伊藤伸平

トラベルライター&エディター。海外旅行関係の書籍を作っています。 著書に『総予算33万…

伊藤伸平

トラベルライター&エディター。海外旅行関係の書籍を作っています。 著書に『総予算33万円・9日間から行く 世界一周 大人の男海外ひとり旅』『気軽に始める! 大人の男海外ひとり旅」(ダイヤモンド社→地球の歩き方+学研プラス)など。

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最近の記事

釈迦降誕祭に思う

 日本では例年4月8日に行われる灌仏会=「花祭り」。ネパール南部のルンビニで釈迦が生まれたとされる日を祝う行事だ。しかし、東南アジアからインド、ネパール、スリランカにかけての上座部仏教地域では、仏滅紀元の暦を用い5月の満月の日としており、今年は5月26日だ。実は5月は釈迦誕生はもちろん、釈迦がインドのブッダガヤで悟りをひらいた月、またインドのクシナガラで入滅した月とも言われ、仏教にとってひじょうに重要な月となっている。  20代後半にルンビニ、ブッダガヤ、クシナガラを訪れ、

    • ウズベキスタンの桜

       豪雪だった今年の冬も終わり、雪国・秋田にもそろそろ春の兆しが現れる頃。この原稿を書いている3月下旬の東京では、例年より早く桜が満開となった。調べてみると、秋田市でも例年より1週間ほど早い4月11日頃の開花予報となっている。  桜は日本では春の訪れを象徴する花だが、実は海外にも桜の名所が数多くある。そのひとつがウズベキスタンの首都・タシケントのナヴォイ劇場と日本人墓地、中央公園の桜並木だ。  第二次世界大戦終戦時に、約60万人ともいわれる日本人が、シベリアを始めとする当時の

      • コロナ禍での全豪オープンテニス

         テニスの4大大会(グランドスラム)のひとつ、全豪オープンテニス。例年メルボルンで1月中旬から2週間にわたって行われるのだが、今年は3週間遅れで2月8日に開幕し、今週末(2月20日、21日)に男子、女子の決勝を迎える。オーストラリアは世界的に見ても新型コロナの封じ込めに成功している国。参加選手には指定チャーター機でのオーストラリア入国と、入国後の隔離政策を徹底した。こうした対策を行うために、100年を越える歴史の中で初めて2月開催となったのだ(一時期12月開催だったことはある

        • クリスマスにはロックウェルの絵を……

           12月のクリスマス前のこの時期、「ノーマン・ロックウェルの絵が見たいなぁ」と思うことが多くなる。ノーマン・ロックウェルは1910年代から1978年に亡くなるまで、精緻なタッチで古き良きアメリカの様子をユーモアを交えて描いた画家、イラストレーター。1916~1963年にはアメリカの人気雑誌『サタデー・イブニング・ポスト』の表紙の絵を担当しており、多くのアメリカ人に愛されてきた画家だと言っていいだろう。  クリスマスの絵も多く、1990年代後半には日本の大手デパート伊勢丹のク

        釈迦降誕祭に思う

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        • オーストラリア雑学ノート
          2本
        • オーストラリアは美味しい
          6本

        記事

          ノヴェッロの季節がやってきた

           以前イタリアのウンブリアからトスカーナにかけてドライブで周遊したことがある。ウンブリアといえば聖フランシスコ会の聖地である巡礼地アッシジ、トスカーナといえばイタリアルネサンスが花開いた大人気観光都市である花の都フィレンツェや、そのフィレンツェと覇を争った芸術の町シエナなどがよく知られている。  ドライブ旅行の時には、もちろんこうした有名な町にも立ち寄ったのだが、それ以上に心に残った情景は、丘陵地帯に続くブドウ畑や、その合間の丘の上に点在する、大都市以上に中世の歴史をしっか

          ノヴェッロの季節がやってきた

          オーストラリア雑学ノート(1)

          10月のオーストラリア雑感 生き物観察に適したシーズン  今日から10月。  僕が頻繁に訪れているオーストラリアは春から初夏に向かおうという時期で、個人的には一番好きなシーズン。オーストラリアは国自体がひとつの大陸と言うほど広大なので、場所によってこの時期もさまざまな表情を見せてくれる。北部は乾季が終わりに近づき、雨の心配は無くとも肌では少しずつ湿気を感じるようになる。乾季の間は風が強く吹くことも多いけれど、10月に入ると風も止みだし海は穏やか。外に飛び出さずにはいられ

          オーストラリア雑学ノート(1)

          オーストラリアは美味しい(6)

          オーストラリアの和牛 Wagyuは日本からの和牛にあらず  2003~2004年頃だったと思う。レストランでメニューを見た時に「Wagyu」という言葉が目に入ってきたのは。当時の僕の認識は 「オーストラリア人は、肉本来のうまみを楽しむ人が多く、赤身の肉を好む傾向にある。しかもステーキなどは、レアよりもしっかり焼いたウエルダンに近い肉を好んでいる。」  というものだった。実際、ステーキをオーダーする時に聞かれる焼き加減も、ミディアムレアでオーダーしても、しっかりミディアムに

          オーストラリアは美味しい(6)

          あなたと一緒にオーストラリアを旅した『地球の歩き方』は?

          僕は1982年、オセアニアをぶらぶらと旅しているときに、ニュージーランドのクライストチャーチで当時の地球の歩き方編集長から声をかけられ、トラベルライター&エディターの世界に入った(その当時のことはいつか記事にしてみたいと思っている)。地球の歩き方は今年で創刊40周年を迎え、記念版として初の国内版である『地球の歩き方東京編』を先日発売(僕も少し記事を書いている)。 昨日Twitterの「地球の歩き方」アカウントに次のような記事が掲載された。 表紙を見ると当時の、取材のような

          あなたと一緒にオーストラリアを旅した『地球の歩き方』は?

