Nanashi_Dr

どこかの国立大学の准教授です。

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マガジン

記事一覧

奨学金の返済免除申請書に見るJASSO(日本学生支援機構)の底意地の悪さ

珍しく大学公募関係ではない投稿ですが,余りの酷さに辟易としたので書き殴ってみます。 とある大学院生(Aさん)は事故によって障害を負ってしまいました。 Aさんは学部…

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1か月前
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公募戦線:業績が高ければいいわけではない

そろそろ来年度の公募が見え始めましたね。 多くの若い方にも,是非将来を切り開いて頂きたいところです。 とある若い方に,「業績は同世代と比べて十分過ぎるほどあるの…

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3か月前
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査読システムは生き残るか?

https://www.mext.go.jp/content/20231114-mxt_kibanken01-000004257_01.pdf 上記リンクのような通達が文部科学省から出て,早速各大学で通知されています。要約すると「査…

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5か月前
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大学教員のお財布事情:ホテル代で家計が死ぬ

大学教員が研究をするに際しては,学会などの用事であちこちに出張(業界用語では旅行)する必要があります。最近はオンライン学会も見られるようになりましたが,ぶっちゃ…

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7か月前
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公募戦士に捧げる給与+収入の実態と注意点

ずいぶんと間が空いてしまいました。 最近,研究者界隈の給与の話が話題になっています。 本noteでも次のような記事を書きました。 夢をぶち壊すようで申し訳ありません…

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7か月前
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公募戦士への海外就職のススメ(給与編)

本noteは特にテーマが決まっているわけではないのですが,若い研究者を目指す人に向けて書くように努めております。「公募」と言った場合,ほとんどの場合日本の大学を指す…

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1年前
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「東京科学大学」の名に見る日本の科学研究は当面二流のままである理由

東京工業大学と東京医科歯科大学が合併する、という話が昨今の国立大学界隈ではホットトピックスです。どちらも、我が国を代表する大学の一つですから、「あのクラスの大学…

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1年前
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公募戦士たちに捧ぐ記録:その6 面接次第でコネさえも覆せる

コネを覆す唯一の可能性,それが面接 みんなが気になっている「コネ採用はあるのか?」問題。結論から言えば ありまぁす() ・・・これだけではあまりにも味気ないです…

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その5 模擬授業は自己アピールの場

いよいよ当日実施する模擬授業の準備をする段階に至ったあなた,ぜひ頑張ってください。模擬授業には各大学の指定,領域ごとの違い,等々の各種固有性も関係しますので,そ…

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1年前
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公募戦士たちに捧ぐ閑話:なぜ,A氏は採用されたか?

閑話として,ある公募の話をしましょう,今から数年前の出来事です。 その公募で面接に呼ばれたA氏は,業績的にはその業界の並程度の方でした。人格的な問題はありません…

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1年前
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公募戦士たちに捧ぐ記録:その4 模擬授業の案内は熟読せよ

この記事に興味があるあなたは,無事に書類審査を突破した(しそうな)人でしょう。おめでとうございます。ほとんどのケースで,面接+模擬授業に呼ばれたあなたは「採用し…

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1年前
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公募戦士たちに捧ぐ記録:その3 本当のことは書かなくてもよい

前回の続きで,書類の書き方のポイントです。 繰り返していることにつながりますが,概ね「嘘をつくのはアウトだが,本当のことは書かなくてもよい」ということと,「門外…

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その2 書類書きは「意中の人をデートに誘う」つもりで

書類の「書き方」は意外と大切 大学教員公募への応募に際して,様々な書類を提出する必要があります。 書類の「中身」,より具体的に言えば研究業績,教育歴,etcが大切だ…

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1年前
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公募戦士たちに捧ぐ記録:その1 優秀な人が面接に呼ばれるとは限らない

はじめに博士をとった人間にとって,大学教員のポストをゲットするためのプロセス・・・いわゆる「公募」と言うのは,非常に重みのある重要な問題でしょう。私自身,某国立…

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奨学金の返済免除申請書に見るJASSO(日本学生支援機構)の底意地の悪さ

珍しく大学公募関係ではない投稿ですが,余りの酷さに辟易としたので書き殴ってみます。

とある大学院生(Aさん)は事故によって障害を負ってしまいました。
Aさんは学部自体から奨学金を借りていたので,障害による返済免除の申請を行うことにしました。しかし,身動きが自由ではない上に本人の身寄りがないことから,(遠慮がちに)私にいくつかの申請の補助を頼んで来ました。

JASSOによる奨学金といえば実質の学

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公募戦線:業績が高ければいいわけではない

そろそろ来年度の公募が見え始めましたね。
多くの若い方にも,是非将来を切り開いて頂きたいところです。

とある若い方に,「業績は同世代と比べて十分過ぎるほどあるのに,面接にも呼ばれないんです」という悩みを相談されました。確かに業績は十分で,外部資金もしっかり取っている優秀な方です。それでも,私の大学にこの方が応募してきたら面接には呼ばないだろうな・・・と思いました。

この悩みは割とよく相談を受け

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査読システムは生き残るか?

https://www.mext.go.jp/content/20231114-mxt_kibanken01-000004257_01.pdf

上記リンクのような通達が文部科学省から出て,早速各大学で通知されています。要約すると「査読はきっちりやろうね」ということです。念頭にあるのは,福井大学の事例だと思われます。こちらでは,要するに自作自演の査読をしていた,ということです。

