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#99 2024年3月に読んだ本【読書日記】

こんにちは🙂

当記事は、僕が2024年の3月に読んだ本の中から10冊をまとめたものです。
それぞれの本で、感想と印象的なフレーズを書きました。
読む本を迷っている方にとって、参考になっていただけたら幸いです。


1.『パンとスープとネコ日和』(著:群ようこ)

📖感想
このやり方でいいのだろうか。自分がやりたいことをやるのは傲慢ではないのか。今はいいけどこれからどうなるのか不安だ……。
人生、生きている中では色んな悩みが出てきます。特に今の世の中では何か周囲から急かされているような感じがします。そんな中でも、ブレずに自分のペースで歩んでいこう。アキコがお店を経営する姿を見て思いました。
アキコとしまちゃんの2人の関係性が素敵。自分の立場を見極めていて、淡々とこなしていく。決して目立つわけではないけど、大事なことだなと2人から学びました。ネコのたろの息遣いが聞こえてくるような感じも良いですね。
落ち着きがあって優しい味がする料理を食べたような、心地よい気持ちになりました。

📖印象的なフレーズ

「料理はね、何時間、何分っていう時間では測れないの。大さじ・小さじというのもただの目安。自分の目で見て、耳で音を聞いて、鼻をきかせて、語感で作るものなのよ。食材を前にして、自分はいったいどうしたいのか、どういう方向に持っていきたいのかをいつも考えていなくちゃね。あれもこれもじゃだめよ」

『パンとスープとネコ日和』


2.『52ヘルツのクジラたち』(著:町田そのこ)

📖感想
映画を観た後に3年ぶりに再読しました。
展開は知っているのに、ひたすら感情が揺れ動きました。
自分の声が届かないことの孤独は辛いけど、相手の声を聴き逃すことも同じように辛い。無力さに胸が締めつけられますが、温かな光が差し込んでくる終盤に救われた思いになりました。
「家庭内DV」「ヤングケアラー」「LGBTQ」など…。現代社会で問題になっていることが詰まっている本作。その中でも、貴瑚の心理が繊細に描かれていることもあり、「名前の付けられない関係性」について考えさせられました。また、地方社会の閉塞性が色濃く出ている印象があります。
程度の大小はあれど、誰しもが52ヘルツの声を出しているかもしれない。誰かの声を聴くこと、抱え込まずに頼ること、どちらも大事にしようと思いました。
確かに重いテーマではありますが、その重さも含めて大切にしたい物語です。

📖印象的なフレーズ

52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿はいまも確認されていないという。
(中略)
本当はたくさんの仲間がいるのに、何も届かない。何も届けられない。それはどれだけ、孤独だろう。

『52ヘルツのクジラたち』

「声をあげて泣いていいんだよ。大丈夫、ここにはわたししかいない」
「あたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ。いつだって聴こうとするから、だからあんたの、あんたなりの言葉で話しな。全部、受け止めるよ」

『52ヘルツのクジラたち』

「ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ」

『52ヘルツのクジラたち』


3.『フーガはユーガ』(著:伊坂幸太郎)

📖感想
年に一度互いが入れ替わる不思議な能力を持つ双子の優我と風我。過酷な家庭環境で生きてきた深い絆で結ばれている二人の姿に、読み進めるにつれて愛おしさのようなものが増しました。
伊坂さんの作品は、前を向いて生きる活力を間接的に与えてくれます。また、独特な比喩表現や、登場人物のユニークなやり取りも印象的ですが、本作では特に比喩表現が色濃く出ていた印象です。
終盤では、優我がついていた嘘が明らかになり、何気ない出来事や仕草が伏線になっていて、絶妙に回収されていきます。その結末に切なさがありましたが、同時に温かみのある読了感がありました。
優我と風我のように、嘘であって欲しいような、思うようにいかない現実もあります。そんな中でも、日常の何気ないことで感じる幸せを大切にしようと思いました。

📖印象的なフレーズ

「優我の人生は、俺のものでもある」
「二人で二つの人生だ。どっちも俺たちのものだ」

『フーガはユーガ』

僕と風我も生まれたとたんに、「外れ」と捨てられたかのような日々を送ってきた。それでも放り投げずに、しがみつくように生きてきた。もしかすると、いずれ、「一等賞」とまではいかないまでも、「入賞」もしくは「敢闘賞」あたりの出来事が待っているのではないか、それくらいはあってもいいだろうに、とは思っていた。

