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6月のいだてん

前篇の最終月ということもあり、途轍もないエネルギーで各回が描かれていて、鳥肌立ちっぱなしだった。このドラマの放送に立ち会えた幸せたるや!

第21回「櫻の園」
金栗四三の現役引退から、女子スポーツ立ち上げへの流れが描かれる。それに伴い、めちゃくちゃチリチリの髪型になってるのでこの回はしばらく画だけで面白かった。東京府立第二高等女学校(竹早)が舞台となり、シマちゃんも先生になって参加し、永井先生は月ごとにテイストを変えながら継続出演している。アブノーマル呼ばわりされようが、徐々に竹早に馴染んでいく四三、香水を口に振りかけるっていうシーンを大河ドラマでかますかね!

黒島結菜は「ごめんね青春!」を彷彿とさせる凛とした委員長キャラクターだし、北香那もおとなしめの役が新鮮。あと、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で安藤サクラのモノマネしてたガール座の百瀬さつきが、ぽっちゃり枠を勝ち取っててオッてなった。あと、またしても山下敦弘監督が写真家役で再登場していた。「火の鳥」みたいに、あらゆる時代の写真を撮影する存在として神様のように出続けるんじゃないかと勝手に信じている。

第22回「ヴィーナスの誕生」
6月に入り、一気に若手女優陣が追加されていったけど、夏帆の登場もとても嬉しい。「監獄のお姫様」では地味目な役だったので、志ん生の嫁というのはとても期待できる。デカい女として登場した菅原小春も初演技とは思えぬ風格。そして黒島結菜、北香那コンビの眩しさもまた!野口くんはいつのまにこんなおもしろ枠になってしまったのか、二階堂先生もいつしか女子体育との心中を雨降る夜に呪詛を唱えるようになり、人物像の崩壊が著しい。

「女子が靴下を履くんじゃなく男が目隠ししたらよか」という屈指の名台詞が飛び出したこの回。結局のところ時代は巡るというか、こういう言葉が絶対的なものとして今も響いてくるのがクドカンの脚本なんだな、と。それこそ、「ごめんね青春!」で描いた男子校と女子高の合併、「監獄のお姫様」で描いた女子刑務所、この系譜として「いだてん」が語られるのよな。ただ、それも一面でしかない。「いだてん」とはフルジャンルの作品なのだ。

第23回「大地」
板尾創路演じる父親が、自分の子供とのもめ事を解決するためにスポーツで対決する、というくだりは偶然にも同クールの「俺のスカート、どこいった?」でもあった場面なので笑っちゃったな。何そのシンクロ、っていう。

そして関東大震災。志ん生が語る落語という形で激しいテンポでその状況を語り、その後甚大な被害をもたらした火災をプロジェクションマッピングを用いて語る。演出として冴え渡るほどに、その恐怖と緊張感が伝わってくる。哀しみの中心には、創作人物ながら、この物語を陰で牽引してきたシマちゃんが。11万人が行方不明となった災害としてじゃなく、一人の人物が居なくなったということを、夫である増野の、夫婦としてのちょっとした会話から描き出すという、筆舌に尽くしがたい繊細さがね、、、涙がとまらん。

第24回「種まく人」
金栗四三編の最終回。クドカンはどんな時代を描けども、苦しみや悲しみと"楽しさ"で対峙するんだな、と思って本当にじんとなる。同様に震災を描いた「あまちゃん」でもそうだけど、笑いやエンターテイメントの力を狂おしいほど信じて、不謹慎さなんて吹っ飛ばして今そこに立ち上げるべき"楽しさ"で勝負しにいってる。そんな矜持を描いたのが復興運動会であり、復興寄席なのだ。スポーツと縁遠いと思っていたクドカンが、自身の持ち場である舞台芸と並列でスポーツを描いた。彼はこのテーマを描くべき作家だった。

前篇のキャストがほぼ勢揃いという豪華な画面。しかしそこに居ない、シマちゃん(杉咲花)の存在。それでも彼女の出した手紙が次の世代へと繋がる。寂しさの中、何かを受け入れた増野(柄本佑)の表情もまた強く心に残った。

第25回「時代は変る」
田畑政治(阿部サダヲ)が主人公となる後篇の幕開け。しかし強烈な喋り量である。金栗とあまりに違いすぎて、このテンポに振り落とされる人続出するだろ笑。主人公がリレー形式と言えど、あんな無茶苦茶なガヤを叫んで、水泳連合だけ独立させて、水泳編へ、って笑。岸さん(岩松了)、野口くん(永山絢斗)、治五郎先生(役所広司)をねじ伏せて突破していく邪道すぎる展開です。このやり過ぎなパワーこそが下半期を彩るのだと思うとゾクゾクする。

追加出演者もたまらない。「木更津キャッツアイ」から薬師丸ひろ子、「タイガー&ドラゴン」から桐谷健太、リリー・フランキーにシソンヌじろうとサブカル色もべったり。そして阿部サダヲ×皆川猿時ですよ。We Are ライバル、Be my ライバルですよ。破壊と港カヲル、この座組が日曜20時に!

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