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脳卒中発症2年後のADL悪化の予測因子


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中患者の日常生活動作の悪化に関連する因子:後方視的コホート研究

📕Shao, Chenlan, et al. "The factors associated with the deterioration of activities of daily life in stroke patients: A retrospective cohort study." Topics in Stroke Rehabilitation 31.1 (2024): 21-28. https://doi.org/10.1080/10749357.2023.2194095
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[背景・目的] 脳卒中患者の日常生活動作(activities of daily living, ADL)は、一般的にリハビリテーション後に改善する。しかし、患者によっては将来ADLが悪化する危険性が残る。これまでのところ、脳卒中患者のADL悪化に関連する因子に関する研究は少ない。目的:脳卒中患者のADL悪化に関連する因子を明らかにすること。

[方法] 2016年1月~2018年12月にリハビリセンターを退院した自立移動可能な脳卒中患者336例を評価した。主要アウトカムはADL悪化とし、退院後2年目に評価したADLが退院時に評価したADLと比較して15点以上低下したことと定義した。ADL悪化に関連する因子をスクリーニングするために、単変量および多変量統計解析を行った。

[結果] 全体として、62例(18.4%)が退院後2年の時点でADLの悪化を示した。
・年齢(OR=1.114、95%CI=1.045-1.188、p=0.001)
・血管危険因子>3(OR=3.269、95%CI=1.189-8.986、p=0.022)
・脳卒中後うつ病(OR=2.486、95%CI=1.011-6.114、p=0.047)は脳卒中患者のADL悪化の危険因子であった。
・一方、退院時のBerg Balance Scale(BBS)得点の上昇はADL悪化の予防因子であった(OR=0.484、95%CI=0.386-0.606、p<0.001)。
これらの因子から構成される予測モデル(ADL悪化のスクリーニング尺度)の受信者動作特性曲線。曲線下面積は0.839(95%信頼区間、0.791-0.887)であった。

[結論] 自立可動域にある脳卒中患者の5人に1人近くが、退院後2年の時点でADLの悪化を経験していた。年齢、血管危険因子>3、退院時BBS、脳卒中後うつ病(PSD)がADL悪化と関連する因子として同定された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

未来を予測することは難しい。
そして、それは遠い未来であるほどに、難しい。
今回の抄読研究は、退院時の評価から発症2年後を予測するというかなりの時間間隔の予測だ。

だが、その予測モデルの精度は高く(AUC 0.839)、有用なものに思われた。
理学療法士として、特に貢献できる部分としては、肯定的な因子である「BBS点数の増大」だろう。
退院時のBBS点数を高めておくほど、2年後のADL低下を防ぐことに近くなる。
いま、目の前のバランス練習は、2年後を見据えたとしても、有用なものでありうるのだ。

また、今回の研究は、退院時の介護保険サービス選択の一助にもなり得る。
スクリーニングでリスクが高い患者は、訪問リハなどADL低下を防ぐサポートの需要が高い。
根拠に基づいた介護サービスの選択をしたい。

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