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意識とは?インド哲学と量子物理学

東洋哲学と量子物理学の関連性は、これまで、興味深く探求されてきた。

以下のような点が比較されてきた。
・不二一元論と相互関連性
・虚無と真空
・意識について
・無情と量子の不確実性

今回は、インド哲学と量子物理学が提供してくれる、意識についての洞察の話。


インドの哲学体系は、唯物論的ではない。物質が全ての存在の基盤ーーこういう世界観ではない。

ヒンドゥー教の2大宗派は、ヴィシュヌ派とシヴァ派。残りが、ヴィシュヌ派から派生したシャクティ派と、スマールタ派。

シャンカラ・アーチャーリヤは、788年に生まれた。スマールタ派(=シャンカラ派)の開祖であり、インド最大の哲学者でもある。不二一元論を唱えた。その教えは、ほとんどのインド 聖者に影響を与えているという。

シャンカラによると

アートマン(我)は、時間や空間や因果関係を超えている。無限のブラフマン(梵)は、アートマンの本質。つまり、絶対的で超越的な自己(意識)は宇宙の基本。生物にも無生物にも存在するが、見ることも触れることもできないものがある。全ては変化するが、永遠でもある。

このようなアイディアだ。

梵我一如

ちなみに、シャンカラ・アーチャーリヤは、初代から継承されていき、今までに何人もいる。現在も、社会的・政治的に影響力をもつ。

ヒンドゥー教の3最高神は、宇宙の創造神ブラフマー・世界秩序の維持神ヴィシュヌ・破壊と混沌の神シヴァ。

ブラフマーの宗派は近代まで残らず。
★ブラフマー派がなぜ残らなかったか。おまけとしてラストに追記しました。

ヴィシュヌ派とシヴァ派が、ヒンドゥー教徒の大半を占める。両派は、互いの神を排除しない。これにおいては、優越をめぐる争いも起きない。


ヴィシュヌとシヴァは、そもそも、パートナー関係にある。ブラフマーにより創造された世界を、ヴィシュヌが保護する。世界の終わりが訪れると、シヴァの出番:亡くなった人々が、別の領域に運ばれるように働く。

中段 左:ブラフマー 中央:ヴィシュヌ 右:シヴァ

シヴァの最初の妻は、焼身自殺をした。シヴァは、悲しみで発狂してしまった。妻の遺体を抱いて、破壊の舞いを踊り続けた。遺体と離れることができないと、シヴァの悲しみは終わらないと思ったヴィシュヌが、妻の体をパーツに分けた。※暴力的な意味あいではない。それらはシャクティのピースとなった。各地に散って聖地的に。(シャクティについては後ほど解説)シヴァは、ある程度の平静をとり戻した。

印象に残るストーリーがいろいろとあり、シヴァに “フォロワー” が多いのがわかる気がする。


多くの科学者たちが、意識の性質について、言葉を残してきた。

マックス・プランク(量子論の創始者の一人)
〜物質は意識から派生したもの。私たちが話す全てのもの、私たちが既存とみなす全てのものが、意識を前提としている。〜

ユージン・ウィグナー(ノーベル物理学賞受賞)
〜存在や現実には2種類ある。私の意識の存在と、その他全ての存在や現実だ。観察している科学者の意識も、隠れた変数だ。意識への言及なしに、量子過程を正確に説明することは不可能。〜

ヴェルナー・ハイゼンベルク(量子力学に絶大な貢献)
〜量子粒子を観察している間、常に、不確実性や不確定性が残る。これを取り除くことはできない。〜

アインシュタイン
〜不確実性原理を信じていないが、不確実性の原因となる「隠れた変数」は、あるに違いない。〜

フリチョフ・キャプラ(物理学と東洋思想の類似を扱った著書が世界的ベストセラー)
〜単一粒子の動きは、宇宙全体の動きと関係している。〜

デヴィッド・ボーム(マンハッタン計画に大きく関係)
〜外部の現実を決定する要素として、意識を含めることが不可欠である。〜

マンハッタン計画:WWⅡ中に米英カナダが、原子爆弾の開発と製造のため、科学者や技術者を総動員した計画

アーサー・エディントン(天体物理学者)
〜意識は、経験の中で最も直接的なものである。それ以外は全て、リモート・センシングだ。〜

1930年、インドからの留学生が、ブラック・ホールの存在をはじめて指摘。それを頭ごなしに否定したのが、学会の重鎮エディントンだった。ブラック・ホールの研究は、30年以上遅れた。動画は、NASAがビジュアル化したブラック・ホール↓↓

エルヴィン・シュレーディンガー
〜意識は、決して複数形では経験されず、単数形でのみ経験される。〜


これらの何千年も前。不二一元論は、シヴァとシャクティを用いて、こう解いていた。

シヴァは物理や意識。シャクティは自然やエネルギー。シヴァとシャクティが陰陽和合し、はじめてチャクラが開く。

大昔から、ヒンドゥー教の文書には、「文房具のように見えるものは全て一時的である」と書いてある。 

 「私はシヴァでありシャクティでもある。私は男性であり女性であり、光と闇、肉体と精神の全てを持っている。一瞬のうちに完全にバランスが取れており、
永遠に続く」

人間は、異なる2つの道から、1つの答えに到達しようとしているのだろうか……。

ヒンドゥー教では、行為そのものだけでなく、行為の背後にある意図も大切とされる。行為は、行為を行う人の意図に影響されるからだ。

前段で書いた、ユージン・ウィグナーの主張が、これなのだが。観察という行為は、実験結果に影響を与える。観察しているシステムに干渉しないよう、注意を払うべき。そうでないと、結果が正確なものにならないからだ。

ここでもまた、似たような話になっている。


ガリレオは、「色は心の中で生じるもの」と言っていた。

私たちの行動は、周囲に…時には広範囲の周囲に…影響を及ぼす可能性がある。私たちは、たとえば、偏見や思いこみに気をつけねばならない。自らの信念を疑わねばならない日も、やってくるかもしれない。

自分を取りまく世界と、その中での自分の立場を理解すること。自分自身と他者のために、より良い未来を創造すること。

自分の外側にあると思っていた意識の海が、実際には、内側にあることを発見するかもしれない。精神のかたちをしているが、それは、非常に微細なエネルギーなのかもしれない。

ブラフマン (宇宙) と アートマン (私) の接触。
火花が散る。


★おまけ★ 追記しました。

なぜ、3最高神でブラフマーだけ宗派を存続させられなかったか。誤解を恐れずに言うと、人気が低いのはなぜか。勝手に憶測してみた。

・ブラフマンは宇宙の原理を表す概念。ブラフマーはブラフマン由来の神。本文で解説したように、ブラフマーは=自分という感覚だからだろうか。 推すには他の神のがいい?

・ブラフマー、ルッキズムと女好きがすぎる説。ブラフマーは、自分の娘として女神サラスヴァティを創造したが、「娘でなく妻にしたい」(ヒィッ) と言い出した。美人に造りすぎたからと。サラスヴァティは嫌がって何度も断ったが、妻になった。ブラフマーの際どい部分が見えてきた。さらに、美しすぎてずっと見ていたいからと、自分の顔を4つに増やした。

妻が亡くなってから、別の姿で復活するまで、禁欲を通したというシヴァ。シャクティとなってからは、愛する人と2人で1つという感じで、一体的になったシヴァ。

ブラフマーかヴィシュヌかシヴァかと問われ、ブラフマーを推しに選ぶ女性がいるだろうか?