こうした自作自演

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大学教員のお財布事情:ホテル代で家計が死ぬ

大学教員が研究をするに際しては,学会などの用事であちこちに出張(業界用語では旅行)する必要があります。最近はオンライン学会も見られるようになりましたが,ぶっちゃけ学会は学会発表以外の人的交流が目的で行く場なので,オンラインで参加する意味はそれほどないと思っています(だって,研究成果についてはみんな論文で発表しますからね)。じゃあそのお金ってどこからでるの?という疑問が沸くと思いますが,

①大学か

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公募戦士に捧げる給与+収入の実態と注意点

ずいぶんと間が空いてしまいました。

最近,研究者界隈の給与の話が話題になっています。
本noteでも次のような記事を書きました。

夢をぶち壊すようで申し訳ありませんが,特に国立大学の研究者の給与は安いです。
いえ,額面だけ見れば決して悪くはありません(上記記事では35歳で地方大学は600万円程度,都市部では650万円程度が想定されていると書きましたし,筆者の体感と概ね合致します)。しかし,最初

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公募戦士への海外就職のススメ(給与編)

本noteは特にテーマが決まっているわけではないのですが,若い研究者を目指す人に向けて書くように努めております。「公募」と言った場合,ほとんどの場合日本の大学を指すわけですが,(内部にいる人間としては非常に言いにくいですが)昨今の我が国の国立大学事情はあまりよいものとは言えません。その理由はいろいろありますが,今回は「懐事情」に絞ってみようと思います。

国立大学30代後半准教授の懐事情

そもそ

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「東京科学大学」の名に見る日本の科学研究は当面二流のままである理由

東京工業大学と東京医科歯科大学が合併する、という話が昨今の国立大学界隈ではホットトピックスです。どちらも、我が国を代表する大学の一つですから、「あのクラスの大学でも合併するのか(つまり、より小さな国立大学は・・・)」と取るか、「素晴らしい大学が出来る(大学の大規模化)」と取るかは、人によるんじゃないかとおもいます。

今回話題にするのは、こうした合併そのものの是非等ではなく、新大学の名称(仮)です

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その6 面接次第でコネさえも覆せる

コネを覆す唯一の可能性,それが面接

みんなが気になっている「コネ採用はあるのか?」問題。結論から言えば

ありまぁす()

・・・これだけではあまりにも味気ないですが,あるかないかで言えばあります。

ただし,コネと言っても多くの方がイメージするのは,特定の(主に有力者の)先生に「ボクのお世話になった○○先生のお弟子さんがポストを探しているんだ,一つよろしく頼むよ・・・」と頼まれて採用する。ある

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その5 模擬授業は自己アピールの場

いよいよ当日実施する模擬授業の準備をする段階に至ったあなた,ぜひ頑張ってください。模擬授業には各大学の指定,領域ごとの違い,等々の各種固有性も関係しますので,そこについては本記事では扱いません。

模擬授業は面接とは異なり,唯一こちらから好き勝手になんでも喋ることができる時間です。ある意味,面接よりもアピールしやすい時間ですので,自分の強みがしっかり伝わるような模擬授業を設計しましょう。
この連載

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公募戦士たちに捧ぐ閑話:なぜ,A氏は採用されたか?

閑話として,ある公募の話をしましょう,今から数年前の出来事です。

その公募で面接に呼ばれたA氏は,業績的にはその業界の並程度の方でした。人格的な問題はありませんでした(ここでは社会常識が決定的にないとか,そういうレベルではないという程度の意味です)が,模擬授業は最低に近いレベルでしたし,面接官全員の心証は決して良くありませんでした。私自身,面接していて「この人,本当に真面目に準備したのか????

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その4 模擬授業の案内は熟読せよ

この記事に興味があるあなたは,無事に書類審査を突破した(しそうな)人でしょう。おめでとうございます。ほとんどのケースで,面接+模擬授業に呼ばれたあなたは「採用してもいい」と思われていると理解してください。採用されるまでは,後一歩です。
近年の公募では,多くの場合(筆者の知る範囲では100%)模擬授業を課すことが多いです。多くの公募戦士を悩ますのがこの「模擬授業」ではないでしょうか。

正直,模擬授

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その3 本当のことは書かなくてもよい

前回の続きで,書類の書き方のポイントです。
繰り返していることにつながりますが,概ね「嘘をつくのはアウトだが,本当のことは書かなくてもよい」ということと,「門外漢にもわかるように書く」という2点が重要になってきます。
そしてその背後にあるのは「あなたの書類は誰が何のために読むのか考えよ」という,文章の基本のキなのです。

嘘をついてはいけない

当然のことですが,公募書類に嘘を書くのは倫理的にも,

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その2 書類書きは「意中の人をデートに誘う」つもりで

書類の「書き方」は意外と大切

大学教員公募への応募に際して,様々な書類を提出する必要があります。
書類の「中身」,より具体的に言えば研究業績,教育歴,etcが大切だというのはあちこちで見かけますし,実際に一面では正しいです。
一方で,少なくとも面接に呼ばれる or 呼ばれそうという応募者の「中身」は,概ね実力伯仲の状態になってきます。こうなってくると,「中身」をどう「見せる」かという,公募書類の

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公募戦士たちに捧ぐ記録:その1 優秀な人が面接に呼ばれるとは限らない

はじめに博士をとった人間にとって,大学教員のポストをゲットするためのプロセス・・・いわゆる「公募」と言うのは,非常に重みのある重要な問題でしょう。私自身,某国立大学でいわゆるテニュア持ち(任期無し雇用)で教員をやっていますが,獲得までには紆余曲折がありました。
おまんまが食えるかどうかの瀬戸際ですから,公募に際しては一喜一憂。ついついあれやこれやとググってしまいます。

しかし,世の中には公募の情

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