しばらく投稿できておらずすみません！今回はリハビリかねてごく短い記事です。

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中公新書公式アカウントさんが、ちょっと前にこんなことをツイッターで発信されていました。

いまだに陰謀論などに惑わされて「バイデンは選挙で不正をした！」と宣う方々はアメリカにも日本にもいっぱいいますが、それはさておき。

首長制の一つでもある「大統領制」、私は大学でアメリカ史専攻だった割によく知らなかったので、今回は大統領制について調べ、考えてみました。
大統領制はアメリカ、ヴァイマール共和国時代のドイツ、インドネシア、韓国など、広く採用されていますが、いったいどのような制度で、どのようにしてできあがったのでしょうか。

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大統領制は、広義には「大統領を元首とする統治形態」のことで、狭義には、「厳格な三権分立制をとるアメリカの統治形態」のことを言います（１）。

アメリカにおいては立法部・行政部・司法部の権力分立がきわめて厳格ですが、このような政治制度を採用したのは、独立戦争時にイギリスの本国議会が政府や植民地に圧迫を加えたという歴史があったからでした。
イギリスでは、議会が絶対君主を打倒したというストーリーがあるため、立法部・行政部が一体になっている議院内閣制が現在も続いています。しかし、アメリカではいかなる政治機関も専制化（強権的に統治をおこなうこと）するという不信感が強く、立法部と行政部の権限を明確に分離したようです。

また、アメリカをはじめとする大統領制では違憲立法審査権を司法部に与え、「司法部優越」の制度が採用されています。こうした考えはハリントンやロックの権力分立論、モンテスキューの三権分立論に由来するものだそう。
ただ、韓国などでは20世紀後半でも独裁的な指導者がイニシアチブを発揮してきたことなどもあり、司法部より大統領府のほうがはるかに権限が強く、忖度しなければならないということもあるそうです（韓国の大法院（＝日本でいう最高裁）で、徴用工問題で日本企業に資産差し押さえが出たのは、文在寅政権に大法院が忖度したからであると言われています（２））。

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議院内閣制と大統領制のメリット・デメリットについては様々な議論があります。
議院内閣制においては解散制度があるので、柔軟な政治が可能であるのに対し、大統領制では、もし硬直した考えの持ち主や国際情勢に疎い人物が選出されると、4年ないし8年の間変更できないので、それに注意すべきであるとする考え方が主流の政治学にはあります。
他方、大統領制においては、4年ないし8年、大統領は政党の派閥に煩わされずに思い切った強力な政策を実行できる長所がある、という説もあります。

ただし、そのような大統領制のメリットは、アメリカ合衆国に特異の文脈の上に成り立っていることを忘れてはいけません。

アメリカ型の大統領制は、後にラテンアメリカやアジア、アフリカの多くの国によって、統治形態のモデルとされ、採用されていきました。ですが、アメリカの大統領制は18世紀の政治理念の忠実な制度化であり、その根底には、ブルジョワジー（貴族階級）ですら「専制的な政治をもたらす制度は危うい」という認識を持っていたからこそ、ある程度健全な制度として運用することができたのでした（３）。

このようなブルジョワ的同質性（リベラル志向性）が存在したアメリカならともかく、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国で大統領制が採用されたらどうなるでしょうか。異質な勢力間での対立抗争が激しい国家では、大統領が権力の統合を求め、独裁者になってしまったケースも少なくありません。

三権分立が明確になっているということは、大統領や長官をはじめとする行政府のメンバーと、国会議員をはじめとする立法部のメンバーの選出の過程も分かれているということです。そのため、議会と司法部は大統領を弾劾することはできても、大統領府を解散することはできません。
権力の分立が明確になされているゆえ、逆に三権はお互いに干渉することが難しいともいえます。そのような制度下で、大統領が強権的なイニシアチブを発揮しようとすれば、どうなるでしょうか。

その歴史上の最たる例が、後にナチス政権をもたらす原因にもなった、ドイツのヴァイマール共和国でした。どのような政治の制度であっても、一長一短があることを踏まえて考察するのが肝要であるということでしょう。

ーリリー　2021年1月30日

註
（１）"大統領制", 日本大百科全書（ニッポニカ）, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-01-30)
（２）池畑修平『韓国内なる分断——葛藤する政治、疲弊する国民』平凡社新書，2019年．
（３）"大統領制", 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-01-30)