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2020年8月に観た映画(君が世界のはじまり/ラブ&ポップ/そうして私たちはプールに金魚を、/放課後ソーダ日和 特別版)

君が世界のはじまり(2020)

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ふくだももこ監督が自身の原作小説を基に制作した作品。ブルーハーツが惹起する少年少女の衝動、というモチーフを「リンダ リンダ リンダ」とは違う形(脚本が同じく向井康介なのも興味深い)で爆発させていて美しかった。ライブ場面に値するパートで小室ぺい(ニトロデイ)が叫ぶ「人にやさしく」の<ガンバレ!>が着地するシーン、あまりにも優しい、、と思わず涙ぐんだ。

あの頃、同級生たちが抱えていた想いは全然分からなかったし、今となっては知ることもできないけど、皆それぞれにグツグツとした葛藤や言い出せないしこりがあったかと思うと、なんてギリギリな世界だったんだろう。「それでも分かりたい」と思う言葉は光で、握る手は温かく、呼ぶ声は祈りで、誰か1人の世界なら変えていける。”My name is yours"の副題が眩しかった。


ラブ&ポップ(1998)

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庵野秀明監督の実写作品。Base Ball Bearの大傑作・3rdアルバム『(WHAT IS THE) LOVE&POP?』にもタイトルが引用されていたので長らく気になっていたのだけど、この度初鑑賞。とんでもなくクールな作品で、見惚れてしまった。全然色褪せねえな!と。手持ちビデオカメラが描き出す女子高生の日常風景の中に抜群の編集センスで非日常や夢幻を混入させてまとめている。

90年代後半のサブカルチャー、という文脈をリアルタイムで享受することのなかった僕は世紀末の空気感を伝聞を通じてしか知れないが、この薄っすら絶望みたいなムードってどんな時代の10代にも共通なんだな、と。TikTokとか外に向けて自己を放つコンテンツが増えた現代にはない類の、承認欲求ともまた違う種類の、"私の実存性"についてのルポルタージュ、のような。


そうして私たちはプールに金魚を、(2017)

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「ウィーアーリトルゾンビーズ」で衝撃をくれた長久允監督による短編。あの映画にあったテンポ感/色彩感はこの映画から継承されていたのか!と納得しまくりの1本。というかテーマ的にもかなり近い。怠惰を貪るローティーン、「私たちはゾンビなのです!」のモチーフ、無機質な台詞回しと美しく驚きに溢れるショットの数々、、、まだまだこの感じで撮り続けて欲しい。

30分程の作品で、本編も全部YouTubeにアップされているのでさくっと観れる、そのうえで作風をアピールできるって流石はCM作家!とか思っちゃうのだけどこのスピード感とシェアされやすさというのが実に今っぽい"夏"を体現している。コメント欄も含め凄く良い仕上がり。どこかの誰かのつまんなくってどうしようもなかったあの夏へとアクセスできる記憶装置でもある。


放課後ソーダ日和 特別版(2019)

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枝優花監督「少女邂逅」のスピンオフとして制作されたYouTubeドラマを映画用に再編集したもの。7月に観た「アルプススタンドのはしの方」を食らいすぎて、8月には沢山の青春映画を観たのだけど、その中ではかなり軽いタッチ。性格ばらばらな3人がひょんなことから仲良くなり、放課後にクリームソーダを飲む。食レポシーンはほとんど「ラーメン大好き小泉さん」である。

ただこの何気ないムードというのが、時間を経るごとに異様に愛おしくなってくる。最初はカット割もどたばたしていてポップだが、終盤の内省的かつセンチメンタルなシーンをより引き立たせる。刹那的な時間の輝き、いつか終わってしまうことが背中合わせ、というのは「少女邂逅」とも呼応する。溶けてくアイスと連動する一瞬の永遠。青春映画のど真ん中を颯爽とゆく。


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