          オーストラリアは美味しい(5)

          ワイン産地の豪邸で過ごす一夜 冷涼地ワインの注目産地ヤラバレー  メルボルンからヤラバレーへと向かった。  ヤラバレー――メルボルン中心部を流れるヤラ川の上流地域の丘陵地帯。メルボルンから車で一時間ほどということもあって、日帰りで訪れる人が多い場所だ。動物病院を併設し、珍獣カモノハシの生態をわかりやすく見せてくれるショーが人気のヒールズビルサンクチュアリー、ユーカリの森林の中をポッポッーと汽笛をあげながら蒸気機関車が走る保存鉄道パッフィンビリーなど地域一帯には観光施設も多く

          オーストラリアは美味しい(5)

          オーストラリアは美味しい(4)

          自分だけのワインを造る ワイナリーオーナーの思い  クリードワイン併設のホテル、リンドックヒル・ホテルに泊まると知ったオーナー、マークが、僕を自慢のレストランでのディナーに紹介してくれた。側面を全てがガラス張りの開放感あふれるおしゃれなレストランでのフルコース。そのメインコースを味わう時に開けたのが、  クリードワインのマックス・シングルヴァインヤード・シラーズ2006  Crred Wines Max's Single Vineyards Lyndoch GHR Sh

          オーストラリアは美味しい(4)

          ミクロ国家ハットリバー公国を懐かしむ

          成功したミクロ国家として注目を集めていたハットリバー公国  ひとつの、そして50年の歴史を持つミクロ国家がなくなろうとしている。ミクロ国家とは、独立宣言をしているが、他国には承認されていない自称国家のこと。世界に数十あると言われており、今夏その幕を閉じそうなのが、最も成功していると評判だったハットリバー公国だ。  西オーストラリア州州都パースから海岸沿いを北に約500キロの、一見ただの牧草地。そこが今、国の歴史を閉じようとしているハットリバー公国だ。ハットリバー沿いに広が

          ミクロ国家ハットリバー公国を懐かしむ

          オーストラリアは美味しい(3)

           この週末ににケアンズの友人から 「オーストラリアは美味しい(1)がアップされた日、その日の我が家の夕食はローストビーフでトップ画像と同じ、(2)の生牡蠣の日は夕食が牡蠣でした。いやぁ、偶然ですね」  とメッセージをもらった。でも今回ははたしてどうなることか……さすがに食卓には並ばなさそうな気がするけれど(笑)。 オーストラリアン・ジビエ オーストラリアン・ジビエの代表格はルーミート  オーストラリアを代表する動物といったら、これは誰が何と言おうとカンガルーだ。つね

          オーストラリアは美味しい(3)

          ウズベキスタンの伝統刺繍スザニの模様にコロナ禍が過ぎ去ることを願う

           かつてシルクロードの中継地として栄え、サマルカンドやブハラ、ヒヴァといった旅情を誘う世界遺産の町が点在する中央アジアのウズベキスタン。14世紀以後に建造された壮麗なイスラム建築が数多く残り、特にティムール朝時代の首都サマルカンドは、「青の都」として世界的に知られる観光地だ。  多くの歴史的建築物は修復作業が行われ、往時の姿を復活させている。ティムールが愛したとされる、さまざまな青タイルをふんだんに使った装飾が美しい。抜けるような青空のもと、照りつける太陽によって青く輝くイス

          ウズベキスタンの伝統刺繍スザニの模様にコロナ禍が過ぎ去ることを願う

          オーストラリアは美味しい(2)

          今日も生牡蠣はおいしかった!シドニーに着いたらまずは生牡蠣  もう何度、この町を訪れたことだろう。美しい入り江が天然の良港となっている街シドニー。諸説あるようだが、「世界三大美港の街」のひとつとして、アメリカのサンフランシスコ、ブラジルのリオデジャネイロと並び称されるオーストラリア最大の街である。  シドニーへ着くと、まず向かうのがその世界三大美港に突き出す小さな半島の突端に造られたシドニー・オペラハウスだ。シドニー湾内航路のターミナルとなっているサーキュラーキーで電車を降

          オーストラリアは美味しい(2)

          オーストラリアは美味しい(1)

          イントロダクションにかえて  オーストラリアの「食」と言われても、あまりピンとこないと思う。だいたい「食文化」といえばフランスやイタリア、スペインなどヨーロッパのラテン系国家や、中国、タイ、ベトナム、インドなど東南・南アジアの国々ばかりが注目を集める。「食」に関して、かつてははあまり芳しい評判を聞かなかったイギリスの植民地として発展してきたオーストラリアは  「どうせイギリスと同じでしょ」  といった目で見られがちである。  それも仕方がないことかもしれない。なにしろ199

          オーストラリアは美味しい(1)

          旅の記憶

           noteにこれまで僕がしてきた、旅の話をいろいろ書いていこうと思う。noteへの書き下ろしもあるが、いくつかは、すでに他の媒体で発表した原稿でもある。少しでも僕の旅の話に興味を持ってもらえたらうれしい。  最初の記事は、昨年4月に秋田魁新報土曜コラム『遠い風 近い風」に書いたものだ。  海外を旅したときの情景をふと思い出すことがある。日差しが作る影、吹く風、空の色、花の匂い、ときには聞こえてくる音楽……トラベルライター&エディターになって35年以上経ち、さまざまな場所へ

          旅の記憶