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「プライドと偏見」の散歩道。

ただ歩く動作って、まだまだ最高気温が37度に届くこの残暑では結構厳しいデイリーですよね。でも冷房が効くオフィスや自室で何時間も座ったままだと、足腰が弱ってどんどん筋力が落ちてしまう。加齢と共に膝も腰も否応なしに老化していくので、なるべく夕暮れから夜に数分、ウォーキングするようにしています。

バスに乗らず隣町までただひたすら、滝の汗を流しつつ歩いてお店に入り、晩御飯を食べて、またのんびりと色々な想像をしつつ流れる風景に癒されていく。

私は、周囲の光景を見ながら何か発想したり考えるのが好きです。例えば、全く知らないお家の庭木を見て。

「ああ、薔薇の世話が上手い人がいるんだなあ。裕福なんだなあ」とか、「一軒家ならこんな平家でも充分だよな。一人暮らしは掃除大変だし」「ここの構造、どうなってるんだ? ドアが二つだけど凄い接近している。もしかして一つの家はずっと奥に住居スペースがあるのか?」

車窓からの眺望も、「あのアパートの部屋からこちら側の眺めは、こういうビジョンになっているはず」と思考してみるのが楽しい。特に丸の内線の、一瞬だけ外に出る後楽園駅付近とか。車は速すぎて映像を心に留められないけど、電車のあのゆっくりさが良い。

もちろん、漫画や小説の溢れてくるネタもここで脳内に蓄積します。旅行と半身浴の一時間半と歩いてる時が、一番アイデアやシチュエーションが浮かびますね。



「プライドと偏見」、英国地方の散歩道。


英国女流文学の筆頭とも言える、ジェーン・オースティン原作「プライドと偏見」。そのヒロイン、エリザベス・ベネットは最下級貴族の娘で、なんと六姉妹の次女。18世紀末当時には貴族女性の働ける場所などないし、親の土地や財産がなければまず、生きていくことはできません。

女子が家の継承権を持てないので、実家は火の車状態。ヒステリックで自己顕示欲の塊のような母親は、日々どうやったら高級貴族や軍人に娘を高値で売りつけられるか、そればかり考えています。

無学で下品な母親に似て噂話ばかり好きな妹達と、唯一、心を許す物静かで内気で聡明な姉と。詰め込まれている一つ屋根の下で彼女は全く結婚意欲はなく、また妻の尻に敷かれているかのように見える父親も、一番賢く思慮深く情熱溢れるエリザベスを手放す気がない。

そんなエリザベスは散歩と読書が大好きで、どんな遠距離でも家の馬車や馬を使わず、ブーツやドレスの裾を泥まみれにしながら、イングランドの美しい渓谷や川縁りを、様々な文学や詩、音楽を想いつつ歩いていくんですね。

そんなベネット一家の住む田舎町に、大富豪であるビングリー兄妹が別邸へ引っ越してきて、姉妹は舞い上がります。温厚で世間知らずなビングリー卿は、エリザベスの姉であるジェーンに一目惚れ。

ところが、ビングリーの親友でありその友人より十倍以上の広大な領地と居城、湖と山を所有するダーシー卿は無学無教養な娘たちを見下し、ツンデレ故にエリザベスの陰口を溢す。

最悪な出会いをした二人だけど、エリザベスとダーシー卿を結びつけていくのが、別邸への道だったり雨に濡れる寺院への道程だったり。既に「王の城」と例えるしかないダーシー卿の持ち家への小旅行だったりします。

愛を信じられない、でも妹想いの厳格な上級貴族であるダーシー卿は、自分に媚びずに鋭角的な視覚とウイットに富む言語力に秀でたエリザベスにどんどん惹かれていく。でも不器用故に彼女を逆に怒らせて、全霊を込めたプロポーズを拒絶されてしまいます。

