見出し画像

中華の日々⑭ 東の男、「おまえだったか」とつぶやく


中国は深圳の公園でギターを弾き始めてからというもの、どうにも虫刺されに悩まされてきた。蚊はもちろんながら、わけのわからない虫に足のくるぶし周辺を刺されまくり、これが猛烈に痒いわ刺された跡がなかなか消えないわで非常に嫌なものだった。刺された後の就寝時に寝ぼけて掻きむしってしまい、「いかん、下手したら感染症のおそれがある」と我に返って寝られなくなるなどの弊害もあり、ともかくたまったものではなかった。「ダニか何かだろうか」とウェブで調べてみたのだが、どうもそういうわけでもないらしかった。

それがとうとう今日にその正体がわかったわけだが——それは極小のアブだった。冗談ぬきでゴマ粒レベルのサイズのアブ、腕に止まったそいつを見て私はすべてを理解したわけだ。わかって万事解決ハッピーというわけではないが、得体の知れない毒虫などではなくて良かった、とは思った。それで安心してギターを3時間以上弾き倒し、うまいかどうかは知らないがますますバカなギターを弾けるようになったと思う。本当はもっと弾きたかったが、そう思ううちに引き揚げることにした。

引き揚げてからはビールの飲み比べをおこなうことにした。皆勤賞レベルで通っているウォルマートで購入したハイネケン(500mlで約160円)と、ションベン騒ぎのいわくつきがあったが特に安売りもされていない青島(500mlで約110円)、それにグレードの低い哈爾浜(330mlで約40円)を飲んでみた。なお、いつも飲んでいるのは低グレード哈爾浜くんであり、私の評価は「安い。まずくない。というか特になにも気にならない」である。自他ともに認めるバカ舌の私は、基本的に「不味くなければうまい」式の考え方だ。が、そうとはいっても、まずいものがわからないというわけではない…のだが、あまりにも激安哈爾浜くんばかりを飲んでいるため、味の違いがちゃんとわかるか試してみることにしたのだった。というか、もっといえば中国はビールが安いので、あれこれ飲んでみたくなっただけだが。

つまみはピーナツと、「香腸」という中国式ソーセージを用意した。香腸は長さといい太さといい勃起した成人男性の陰茎そっくり(長さは16センチぐらいなので、平均より長めかもしれない。太さもご立派な方かもしれない)の腸詰で、味は日本で食べられるドイツ的な味をお手本にしたソーセージのそれとはまったく違う。一言でいえば、甘い。あと、結構高い。私が愛用しているのは3本で700円ぐらいのもので、真空パックに入ったそれを取り出し、30分ほど鍋で茹でて、それから冷やさなければならない。冷やした方がうまいのも、日本の一般的なソーセージのイメージと異なるといえるだろう。冷やすといっても鍋から出して放置するだけだが、とりあえずちょっと待つ必要がある。それから切り分ける。そして本当はもっと凝ったミソダレみたいなのを用意したほうがいいのだが、私は豆板醬をタレ代わりに用いる。何から何までウォルマートで購入したものばかりだ。ともあれ、用意ができた。

私の評価。
ハイネケン「うまい。飲みやすい」
青島「うまい。飲みやすい」
低グレード哈爾浜「飲みやすい。安い」

他日、実は黒ビールもいろいろと試していた私だ。
ドイツの黒ビール(500mlで200円ぐらい。名前は失念)「うまい」
どこかの黒ビール(500mlで200円ぐらい。名前は失念)「うまい」
ギネス(440mlで240円ぐらい)「うまい。パブで時間をかけて飲んで粘れそう」

東の男は、そういう男だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?