見出し画像

Coach2Move。成功した個別化理学療法プログラム

📖 文献情報 と 抄録和訳

個人に合わせた理学療法アプローチ(Coach2Move)の実施は、高齢者の身体活動の増加および機能的移動性の改善に効果的である

📕Heij, Ward, et al. "Implementing a Personalized Physical Therapy Approach (Coach2Move) Is Effective in Increasing Physical Activity and Improving Functional Mobility in Older Adults: A Cluster-Randomized, Stepped Wedge Trial." Physical Therapy 102.12 (2022): pzac138. https://doi.org/10.1093/ptj/pzac138
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 本研究の目的は、以前の試験で実証された個別化理学療法アプローチ(Coach2Move)が通常ケア理学療法(usual care physical therapy, UCP)と比較して優れた費用対効果を持つことが、日常臨床で再現できるかどうかを評価することであった。

[方法] オランダの4つの理学療法士診療所からなる4クラスターを用いた多施設共同クラスター無作為化ステップウェッジ試験により、身体活動を誘発する個別化理学療法アプローチ(Coach2Move)を通常ケアと比較検討した。

✅ Coach2Moveとは?
・Coach2Moveは、身体活動を向上させるための個人化された目標とオーダーメイドの理学療法治療をもたらす、綿密な問題分析を用いた個人化理学療法アプローチ(📕de Vries, 2013 >>> doi.)。
・Coach2Moveの主要な要素は、下図に示されており、以前の出版物でより詳細に説明されている(📕de Vries, 2013 >>> doi.; 📕de Vries, 2016 >>> doi.)。
・以前に実施された無作為化比較試験(RCT)では、移動に問題のある高齢者に対して、Coach2Moveは通常のケアの理学療法(UCP)と比較して費用対効果が高いことが示された(📕de Vries, 2016 >>> doi.)。

3ヵ月、6ヵ月(主要アウトカム)、12ヵ月後の身体活動量(Longitudinal Aging Study Amsterdam Physical Activity Questionnaire)および機能的移動度(Timed "Up & Go" Test)について、有効性に関するマルチレベル解析を実施した。副次的アウトカムは、虚弱のレベル(身体活動に関する評価的虚弱指数)、知覚効果(グローバル知覚効果および患者固有の不満に関する質問票)、QOL(Euro Quality of Life-5 Dimensions-5 Levels[EQ-5D-5L])および医療費であった。

[結果] 理学療法士を訪れる移動に問題のある地域在住の高齢者292人を、試験のCoach2Move(n = 112;平均[SD]年齢 = 82[5]歳;60%女性)またはUCP(n = 180;平均[SD]年齢 = 81[6]歳;62%女性)のいずれかのセクションに組み込んだ。ベースライン時、Coach2Move参加者はUCP参加者に比べて身体活動量が少なかった(平均差=-198; 95% CI = -90~-306活動分)。6 ヵ月後では、身体活動レベル(297 [83~512] 活動時間)、機能的移動度(-14.2 [-21~-8] 秒)、虚弱レベル(-5 [-8~-1] ポイント)のグループ間平均差 [95% CI] が Coach2Move 参加者に有利であった。12ヶ月後、Coach2Move参加者の身体活動レベルはさらに上昇し、虚弱レベルおよび二次アウトカムは安定したままであったが、UCP参加者のアウトカムは低下した。Coach2Move 導入戦略後、理学療法士が利用した治療セッションは、導入前と比較して有意に少なかった(15 対 22)。予想されたコスト削減は見られなかった。

[結論] この研究は、以前の試験の結果を再現し、UCPと比較して、より少ない治療セッションでCoach2Moveがより良い中長期アウトカム(身体活動、機能的移動性、虚弱のレベル)をもたらすことを示すものであった。これらの結果および以前の知見に基づき、理学療法士の診療にCoach2Moveを導入することが推奨される。

[臨床意義] この論文は、以前に実施された無作為化比較試験で費用対効果が証明された治療戦略であるCoach2Moveアプローチの実施について述べたものである。Coach2Move を実生活の場で実施することで、臨床的に適切な集団における効果を評価することができた。Coach2Moveは、UCP療法と比較して、身体活動の増加、機能的移動性の改善、虚弱の軽減をより効果的に行うことが示されたため、日常臨床で高齢者に関わる理学療法士にとって応用が可能である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この文献抄読において考えたかったことは「個別性(多様性)と無秩序の違いは何か?」ということだった。
直感的には、個別性と無秩序は違う!、と感じた。
でも、具体的に何が違うのか、と。
今回の抄読研究は、見事に個別性を尊重するとは、こういうことだ!、と示してくれた。
答えの1つは、『実践すべき領域(答えるべきキークエッション)』の有無だ。

Coach2Moveの概要の図を見てもらえばわかるように、この介入は7つの実践すべき領域を満たす形で構成される。
それぞれ7つの領域において、個々人に施された内容は異なる。
が、領域としては同じ領域のことを考慮し、実践しているのだ。
たとえば、動機付け面接は、その面接内容は個々人によってもちろん異なるけど、動機付け面接を行なっているという領域においては同一である。

このような、エッセンスは明確化されているけれど、その中身は個別です、自由です、という状態が個別性(多様性)だと感じた。
一方、無秩序とは、テーマも答えも実践もあったもんじゃなくて、全部ごっちゃ混ぜ、思いついたものをその順で放り込んでいく、いわば闇鍋である。
なにか標準化を図ろうとすると「それでは個別性が・・・」という話に陥りやすいが、それは個別性と無秩序の違いが曖昧になっているのだ。
無秩序は、あらゆる意味での貧富の差を生む。
それは、決して集団の望ましい形とは思われない。

飛ぶべきハードルは既にある。
だが、飛び方・走り方は多様であり、自由度の高いものだ。
その速度を競おうぜ。
それが、個別性(多様性)だろう。
いくつかの灯台があることをみんなで共有して、あとはそれぞれの航海になる。

⬇︎ 関連 note✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

最近の学び

多様性を考える