で大学院修士を修了して新卒採用される場合の、約1.8倍くらいの金額です(ドイツだと2倍程度)。

日本で修士を終えて、「研究を続けたいけど、博士課程へ行くお金がない……」と断念しかけている人は、ぜひオランダへいらしてください。大学院博士課程のシステムはヨーロッパ内でも国によって多少違うのですが、オランダ、ドイツ、スイスは完全に「研究スタッフ雇用」となるので、「どうにか生活していける」程度ではなく、「就職した場合と同等あるいはそれ以上」の収入が保証されます。
 ただし、採用は非常に「狭き門」で、今回僕が採用された研究テーマ・研究室での募集は、1名のみでした。

堅苦しい話はこのくらいにして、写真と共に大学をご紹介します!先月までいたドイツのダルムシュタット工科大学とは随分趣が違います。

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オランダの建物はとにかく窓が大きい!

電車でドイツからオランダに入ると、真っ先に気づくのが「オランダの建物は窓が大きい」ということです。地震がないので窓を大きく取っても強度的に問題ない、曇天の日が多いので、太陽光をできる限り取り入れたいという理由ももちろんありますが、理由はそれだけではありません。オランダ人に聞いたところ、宗教的理由があるとのことです。
 それは、「何もやましいことはしていません」と、支障がない限り室内を外に見せる文化です。必要な時はカーテンで隠します。部屋に大小二つの窓がある場合は、大きい方がいわゆる「はめ殺し(開かない窓)」で、小さい方が開閉できるようになっていることが多いようです。昨日から僕の通っているオフィスの建物はこんな感じで、窓というか外壁は全部ガラスです。

Atlas(アトラス)〜 雰囲気は新宿西口の三井ビルに少し似ているかも
隣の建物もやはり窓が大きい
スクールカラーは赤だが、学内のベンチは黄色(しあわせ色✨)

大学の各校舎には愛称がついている

英語圏の大学では、大学の校舎には有名な教授や多額の寄附をした人の名前がついていることが多いです。日本の大学は、「1号館」「2号館」などと番号がついていることが多いのではないでしょうか。ドイツも同じで、先月までいたオフィスの名前は「S2|02」というものでした。

今僕のいる TU/e では、各建物に愛称が付いています。上で紹介したガラス張りの建物は「Atlas(アトラス)」。その他にも「Luna(月)」「Aurora(オーロラ)」「Matrix(マトリックス)」など様々な名前があります。なぜか「Vertigo(めまい)」という名前の建物もあります。いくつか写真でお見せしますね。それにしても、ガラス、ガラス、ガラス……ですね。

実験室棟の Matrix(マトリックス)
渡り廊下もひたすらガラス張り
多目的に使える MetaForum(メタフォーラム)10月に行われるアイントホーフェン・マラソンの本部にもなる(ハーフマラソンの部に出る予定)

建物内部をちょっとだけ✨

毎日出勤するのは、「Atlas」の9階にあるオフィスで、写真の通り壁は足元まで全部ガラスです。高いところが苦手な人が来たらどうするのだろう……と思ってしまいました。そしてなんと、窓は開けることができます!部屋で一箇所だけ、スイッチを押すとガラス張りの外壁が電動で 5cm ほど外側に迫り出して、換気ができるような仕組みになっています。

窓の外に見えている建物は「Luna(月)」緑が美しい
教授と大学院生のオフィスが混在する廊下〜こちらもやはりガラス張り
たくさんある小会議室はこんな感じ

建物内は、複数階が内階段で繋がっており、2フロア吹き抜けになっている箇所が多くあります。講義室はほぼ全てが吹き抜けで、開放的な雰囲気の中で学生が授業を受けています。

2フロアが内階段で繋がっている
大学院修士の学生用の研究スペース 〜 自分のノートPCを大型モニタに繋げるようになっている

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超フラットな人間関係

そんな「透明性が確保された」大学なのですが、人間関係が超フラットなことに、何より驚かされました。下のサイトは僕の所属する、Human Technology Interaction(HTI) 研究室のスタッフ一覧なのですが、なんと教授と大学院生が分かれておらず、姓のアルファベット順にごちゃまぜに並んでいます。30代の教授も、60歳近い大学院生もいるので、年齢は関係なく意見を交換する雰囲気です。

今朝も自席に座っていると、廊下を通った20代の同僚から「トオル、コーヒータイム行くよ!」と声をかけられました。人生経験が長いからといって尊敬してもらえるわけではなく、でも逆に若い人だけで集まることはなく、年齢に関わらず仲間に入れてもらえる雰囲気があります。「〇〇さんは、今育休中だから」と、出産で研究を一時中断して、しばらくしたら戻ってくる人も多いようです。

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みんな倹約家!何が高くて何が安い?

オランダの物価は、ドイツに比べてもさらに高いです。「匠ラーメン」というチェーン店が二店舗あるのですが(片方は味噌中心、もう片方はとんこつ中心)、ラーメン一杯約3,000円です。大学の学食でサンドイッチのようなものを買っても、あっという間に1,000円を超えます。

そんな事情もあり、HTI 研究室のメンバーはほぼ全員がお弁当持参! 僕も初日からサンドイッチを作って持って行きました。みんなで連れ立ってソファのあるスペースに行ったり、天気のいい日には外に座り込んだりして話しながらお昼を過ごすのが一般的なようです。

日本人的には木陰の芝生の上に座りたいのだが……

個人主義が徹底している国なので、ああやってお昼時間に集まることで、お互いの生存確認をしているような気がします。ヨーロッパ出身者はサンドイッチの人が多く、中国や中東系の人は前日の夕食の一部を密閉容器に入れて持ってきている人が多いです。そうすると一食300円程度におさえられます。

サンドイッチ作ってみました!

最後に、ドイツと同じくお花が安い!のがとても嬉しいです。写真はスーパーの花売り場ですが、大ぶりのバラが15本入って €10、今のレートで約1,600円です。日本なら1本500円はしそうなバラなので、15本だと7,500円! 自宅用に買って楽しめる値段ではありませんね……

いくらかな、と思って見ると一束10ユーロだったバラ

外食すると高い反面、ビールとワインは安く、日々楽しめるのは嬉しい限りです。ワインは、500円程度のものがたくさんあり、小さめのスーパーでも写真のような品揃えです。

ワインの品揃えはいいが、大好きなピノ・ノワールは数種類しかない

こんな感じで、無事新天地での生活をスタートさせました。ドイツの UKP 研究室に引き続き、ここ TU/e の HTI 研究室でも、「初めてかつ唯一の日本人」です。「日本っていい国みたいだ、ぜひ行ってみたい」と思ってもらえるように、頑張って研究に励みたいと思います。

今日もお読みくださって、ありがとうございました🌷
(2024年5月3日)

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