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20--020-_薗頭の節分
「節分?」
シャラナ様は豆の入った升を渡されながら首を傾げました。
古くより伝えられる季節の分かれ目、すなわちその季節の最後の日のことであり。
これまた古くより、特に立春の前である本日のことを指す言葉として定着しました。
そんな季節の変わり目には邪鬼が生じるとされております。
邪鬼に居つかれては大変だと、生じた鬼を家から追い出すための儀式として
掛け声とともに豆をまいて魔を滅する。
というのが
20230503_ミックスの女王
五月三日、木曜日。憲法記念日。午前九時半頃。
少し暑いくらいの晴天の下、プリズムストーンのエントランスには多くの人が集まっています。
むらさき様から宣戦布告を受けてからちょうど三週間。
シャラナ様はくれない様が学校でいない間ずっと、私とプリマジについて学んでおりました。
とは言っても実際にプリズムストーンで活動していた訳ではなく、薗頭家の修練の間、いわゆるレッスン室を利用しました。
やるならば徹
20230415_はじまりの白
四月十五日、土曜日。午前十時頃。
シャラナ様が薗頭家にやってきてからちょうど一週間。
シャラナ様を探す便りは来ず、しかしくれない様も含めそれを気にする素振りはありません。
新しい妹ができたと喜ぶくれない様はともかく、
一人異世界に迷い込んでしまったと思われるシャラナ様は心細くないのでしょうか。
……もし私が一人魔法界に迷い込んでしまっても、
くれない様のような方に見つけてもらったのなら、大丈夫な気
20230408_出会いの季節
鏡よ鏡よ、鏡さん。
私を大切に思ってくれる人がいる場所は、どこかにありますか?
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四月八日、土曜日。午後一時頃。
桜花爛漫の候 くれない様におかれましては高等部へ進学され新しい春を迎えたのがつい昨日のこと。
今はご自身の学習机に座られ、いつものようにクールな表情でじっと座られています。
素人にはまるで瞑想でもされているかの
20220817_わたしの夢は
八月も半ば。
人間界ではこの頃はご先祖様が家に帰ってくる季節とされ、それをお迎えする時期だという。
ただサニの家はそこまで信仰深いという訳でもなく、お父さんが長く休める時期として旅行に出かけていた。帰り際にお墓参りはするらしい。
何かと有名らしいとある東海岸にサニの一家が何度か利用している旅館があり、今回もそこに泊まる。
昼間はその海岸にある砂浜で、家族で無邪気に遊ぶサニの姿が新鮮だった。
僕は
20220817_あなたの夢は
八月も半ば。
夏休みはもう半分も残っていない。
いつも通りに暑い太陽の下、これもいつも通りにプリズムストーンへ向かっていた。
長らく家に帰ってきていない橙色のスライムと面会する為に。
「今日もお勤めご苦労様なのにな~」
「うむ。ステージなら少し待ってくれ、もうちょっとでここが片付く」
「大丈夫なのにな~」
盛況で終えたグランドフェスではあったが、ぷにゃとぺったが好き勝手にやったことは当然問題で
20220807_世界を創るもの
人間界にはこんな話があるそうですよ。
蝋で翼を作った若者が、その作り方を授けた父の忠告も恐れず太陽を目指し、案の定翼を失い墜落した。
彼らは元々、幽閉された地より逃げ出すため翼を作ったようですが。
それだけならばわざわざ太陽を目指す必要はなかったというのに。
無駄な目標や根拠のない自信は身を亡ぼす、という教訓なのでしょうかね。
さて、理由はどうあれ自ら伝授した翼で息子を失った父は、果たしてどんな
20220807_ナンバーワンスター
深い、深い、たぶん、海の底。
たまに見る光景。
息苦しいどころか、どこか心地よい空間。
薄暗い中でも、遠いのか小さいのか、キラキラとした何かが周囲に浮かび、それは星の様でとてもきれいだ。
遠くにぼんやりと見える大きな光は太陽だろうか。
そちらへ向かおうと思えば、引かれるようにすっと体が進んでいく。
