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36 DCD(発達性協調運動症)とは?

みなさんは、発達性協調運動症(以下DCD)という発達障害をご存じでしょうか。最近、多くの教育書籍や雑誌でDCDを見かけるようになりました。
文科省の調査で、通常の学級に在籍する小中学生の8.8%の学習や行動に困難のある発達障害の可能性があることが2022年に示されました。

ADHD、LD、ASDのみならず、DCDがある子どもへの支援ニーズが高まっているのを現場でも実感しています。

そこで、今回はDCDの特性についてまとめていきたいと思います。


DCDとは


DCDとは、発達性協調運動症を短くした名前です。
大きなけがや病気がないにも関わらず、運動の不器用さが極めて大きい障害のことを指します。

運動といえば、野球やサッカー、バスケットボール等のスポーツや体育等と思い浮かべると思いますが、ここでの運動は日々の生活において体を動かすこと全てが含まれます。

例えば、
箸を使うことや文字を書くといった手や指を使った運動
階段の上り下り
自転車に乗ること
も含まれます。

これらの運動は、身体のいくつかの部分を「つなげて」行うため、症名にもある協調運動と呼ばれます。

例えば、縄跳びを例に考えてみます。
縄跳びをするためには

①縄をもって回す手
②縄が下に来た時にジャンプする足
③なわの動きを見る目

が必要になります。
手、足、目が全てバラバラに動いてしまうと、跳ぶことができません。
手や足、目が1つのつながりを持って動く、つまり協調して動くことで初めて縄跳びを跳ぶことができるのです。
DCDのある子は、こうした協調運動に大きな苦手さを示します。

したがって、運動の不器用さとは協調運動を指すものであり、小学校で行う体力テストで計測するような「足の速さ」「柔軟性」「瞬発力」「持久力」を指すのではありません。

DCDのある子どもが苦手さを示す協調運動の種類

DCDのある子どもが苦手さを示す協調運動は大きく
①手や指を使う運動
 箸やスプーンなどの食具を使うこと・文字を書くこと・洋服のボタンやチャックを留めること・靴紐を結ぶこと
②身体全体を使う運動
 階段の上り下り・スキップ・片足ケンケン
③目の動きと手の動きを合わせる運動
 指で物を数えること・サッカーボールを蹴ること・飛んでくるボールをキャッチすること・虫を捕まえること
の3つに分けられます。それぞれ、生活の中で生じる運動で苦手さがよくみられます。

DCDと捉えるポイント

しかし、幼少期ではこれらの運動が苦手でできないことがほとんどです。
では、どのような子どもをDCDと捉えるのでしょうか。

1つ目のポイントは年齢です。
DCDのある子はその子の年齢であればできると思われる運動でさえも、大きな苦手さが見られます。
例えば、5歳の子どもがピアノが弾けなくてもDCDとは考えません。しかし。フォークをうまく使えない、片足立ちが長く続かないなどなるとDCDかもしれないと考えます。
大切なのは、運動する場面や経験が十分にあっても、苦手さがなくならないということです。
フォークを使い始めて間もない頃は上手に使えなくて当然です。使っているうちに上手になっていくものです。しかし、DCDの子どもは同じ年齢の子どもと同じくらい使い、かつ使い方を教えてもらってもなお苦手さが残ることが多いです。

2つ目のポイントは苦手さの影響です。
運動の苦手さが、学校や家庭での生活に大きな問題となっている場合にDCDと考えます。例えば、文字を書くことに大きな苦手さがあり、黒板の内容を書き写したり計算ドリルをすることに多くの時間がかかっていました。
何度も書いては消すなどを繰り返すために、授業から遅れるようになり、学習成績が落ちてきました。学習への意欲が低下し、勉強嫌いになり、登校を渋るようになりました。
このように、生活に問題が生じるほど、運動の苦手さが大きな場合にDCDと考えることが多いです。

DCDは運動が苦手なことだけが問題なのか

DCDは、運動が苦手なことだけが問題ではありません。
その結果、生活に大きな影響が生じることも問題なのです。

自己効力感の低下
他児との交流の低さ
不安
抑うつ

などの問題が起こりやすく、日常生活に大きな負担がかかってしまいます。
自立と社会参加に大きな弊害をきたす可能性があります。

よって、我々教育者はDCDの特性を理解し、その子どもへのアセスメント適切な支援を行い、現在、将来をよりよく生きていくための手助けをすることが大切なのではないでしょうか。

今回は以上になります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

参考文献
令和 4 年度障害者総合福祉推進事業 「協調運動の障害の早期の発見と適切な支援の普及のための調査」 DCD支援マニュアル

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