『フーガはユーガ』


4.『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』(著:町田そのこ)

📖感想
個性的な兄弟(+その周りの方々)と心温まるお話のギャップが良いなと思いました。
何気なく利用するコンビニは、性別や年代によって色んな見え方があると気付かされます。店員やお客様の心が温まる様子に、僕の心の絡まった糸をほどいてくれるようでした。その中でも、継続すること自体がすごいとの言葉に励まされました。
テンダネスに来る人は、自分の一日を一所懸命生きてる。誰かの人生の欠片でも手助けできたらという志波店長の心構えは素敵だと思います。だからこそみんなが虜になる理由がわかり、僕も行きたい気持ちがわいていました。
町田そのこさんの短編小説は初めて読みましたが、設定や展開が面白かったです。
続きが気になりすぎるので続編も読みます。

📖印象的なフレーズ

「この店に来るひとはみんな、自分の一日を一所懸命生きてる。レスリングのなくなったオレなんてどうでもいい存在だと思っていたけど、みんなの一日の手助けすることで、いてもいいのかなって思えていたって」
(中略)
「あの子の言葉を聞いて、ぼくはこの仕事を精一杯頑張ろうって思ったんだ。誰かの人生の欠片でも、手助けできたら、いいよね」

『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』

「好きなものを続けるってのは、案外難しいんだぞ」

『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』

「コンビニ店員だって個性があっていいんだよ。そしてぼくはね、ふらっと立ち寄るだけの場所だからこそ、最高に居心地のいい空間にしたいんだ」

『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』


5.『汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集』(著:中原中也)

📖感想
「生きる」「恋する」「悲しむ」の3つのテーマに沿って精選された詩集。
感嘆符や疑問符が多く使われている印象で、それが魂の叫びを表しているように思いました。
全体的に切なさがありながら美しさも感じる表現、短文でありながらドラマチックにガラッと変わる展開。心が揺さぶられたり、考えさせられたりします。
印象的な詩は、「汚れつちまつた悲しみに……」「生ひ立ちの歌」「夏の夜」「或る女の子」「サーカス」「詩人は辛い」「酒場にて(定稿)」です。

📖印象的なフレーズ

みんな歌なぞ聴いてはゐない
聴いてるやうなふりだけはする

『汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集』
「詩人は辛い」

諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。
しかし、そんな定規みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。

『汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集』
「酒場にて(定稿)」


6.『物語のおわり』(著:湊かなえ)

📖感想
湊さんの作品によくある「イヤミス」要素はほとんどなかったです。
どちらかというと、自分の心を前へ動かしてくれる感じでした。
本作では、各章ごとに登場する今の自分の状況に悩んでいる人たちが、最後にある物語を読む構成になっています。同じ物語なのにそれぞれの解釈の仕方は違っているのが面白いです。
そして、生き方においても人の数だけの考え方がある。もし自分が彼らと同じように行き詰まった時でも、それを打破するための方法はたくさんあるのだと気付かされました。その中で、今の自分ができる最善を尽くそうと思いました。
北海道の広大な情景が浮かび上がってくる表現も印象的です。

📖印象的なフレーズ

湖面に映る花火はなんだかドラマのようだ。生身の人間の人生を映し出したもの。それを美しいと感じ、大半の人は両方を楽しむのだろうし、湖面に見入る人もいるかもしれない。そして、私のように空ばかりを見上げて、下が水面だろうが地面だろうが関係ないという人も当然いるのだろう。

『物語のおわり』

「昔はここに立つと、今はただの学生だが必ず光を操れる人間になってみせる、なんてギラギラした思いが湧き上がっていたが、今見ると、キラキラしてるものは、これくらい離れて見るのがちょうどいいんだと思えてくるよ。あんまり近すぎると吞み込まれちまうからな」

『物語のおわり』


7.『ここはすべての夜明けまえ』(著:間宮改衣)

📖感想
2022年12月25日に融合手術によって老化しない身体を手に入れた「わたし」。家族みんながいなくなった101年後の2123年に、これまでの人生と家族について振り返るため、家族史を書き始める物語。
『アルジャーノンに花束を』を思わせるような平仮名の多い文体と「わたし」の話に、胸が締めつけられ、ハッとさせられました。また、人とは、生死とは、愛とは、幸せとはについて考えさせられます。
そして読了後は、一人ひとりが持っている自らの生を、これからも自分自身で愛でることができるように願っていました。
本作の中でも、ラスト10ページに書いてあることには特にハッとさせられました。今もそこに書いてあることについて考えています。
SFでありながら、純文学の要素もある。AIなど様々な技術が発達していく現実社会でどう生きるのかを問われているような感じもしました。
これまでにない読書体験ができると思います。

