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記事一覧
【読書感想】森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』-ふしぎを取り戻すための物語
いくつか森見登美彦作品を読んできたが,ここまで作品や創作についてのメタ物語ははじめて読んだ.色々インタビュー等も読んでいると,実際に作者である森見登美彦自身のスランプを,ホームズに投射しているようだ.
まず,この作品は【ヴィクトリア朝京都】というパワーワードが出てきた時点で誰しもがやられてしまう.普通にありえないのだが,なぜか不思議と想像してしまえるのは,ヴィクトリア朝と京都のイメージのデータベ
【読書感想】みんなが少しづつ「魔女」を殺した-フェルナンダ・メルチョール『ハリケーンの季節』
読書会で『ハリケーンの季節』を読んだ.結構個人的には好きな作品だった.以下感想.
とある村で<魔女>が死んだ.
なぜその魔女が死んだのか.5人の視点から語られる断片的な事実から徐々にその輪郭が浮かびあがってくるという手法は,ミステリのようでもあり,自分自身が警察官やジャーナリストで聞き取りをしているかのようだ.
はじめに目を引くのは文体だ.この小説にはほとんど段落というものがない.
読書会
#書評 小峰ひずみ『平成転向論-SEALDS,鷲田清一,谷川雁』
小峰ひずみ『平成転向論』
第65回群像新人評論賞の優秀作を受賞したこの評論は,出版前から非常に話題だった.
私も同誌の紙面上でも,受賞時の論文を読んだ.そのときの感想は,確かに面白いが,後半の結論部が不明瞭で納得がいかないというものだった.
そこの疑問点は書籍化されたことによって,非常にクリアに,そして,なによりこの【文体】で書かれなければいけなかったということを強く納得させられた.書かれて
感想:プーシキンとNTR
プーシキンの『スペードのクイーン/ベールキン物語』を読んだ。
ドストエフスキーの後期中編の『賭博者』を読んでその元ネタっていうことで読んでみた。
プーシキン自身もかなり賭博にのめり飲んだということもあって賭博の描写は非常にクリアで迫力がある。
賭博というのは、常に対価として何かを失うことを前提としている。
失うことによってしか、得られない何か。いや、失ってもまだ手に入れたいと思う何か。
【読書】コロナの中で『銃・病原菌・鉄』を今何故読むべきか
下記記事は,ねとぽよで2012年に書いた書評を,一部改変し再構成したものです.
1.要約:《環境》が歴史をつくる 著者のジャレド・ダイアモンドは、カリフォルニア大学、ロサンゼルス校の医学部の教授である。彼の活躍の分野は多岐に渡り、生理学で博士号をとったのち、分子生理学、進化生物学を、さらに分子生物学、遺伝子学、生物地理学、環境地理学、考古学、人類学、言語学といった様々な分野を領域横断的に活躍し
【イベント感想】「終わりなき日常」とは何か-邦ロックで考える哲学 @大垣書店高野店
■終わりなき日常を邦ロックはどう乗り越えたのか?一乗寺フェスの中で、哲学者の戸谷さんのイベントがあったので、行ってきた。
社会学者の宮台真司の「終わりなき日常」という一つのキーワードを元に、邦ロックを読み解くという趣旨で、個人的には同年代で邦ロック好きとしても非常に興味深く示唆に富む内容だった。
そこでの議論は、物語と日常という二つを対比しながら、進められた。ここで注意しなければならないのは、こ
【読書】村田沙耶香『生命式』と生殖主義
*ネタバレ含みます
先日、村田沙耶香の『生命式』読書会をした。
自分は、村田沙耶香は未読だったので、今回初めて読んだが、久しぶりに「これはヤバいな」と思える小説に出会えた。『生命式』を読み終えてすぐに著者の本を何冊か読んだ。そして、改めて「この作家ヤバいな」と思った。
この作家の何が凄いのか。
一言で言えば、生殖主義を突き詰めているということだ。
どういうことだろうか。
本の内容を軽く説
【感想】花房観音・円居挽『恋墓まいり/きょうのはずれ』
gaccoh小説読書会#38
今回の読書会の感想。
携帯で適当に書いたので、雑です。
概要について京都の中心部から少し離れた場所を巡るおはなし中編二作が収められている。花房観音・円居挽という2人の京都作家が書いているのも面白い。
また、真ん中にある舞台の説明もあって、いわゆる聖地巡礼的なことも意識的にされているようだ。
恋墓参りヤバい女の人の話である。何がヤバいというと、結婚を間近に控え
【ノート】伊藤計劃と梅原猛について 「草木国土悉皆成仏とハーモニー」
最近ずっと考えていることがある。正確にはずっと前から考えてきたがやっと何か掴めそうなことがある。
先日、梅原猛氏と東浩紀氏の対談に同席したことについて書いたが、その時に語られたキーワードとして、『草木国土悉皆成仏』というものがある。
仏教において、草木や国土のように非情(仏教用語で感情や意識を持たないもの)のものも、等しく仏性(仏になるための原因のこと)を持つということらしいのだが、あの対談以降
【感想】東浩紀『ゆるく考える』
ゆるく考える
https://www.amazon.co.jp/dp/430902744X/ref=cm_sw_r_cp_api_i_xthJCbGA6CD0Q
この本は、批評家の東浩紀さんの2008年から2018年までの11年のエッセイをまとめたものだ。
少し思い出話をしよう。
個人的には、東浩紀さんを知ったのは、『なんとなく考える』の後半、つまり、2009年末ぐらいだったと思う。
その