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ド短編

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ポッドキャストっぽいやつ、サッと読めるものを目指しましたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたt
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竜巻の住む家(ショートショート)

竜巻の住む家(ショートショート)

竜巻の住んでいる町がある。
竜巻さん、という名前の住民がいるわけではない。あの自然現象の竜巻だ。
竜巻といえば巨大なものを想像しがちだが、その町の竜巻は家の中に存在しているらしい。
そういうわけで『町に住んでいる』のだ。

旅行者の私は、偶然その町を訪れた。
町の入り口付近にいた住民に竜巻の具体的な大きさを訪ねると「身長200cmのバスケ選手の両肩に、身長205cmのバレーボール選手が立っているく

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使いパシリさせられるエース(ショートショート)

使いパシリさせられるエース(ショートショート)

元気がない。

自分でいうのも何だが最近めっきり元気がないのだ。
これはマズい。

私が勤務する会社は世間でも名の通った一流企業で、
ここに在籍しているだけでもある程度の成功者といえる。
そしてこの会社で私は自他共に認める若手のエースだ。
その評価に恥じぬよう私は働き、
同期や他の若手有望株を遠く置き去りにするほどの結果を出してきた。

そんな私には今、元気がない。

ないというより湧き上がってこ

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完璧な彼女(ショートショート)

完璧な彼女(ショートショート)

今日は彼女と初デートである。

彼女とは1ヶ月前にマッチングアプリで出会った。
名前はアイという。
とても美しい女性だ。
艶やかで長い黒髪。大きな眼に高い鼻、上品な口元、
透き通るような白い肌に、少し華奢だが程よく張った胸とヒップ。
そして表現がやや下品なのを承知で言うならば、
腰のくびれ具合、ラインがとても艶めかしい。

完璧な容姿。

アホみたいだが本当にそう思った。
現実にこんな女性がいるな

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闘技場の大会(ショートショート)

闘技場の大会(ショートショート)

この国は女王が統べている。
若く聡明で麗しい女王が。

男は存在しない。
いや、厳密には存在する。だが、全ての男は
生命維持カプセルの中で管理され
個体数の増減も完璧に調整されている。
世界中の人間のオスという種が同じように管理されている。
例外はない。
精子さえ確保できれば種の保存は可能。
そういう前提で今、世界は回っている。

話を戻そう。
この国には闘技場がある。
女性同士が戦う闘技場だ。

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違和感と窓(ショートショート)

違和感と窓(ショートショート)

何か居る。

この部屋はとても気味が悪い。

どこからともなく声がするのだ。
隣の部屋から漏れてくる隣人の声?
いや、それはない。

なぜならこのアパートの入居者は
私ただひとりだからだ。

嘘か誠かこの世界には、見えないものを見、
聞こえないものを聞く力を持った人たちがいる。
私はそういった類の能力者ではない。
しかし、堪えず部屋から声が聞こえるのだ。

その謎の声に耳を澄ますと、
どうやら愚痴

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緑のスイッチ(ショートショート)

緑のスイッチ(ショートショート)

私には運がない。
あの星から逃げ出しておいて何を、
と思われるかもしれないが
とにかく私には運がない。

有名な話だが、あの星、つまり私の母星では
皆が厳重な管理の下に暮らしている。
統治者への不平不満など漏らそうものなら
即刻逮捕され、然るべき場所での過重労働と
再教育が待っている。

そんな星で私は警察官の職に就いていた。

しかし、体制側である筈の私にも
厳しい目は向けられていた。
上司から

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蛮勇(ショートショート)

蛮勇(ショートショート)

ヤツは強い。
この世界を圧倒的な力で支配している。
最強の支配者だ。所謂チートといって差し支えないほどに。

そんなヤツに私は挑んだ。

何故か?
世界の平和、秩序を正すためだ。

私は無謀だ。しかし、それほど馬鹿でもない。
ひとりではなく仲間とともにヤツに挑んだ。
剣の達人、弓の名手、偉大な魔法使い、頑強な武道家…。
最高の仲間たちだ。
家族、といってもいいかもしれない。

しかしヤツは、そんな

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ぼくの作文(4年2組小平博史編)

「えーっと、『体育祭』。4年2組、小平博史。
ぼくは体育祭が大好きです。
なぜかというと、僕は足がとても速いからです。その速さは、ちょっとしたサイボーグなみです。
誰もぼくについて来ることはできません。速すぎて時間が止まったように感じる時もあります。
そんなぼくのことを、クラスのみんなは“神”と呼びます。決して悪い気はしません。

プチ自慢は置いといて、体育祭です。
ぼくはたくさんの競技に出場しま

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新しいあり方を考えよう(野球の新しいあり方を考えよう編)

新しいあり方を考えよう(野球の新しいあり方を考えよう編)

以下は語り手の台詞

新しいあり方を考えよう。本日は、野球の新しいあり方を考えてみましょう。

ではまず、センターフライの新しいあり方を考えましょう。

私は、キャッチする守備者に変化を加えることを提案します。グローブの他に、“父の形見である脇差し”を携帯してみてはどうでしょうか。

こうすることで、仇討ち感がよくにじみ出ていて盛り上がる

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