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20231129「一滴の涙」

抱えきれないそれを
大事に持って
大きくなればなるほど
身動きできなくなって
さてはてどうしようかと
思案に暮れる
十分に要らないのならいいけれど
手にしたものが
わたしなのだと思いたいから
わたしを放つことが難しい
ぽいっと投げてみたらいいのに
って言葉ではそうだけれど
なかなかそうもできない
けれどももう一杯になったから
涙でも零して
数mlを軽くすれば
身体も動くかもしれない
雨にまみれて進むのもいい

両手一杯くらいの器に移して
それがわたしだったとするなら
どれほどのこだわりが
大層なものだったのか
写してみたら
それがなくてもいいかもと
そう思えるかもしれない
溜め込んだそれぞれに
思い出もあるようだけれども
これからのことがよりよくなるのなら
どんどんと注ぎ
溢れるくらいになれば
足りなくなったわたしにも
何かが降り注ぐかもしれない
手渡したそれを誰かが受け取り
役に立つこともあるだろう
わたしもまた受け取って
身体を巡って
それぞれを流す

今日も雨
冷たい雨で
凍える奥底に火を焚いて
弾ける火花を内部に灯す
乾いた木々を焼べ
一滴の涙はもうすぐ乾く
流れたものと
流されたもの
蒸発して見えなくなっても
まだその思い出は確かにあって
燃焼するその時間を
そのままに受け取っている
塊が部分となって
灰になり
どこかへと捨てられる
元に戻ったとするなら
それもいい
鎮火の一滴を集め
明日には乾いた喉を潤すかもしれない

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