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「女子の古本屋」 岡崎武志

「私は毎回、彼女たちの人生にただ圧倒され、締め切り前に原稿を書く段になって、「これはえらいことになった」と武者震いを感じた。」



「女子の古本屋」 岡崎武志



2008年にこの本の初版が出て、その年に「女子の古本屋」を購入しました。


当時古本屋と言えば、おじさんが店番をしているイメージが強かったし、実際にそんな古本屋さんがたくさんありました。


そんなときにこの「女子の古本屋」を読み、女性店主の古本屋がこんなにたくさんあるんだと驚きました。


それも、みなさん本を愛する人ばかり。


現在はいろんな形態の古本屋があって、それぞれに個性があります。それにいろんな趣向を凝らしてあって、おもしろい。時間ができたら各地の古本屋を巡ってみたいと、この本は感じさせてくれました。


「女子の古本屋」の著者・岡崎武志さんは、各地の「女子の古本屋」に直接赴き、女性店主を取材し、とても詳しく古本屋をはじめるまでのエピソードを書き留めています。


そして


古本屋をやっていて、楽しいことから苦労話まで根掘り葉掘りと掘り下げ、女性店主の「短編古本屋ストーリー」に仕上げています。


なので、読んでいるとそのお店に行きたくなります。


僕はこの本を読んで、兵庫県の神戸トアウエストにあったザックバランな古本屋「トンカ書店」さんによく行きました。(現在は元町の方に移転され「花森書林」さんになっています。)


「トンカ書店」さんは、できるかぎりずっと本を見ていたい本屋さんで、あたたかい雰囲気のお店でした。家族でよく行きました。


当時はまだうちの子どもが小さかったので、店主さんがお声をかけてくれたり、あたたかい眼差しで子どもを見てくれていたのをよく覚えています。


この本を読んで、どうしても行きたかったのが岡山県の倉敷にあります「蟲文庫」さん。


こちらは倉敷に旅行に行ったときに、お店に行くことができました。そのときの模様は「わたしの小さな古本屋」に書かせていただきました。


「蟲文庫」の田中美穂さんは、お店を維持するためにアルバイトまでしていたと書かれていました。本当に和む感じのお店で、田中さんのそのお気持ちが実際に行ってみてよくわかりました。


もう一店舗、行きたかったのが仙台にあるブックカフェ「火星の庭」さん。


仙台に出張で訪れたときに「行こう!」と決めてたのですが、新幹線の時間がギリギリだったので、立ち寄ることができませんでした。


他にも行きたいお店がありました。


とにかく、女性店主のみなさんが「古本屋」を好きで好きでたまらない感覚が伝わってきますので、実際のお店に行きたい気持ちに読者はなるのだと思います。


素敵な女性店主さんばかりですので、岡崎さんは取材をしていて彼女たちに圧倒されます。それが岡崎さんのこの筆致に宿っています。


私は、各店を取材するにあたり、質問事項も方針も下調べもせず、わざと真っ白な状態ででかけていった。

だから読者と同じく、初耳の話ばかり。その驚きを、ライブ感をそのまま言葉にのせるように心がけた。

結果、ときに驚愕の末に絶句し、ときに心底、感動させられた。

誰もが生まれてから思春期を経て成長ののち、古本屋という職業を選ぶまでの道は平坦ではない。生きた年齢分のドラマと哲学があった。

私は毎回、彼女たちの人生にただ圧倒され、締め切り前に原稿を書く段になって、「これはえらいことになった」と武者震いを感じた。

(中略)

とにかくこの十三人は、いずれも人間として素晴らしい人たちで、その思いの深さ、生きる熱さが読者に伝わらなかったら、それはすべて私の責任である。


著者と店主の〝古本屋愛〟が濃密に詰まった「女子の古本屋」。いつかゆっくり落ち着いて、それぞれのお店を訪れ、堪能したい、そんな気持ちにさせてくれます。



【出典】

「女子の古本屋」 岡崎武志  筑摩書房


これはかつて神戸にあった海文堂書店さんで開催された「女子の古本市」に行ったときのチラシです。

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「女子の古本市」はこんなお店があったらいいなぁと思った「本屋」のような古本市でした。ちょっとBARみたいな暗いテイストに照明が施され、素敵な本に囲まれた異空間のようでした。当時の新聞記事です。

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