模倣犯

『模倣犯』宮部みゆき(9)~雑感・気になる点~

小説の感想です。

2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバック の持ち主・鞠子の祖父、義男。事件のルポを書くライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察、武上・秋津・篠崎……そして犯人たち。
 マスコミにかかってきたキイキイ声の電話による犯行声明から、事件は動きだす。


→前(結末)へ

※ネタバレあり


~雑感~

 女性キャラだと水野久美が一番共感できます。
 ワクワクしない? と言ったときには、真一くんと同じで、嫌な印象を抱いたのに。
 第一印象最悪から好意につながっていくのは常道ですな←

 主人公の前畑滋子さんはいろいろなことを失敗したけど、そこから得たものも大きかったように思います。失敗してもやり直せるんだと、前向きにしてくれるキャラクターでした。

 映画版とはだいぶ展開(心情の進み方)が違うんだなと思いました。映画から入ったから、映画版の人物像も嫌いじゃないです。ラストがぶっ飛んでいることは承知の上ですが(笑)。ピースとかヒロミくん、あとカズも、多分、監督さんが気に入って描いていたんじゃないかなと思いました。
 由美子を死なせなかったことを含めて、映画製作者のキャラクターへの愛を感じました。

 好感が持てるキャラは篠崎さん・水野久美、好感が持てるわけではないが放っておけないのはヒロミくんです。
 ただしヒロミくんみたいな人間にはカズくらいの覚悟で関わりなさい。というのが宮部みゆきさんの示す教訓なのかもしれません(笑)。

 篠崎さんは優しくて素敵です。
 ルールや筋を通すことよりも「思いやりに欠ける」という柔らかい感情で由美子を見放せないところがいいなと思います。

 また、お見合い写真を見たとき、由美子は篠崎を「ネズミみたいな情けない印象の男の人」と思います。
 一方、篠崎は由美子を「大人しそう」と表現します。おそらくあまり美人ではなかったのだと思いますが……こんなところにも篠崎の優しさが感じられます。
 由美子視点の由美子は快活な女の子の印象なので、由美子の思う由美子自身と、人から見た由美子は違うのだなーと思いました。
 前半と後半の由美子が別人のように見えるのはそのせいかもしれません。

~気になる点~

 坂木刑事が途中からフェイドアウトしていったのが残念でした。
 優しくて素敵な人柄で、主要人物になるかと思っていたので。

 樋口めぐみは最後まで理解しがたいキャラクターでした。
 理不尽すぎて、こんな人間いないだろと。問題提起のために極端なキャラクターにしているのはわかりますが、リアリティを感じることができませんでした。

 ヒロミが電話していたのを目撃されたのってテレビ局の時だと、一番最初は書かれていた気がします。
 しかし、それ以後のシーンでは義男に電話してた時となっています。
 結局どちらだったのか? ただのミスなのか? 私が読み間違っているのか? 気になります。

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