お互いが好感度を上げていた矢先に、そのハプニングで気まずくなってしまうけど、エリザベスは叔父さん夫婦との旅行で偶然、ダーシー城に辿り着くんですね。

私はキーラ・ナイトレイ主演の映画を最初に視聴し、それからコリン・ファースのダーシー様が出るBBCテレビ版を観たんですが、馬車を引く下男を一人しか連れずに深い森の中を貴族が通過するって危ないよな〜と思いつつ。あの頃って貧しい盗賊とか、田舎にはいなかったんだろうか。どうしても「ロビン・フッド」の印象が強いから。

そのダーシー卿の東京ドーム五つ分くらいの敷地で、喧嘩別れしちゃったままの二人はバッタリ再会。

「ロ、ロンドンでお仕事だったのでは?」
「いいえ、それは終わって……帰ってきていました」

ここで、慌てるあまりに台詞を被せて同時に話してる二人がめちゃくちゃ面白い。

「ごめんなさい、私ここに来るって知らなくて」
「いや、いいんです。良ければ、立ち寄って行かれませんか」
「明日、次の街へ行く予定なんです……」
「明日……」
「………」
「………、では、宿までお送りしましょう」
「いいえ、大丈夫です。私は歩くのが好きなので」
「ええ、ええ! よく知っています……!」


映画版では、キーラの相手役が大抜擢された舞台俳優のマシュー・マグファディンだったんですね。ほぼ無名の彼は、BBCテレビ版の体格のいいコリン・ファースとは色々な面で真逆なので、原作ファンの間では賛否両論だったらしいんです。

だけど私は何より、昔からずっと大好きな東地宏樹さんの吹替が、この不器用で真面目過ぎて上手く人間関係を構築できず、苦悩するダーシー卿に会っていて本当に堪らなく愛しくて。すぐBlu-rayを購入。

メインテーマのピアノも本当に素晴らしい楽曲なんですよ。アカデミー賞の常連で90歳を迎えるドナルド・サザーランドの、娘へのお父さん愛溢れる演技も泣けてきちゃう。(「24」のジャック・バウアー役のキーファーのお父さん)

古代からの地表が何万年もかけて積み上げられた英国渓谷の風景も、木々の間からの木漏れ日が反射する川面も、そして何より、ダーシー城の計算し尽くされた英国建築美には見惚れるしかない!

そしてね、ラスト近くの……。ダーシー卿の大叔母である侯爵夫人とエリザベスの舌戦が!! 壮絶なんですよ!! 

英国演劇界の女王、ジュディ・デンチ演じるキャサリン夫人が、もう出た瞬間から嫌なババア、ゲホゴホ。高慢高飛車な貴族なんだけど、病弱で気弱な娘を、ダーシー様と結婚させたかったのに、「何処の馬の骨とも分からない田舎娘」が登場した事で、もう……、これぞ天の怒りヴァルハラの門扉を突き破るが如しになってしまって。

あの怒涛の台詞の激しいやり取り、キーラとジュディは打ち合わせしたのかな。観ているこっちが「頼む……、もうやめてくれ……。イングランドに平和と愛を……」って、怖くて漏れそうになった!!!(笑)



ジュディ、マイケルとディヴィッドのトーク番組に出てたああああ!!


私は六歳の頃からのシャーロキアンだけど、まだ海外に一度も行ったことがないんですね。やっぱりパニック症候群持ちなので飛行機に13時間乗る自信が無くて。でも、必ずロンドンには生きているうちに行く決意をしているので。ロンドンをまず克服できたら、あの壮大な風景を眺めに行きたいな……。


さてさて、今夜も相変わらずの熱帯夜です。今日はこれから久しぶりに自炊で鮎を焼くので、食べ終わったらちょっと中央公園にでも散歩に行こうかな。


おおっと、久しぶりに観たくなったぞおお!!


「プライドと偏見」、BBC版がアマプラで無料配信されております。これも、ブルーレイ持ってるんですけどね。一時期、「ラブ・アクチュアリー」の作家役でコリン・ファースにどハマりしたので。映画はレンタル¥400かな? その価値は余裕であります!!



稀に見る、良い映画です。私は落ち着きたい時に見返します。是非、この週末にでも美しい英国の田舎風景を堪能してみて下さい。




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