徐々に、徐々に、光が大きくなり、手が届くと思って手を伸ばし……
「………………あれ?」
「おはよー
20220727_弐に勿れ
day : 2021/7/30
※2021/8/9に記述。
ようやく扉を開くことができた。
管理者やエレメンツたちにもバレてはいないだろう。
早速と人間界に転移したが、その際に協力者とは離れてしまった。
マナマナは人間界ではその肉体と保つためにある程度のワッチャが必要なのだが。
我にはそれすらなかった故か、形状を保てずスライム状になってしまった。
正直焦ったが、スライムになったことでエネルギー消費
20220710_至高
目標を定めてからひと月以上が経った七月の頭。
サニとの練習は順調だった。
たまに意見は食い違うが、それでも納得のいく答えにすり合わせられる。
それが、どこか物足りなく感じるときもあるが。
「よかったのか、もう散り際なんじゃ」
「いいの」
梅雨も明け、濃い青の空が広がり、じっとりとした風が吹く。
向こうには海がないからこういう風は久しぶりで心地よい。
「いつも満開の頃に来てるんだから、たまには
20220522_糸をよりて
「「デュオ大会?」」
「ハモったのにな~」
風邪でゴールデンウイークを吹っ飛ばしたむらさきが復活してから幾日。
いっととになが持ち寄ったのは、次のエレメンツフェスの情報であった。
「これがそのパンフですね、ブライトネス&ダークネスエレメンツフェス」
「プリマジスタの新しい可能性へ、ねぇ……」
確かに人数は多い方が、歌でもイリュージョンでも表現の幅は増えるだろう。
だがその分、自分だけでやるよ
20230214_番外編_マジックなしマジッククッキング
「さて、ようやくみなさん集まりましたね?」
ばさらがメガネをくいっと上げる。
集合予定時刻から二十分遅れでぽぽふが到着したことで、
彼女の眉間にはややしわが寄っている。
「ふわわぁ……なに、するのぉ……?」
「事前にお話ししたはずですが。まぁ、改めてご説明しましょう。
本日みなさんにお集まりいただいたのは、ずばり……」
ホワイトボードに向かいマジックを手に取ったばさら。
がががっと、力強い筆
20220504_もうひとつの
プリマジとは。
広く一般には、真直祥寺のとある会社がここ数年で興したエンターテイメントとされている。
しかし本当は、もっと昔から極秘に行われてきた儀式である。
プリマジスタであれば、魔法のようなと形容されるプリマジのステージが実際に魔法で演出されていることも、その魔法を使う魔法界の住人マナマナがいることも承知だろう。
なぜそんなことをしているかと言えば、人間界の住人であるチュッピが出すワッチャを
20220504_赤の他人
波乱のフラッシュエレメンツフェスから数日。
GWということもあって連日にぎわうプリマジ会場であるが、そこにむらさきの姿は見つけられていない。
フェスのステージは、洗練された見事なものだった。
それだけ努力を重ねたのだろう。
だがそれを軽々と超えていたいっとはほんと、うん。
天才肌というものだろうか。すごいなぁ。
「あ、サニ先輩! お久しぶりです!」
噂をすれば。いっとが手を振ってこちらに近づ
20220430_いっと いず えんかうんと
四月。それは始まりの季節。
クラス替えでになと同じクラスになったことでいじれる機会が増えたのは良いことだ。
そんな四月の終わりには、早速次のエレメンツフェスが待っているという。
前回は気合いが入って優勝できたが、あれからむらさきも相当気合いが入ったようで
うかうかしてられない。
ぽぽふもぷわぷわしてない。今はプリマジ帰りで、フードで眠ってるからね。
そんなあたたかな夕日の中、ちょうどプリマジ会
20220327_空高く
三月も終わりに近づいた、まだまだ寒空が広がる今日は。
アクアエレメンツフェスの開催日だ。
そして既に多くのステージが終わり、もうすぐ私の番という状況である。
になの出番は最初の方に済んでいたため、今は控え室でになになしていた。
「む~、今日のサニちゃんはいい感じなのにな~」
「じゃあふくれっ面にならないでよ」
「下手に褒めると調子に乗るところがあるのにな、これくらいの当たりでいいのにな~」