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映画の感想

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2024年1月の記事一覧

血塗られた快楽主義者たち〜「みなに幸あれ」【映画感想】

血塗られた快楽主義者たち〜「みなに幸あれ」【映画感想】

下津優太監督の初長編映画「みなに幸あれ」が示唆に富む怪作だった。本作は「第1回日本ホラー大賞」の大賞を受賞した11分の短編映画を長編へとリメイクしたもの。「呪怨」の清水崇監督が総合プロデュースを務め、Jホラー文脈による強いバックアップと先鋭的なアイデアが交差した作品と言える。

本作は「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」という思想に基づいた物語が展開されていく。やりすぎなくらいの恐怖描

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2065年の花束〜「もっと遠くへ行こう。」【映画感想】

2065年の花束〜「もっと遠くへ行こう。」【映画感想】

イアン・リードの小説を原作としたAMAZON ORIGINAL映画「もっと遠くへ行こう。」に圧倒された。「レディ・バード」のシアーシャ・ローナンと「aftersun」のポール・メスカルの共演によるSFドラマで、超大作ではないが紛れもなくサイエンスフィクションであり、そして人間ドラマであった。

この映画における宇宙の要素に関しては夫婦への影響の1つであり、主題となるのは親密であるはずの関係に生じて

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倒錯の正体〜「Saltburn」【映画感想】

倒錯の正体〜「Saltburn」【映画感想】

上の令和ロマンのインタビューで高比良くるまが松井ケムリを「お金持ちの息子さん」「でも甘やかされておらず、正しい金銭感覚を持ち、そして、おおらかな精神もあわせ持つという日本最強の男」と評していたのは微笑ましかった。そしてケムリもくるまを「彼の面白さを伝えるのが役割」とM-1アナザーストーリーで話しており更に胸が熱い。大学で出会った彼らの関係性に、階級や格差を前提としたルサンチマンが見えてこなかったの

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