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#小説

【ニッポンの世界史】#25 越境する中国史:陳舜臣のユーラシア的想像力

 この評伝で紹介されているのは、1970年代の大衆歴史ブームを土壌として、日本を超える視点から、イスラムと中国を繋ぐ立場を果たした作家、陳舜臣(1924〜2008)です。  この陳舜臣という人が、「ニッポンの世界史」の再定義に、どのようなかかわりをもったか、今回はこれをみていくことにしましょう。 中国史の案内人  陳の魅力をひとことでいえば、まるで見てきたかのように中国の歴史を解き明かし、現代世界とのつながりを意識させるところにあります。    本籍は台湾にありましたが

再魔術化するテクスト──カルトとスピリチュアルの時代の文化批評

第一回 世界は再魔術化しつつあるのか?  倉数茂 0 宗教の凋落? それとも再魔術化?  マックス・ウェーバーが、近代を脱魔術化の過程として捉えたことはよく知られています。宗教改革と啓蒙主義以降、それまで世界を覆っていた宗教的力能は徐々に領域を狭めていき、やがて合理主義的思考に取って代わられる。これがウェーバーら、初期社会学の巨人たちの見通しでした。ではウェーバーの時代から約一〇〇年がたった今、世界の脱魔術化は完成したのでしょうか。  世界112の国で1981年から202

小川哲『君が手にするはずだった黄金について』読書会やります告知(12/17予定)

なんだか冬らしくなってきた昨今、みなさんお元気でしょうか。夏か冬かでいったら冬派なもっち(@mocchi20xx)です。毎月恒例の読書会のお知らせnoteです。 11月読書会は植田文也『エコロジカル・アプローチ』(つじーさん@nega9_clecleがファシリテーターしてくれます)ですが、12月の本も決まったので告知! ●小川哲『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社) ●申し込みはコチラ(詳細は下に。storesというサイトにとびます。) 選書の理由個人的な話で

Dの世界の日本文学を真剣に考えてみた/『力と交換様式/柄谷行人』読書感想文

画/透視 Clairvoyance /村上隆 より   10年ぶりに長編小説を書いています。ここ半年間は小説の題材を求めて、高野山で結縁灌頂を受けたり、ChatGPTにメタフィクションを書かせたり、AV監督さんとその仲間たちと対話したりと、とても自由な時間を過ごすことができています。中でも、学生時代に学んだ本、好きだった本をもう一度手に取ることができたことは、幸いでした。 その流れから、今回柄谷行人の最新作『力と交換様式』を読みました。なかなか読み応えのある読書体験となり

大江健三郎論を公開します

自分にとって、最も影響を受けた表現者です。 2014-5年(22-23歳)に、いぬのせなか座の立ち上げと並行して書いた大江健三郎論の全文を以下に公開します。 初出:『いぬのせなか座1号』いぬのせなか座、2015年 レイアウトと絡むところもあり、紙面PDFとなります。 見開きと単ページ、いずれも内容は同一です。 要旨は以下。 自分にとって大江さんは、「いえの近くのあのあたり出身の有名な作家」であり、子どものころからなんとなくの親しみを持っていました。 『水死』発売時に

旅とブンガク|太宰治に呼ばれて東京・三鷹と青森・津軽へ

これを「呼ばれた」と言わずしてなんというのだろう。 2022年、それぞれ別の目的で行ったところがたまたま、太宰治ゆかりの場所だった。太宰治が晩年長く暮らした町・三鷹と、太宰治が生まれた土地・津軽。 太宰治に影響されたイタすぎる中高生時代文学好きあるあるだと思うのだが、10代の頃は太宰の作品にけっこう影響を受けていた。国語の授業中に教科書じゃなくて、こっそり太宰の小説を読むのがかっこいいと思っていたイタすぎる中高生時代。読書感想文ではじめて県で表彰されたのも太宰治の『斜陽』

一階堂洋「科学予算をすべて防衛費にしろ 内戦を起こして技術検証をしろ」

◆作品紹介

ヒット連発中! 浅倉秋成が語る「絶対読んでしまう物語」の極意とは?