📖印象的なフレーズ

得体のしれないものに対峙した時にどれ位まで積み重ねられるか……が個人的にはポイントかなと思っております。やっぱり人間ですのでやれる事はひとつしかなく、一パーセント一パーセント……一パーセントじゃなくても後退せずに一歩一歩確実に前に進んで行き……その方向性が合っているかどうかが重要だと思うんですけど、ただその方向性を決めるのは自分なので、一生懸命前に進んで行きたいというのがありますね。

『ここはすべての夜明けまえ』

ええっと、むきあうとみつめるは、わたしのなかでじゃっかん、ちがうんです。

『ここはすべての夜明けまえ』


8.『適切な世界の適切ならざる私』(著:文月悠光)

📖感想
文月さんが中高生時代に紡いだ第一詩集。本詩は中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を受賞した詩集でもあります。
青春時代の閉鎖的な空間を思い起こさせるような気がしました。しかし、その一方で開放的な印象もありました。
また、一つ一つの表現は、繊細でありながら力強さを感じます。さらに、短文でありながらドラマティックな展開があり、気づいたら読む手が止まらなかったです。長編作品を読んだかような余韻があります。
言葉の新たな世界が見えた感じもしました。
印象的な詩は、「横断歩道」「産声を生む」「黄身を抱く」「骨の雪」「ロンド」「渇き」「朗読少女」です。

📖印象的なフレーズ

渡りきるまで、
たくさん轢かれてみよう。
ランドセルも道連れだ。
さぁ、この喉は声を発す。
だが、血も吹く!
保険おりるな。
だから
おりてこいよ、ことば。

『適切な世界の適切ならざる私』
落下水「横断歩道」


9.『小説 天気の子』(著:新海誠)

📖感想
以前はAudibleで聴きましたが、今回は紙の本で再読しました。
小説版の見どころは、映画にはあまりなかった陽菜、夏美、須賀の視点からの描写があること。これにより本作をより深く見れます。特に陽菜が夢を見るシーンは個人的にはかなり好きです。登場人物のセリフも、書き言葉だとより響くものがありますね。
晴れと雨、陽菜と帆高のコントラストは、これ以上なく美しくて愛しくて尊い。映画と同じくまっすぐで晴れやかな気持ちになれました。晴れだけでなく、雨も愛おしくなります。
あらすじにある通り、本作は「選択」の物語だなと思います。自分の目で見たものを何よりも信じたいですね。
物語だけでなく、解説もジーンときます。RADWIMPSさんの『大丈夫』がさらに好きになりました。

📖印象的なフレーズ

お願いです。
もう十分です。
もう大丈夫です。
僕たちは、なんとかやっていけます。
だから、これ以上僕たちになにも足さず、僕たちからなにも引かないでください。

『小説 天気の子』

「人間歳取るとさあ、大事なものの順番を、入れ替えられなくなるんだよな」

『小説 天気の子』


10.『教養としての「会計」入門』(著:金子智朗)

📖感想
決算書の構造、経営分析のための指標、税務と会計の違い、管理会計など会計に関して網羅的に書かれている1冊。
例えがわかりやすく、コラムもためになる内容です。復習になりますし、あいまいになっていた部分もハッキリしました。僕は会計に携わる業務を行っていますが、数ある会計の関する本の中で本書は手元に置いておきたいと思いました。
また、会計上の意味と日常用語としての意味が違う言葉は多いなと本作を読むと感じます。たとえば、収益と利益は同じような意味に見えて実は異なるものなのです。
簿記の資格取得に向けて勉強している方は、本書で会計の本質をつかむことで理解度が深まるでしょう。ただ、ある程度会計に触れている方でないと理解できない部分もあるように思いました。

📖印象的なフレーズ

一般のビジネスパーソンにとって重要なことは、こういう制度をいちいち覚えることではありません。少ない原理原則を理解し、その理解に基づいて「おそらく、こうだろう」と当たりをつけられることが、一般のビジネスパーソンにとっては重要なことです。

『教養としての「会計」入門』
第4章 財務会計の個別論点 


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