◆ある日突然、殺人犯に仕立てあげられたら ——新作『俺ではない炎上』、ものすごく面白く拝読しました。大手ハウスメーカーの営業職、山縣泰介がSNSで女子大学生殺害犯の疑いをかけられ大炎上。泰介の逃亡劇が複数の視点から語られていきます。ネタバレを避けつつお話をうかがいますが、まず、アイデアはいつ頃からあったのでしょうか。 浅倉 結構前、それこそ『六人の噓つきな大学生』を書く前から「ネット炎上逃亡劇」というアイデアだけはありました。一回特殊設定を排したものを書いてみよう、というア

アメリカ文学史に屹立する「何もしない」英雄――『教養としてのアメリカ短篇小説』より、「書記バートルビー」を読み解く第2講を全文公開!

 “I would prefer not to.”(「わたくしはしない方がいいと思います」)とは、『白鯨』の著者として知られるハーマン・メルヴィルの短篇小説「書記バートルビー」に出てくる表現です。上司に言いつけられた仕事をこの言葉によって拒絶しつづけ、それ以外一切の説明をしない奇妙な人物・バートルビー。アメリカ文学史に屹立するこの「英雄」の物語が発表されたのは1853年。150年以上前の作品ですが、先ごろ日本経済新聞の一面下コラム「春秋」(https://www.nikkei

未来を複数化させるメディア〈anon press〉を立ち上げます。

anon株式会社はこのたび、メディアレーベル〈anon press〉を立ち上げます。 本レーベルでは、小説の出版や漫画の出版、音声や音楽や映像の配信等を計画していますが、まずは第一弾としてnote〈anon press note〉を開始し、SF小説や未来に関するリサーチ、論考、座談会等のテキストを発信していきます。 anonではこれまで、「SFを社会実装する」ことを標榜し、さまざまな組織に対してSFプロトタイピングを行ってきました。 そうした実績から得た知見を社会に還元し

今月読んで面白かった本【2022年4月】

今月からカジノでポーカーテーブルのオーガナイズを始めたので、一日の大半をポーカーで過ごす生活に舞い戻ってしまったため、前月よりも読了はグンと減った。けれど、コツコツと読んでいる。 THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す(アダム・グラント)アダム・グラントの新刊。テーマは「考え直すこと(再考)」について。メッセージングとして、シンプルにアンラーニングを促すことのみならず、人間の内に潜む「牧師」「検察官」「政治家」のモードを峻別・解説しながら、より善く生きるため

2021年読んで面白かった本10冊【前編】

2021年もあと少しです。今年もいろんな本との出会いがありました。1年の終わりに自分が何を読んで、なぜ面白いと感じたか記録に残したいので、掲題のとおり、今年読んで面白かった本を10冊紹介します。本記事はその前編になります。新書だったり、新書、ノンフィクションと、ジャンルはバラバラですが、ぜひ最後までご覧下さい。 1.ブレイディみかこ『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』手に取ったとき「小説かな?」と思っていたらエッセイだった。一応分類はノンフィクションですが私はてっき

「NHK100分de名著 ヘミングウェイ スペシャル」出演の著者がエドガー・アラン・ポー「黒猫」を読み解く! 10/15(金)発売『教養としてのアメリカ短篇小説』より、第1講を抜粋公開

「100分de名著 ヘミングウェイ スペシャル」で指南役を務めている早稲田大学文学学術院教授の都甲幸治さん。ドミニカ共和国出身でアメリカ合衆国に移民した作家ジュノ・ディアスの翻訳などで知られ、自身でも「今まで自分はマイノリティ文学に特化して読んできた」という都甲さんが、アメリカ文学の“王道”ともいえるメジャー作家たちの短篇小説13作品を読み解く『教養としてのアメリカ短篇小説』が10月15日(金)に発売となりました。  それぞれの小説についての講義は、まず作品のあらすじを振り返

SF文芸誌 『SCI-FIRE 2021』製作中 !!    2021年11月発刊に向けて

こんにちは、甘木零と申します。SF文芸同人誌 『SCI-FIRE 2021』の責任編集者です。 「SCI-FIRE (サイファイア)」は2017年に結成したSF作家のコミュニティであり、年一回発行している誌名でもあります。母体となったのは ゲンロン 大森望SF創作講座 第1期生でした。 2016年に開講した同講座1期は2017年3月に修了しました。高木刑「ガルシア・デ・マローネスによって救済される惑星」が第1回ゲンロンSF新人賞を受賞。高橋文樹「昨日までのこと」が飛浩隆賞に