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両親を敬え “Honor your parents”。国間の解釈の違いと介護義務への示唆

📖 文献情報 と 抄録和訳

「両親を敬え」の解釈の違い:親の介護義務への示唆

📕Esiaka, Darlingtina K., and Elizabeth Luth. "Different interpretations of “honor your parents”: Implications for obligation of parental caregiving." The Journals of Gerontology: Series B 78.11 (2023): 1787-1795. https://doi.org/10.1093/geronb/gbad106
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 多くの宗教的・文化的環境では、"両親を敬え "という原則が受け入れられている。しかし、この原則をどのように理解し、実行するかは、文化的背景やコミュニティによって異なる。「両親を敬え(honor your parents)」に対する理解の違いは、文化的背景を超えた親の介護の動機に注目させる。本研究では、3つの異なる文化的背景を持つ個人が「親を敬う」をどのように概念化しているのか、また、これらの概念化が高齢の親を介護する義務についての認識にどのような影響を及ぼしているのかを調査した。

[方法] 米国、ガーナ、ナイジェリアの153人を対象とした半構造化面接により、「親を敬う」という概念、それがどのように理解されているのか、また親を介護する義務の認識との関係を探った。内容分析を全記録に適用し、考察のために分析した。

[結果] 米国の人々の間では、「親を敬う」という言葉は、親に物質的・道具的なケアを提供するという意味ではなく、精神的なケアという意味で捉えられている。対照的に、ナイジェリアとガーナでは、「親を敬う」ことは、親に物質的・道具的ケアを提供することと密接に関連していた。

■ 「両親を敬え」という用語への回答例

[考察] 「親を敬う」という概念の違いが、親の介護に対する期待や介護のあり方にどのように反映されるかを理解することで、米国、ガーナ、ナイジェリアの高齢化した人口集団の介護ニーズをどのように満たすことができるかを明らかにすることができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

僕が大好きな小説の1つに『モモ』がある。
この小説は、(いろんな解釈があるだろうけれど)時間との向き合い方を考えさせてくれる、とても深遠な作品だ。
その中で、『灰色の紳士』なる登場人物が、時間の効率化をガンガン推し進めるシーンがある。
いままで、時間をかけて大切に思ってきたものが、どんどん効率化されていってしまうのだ。
例えば、理容師のフージーさんの効率化介入は、以下のようなものだった。

・仕事をさっさとやって、よけいなことはすっかりやめちまう
・ひとりのお客に半時間もかけないで、十五分ですます
・むだなおしゃべりはやめる
【★】・年寄りのお母さんと過ごす時間は半分にする
【★】・安くていい養老院に入れてしまう

・役立たずのインコを飼うのをやめる
・ダリア嬢の訪問をやめる
・寝る前の1日振り返り習慣をやめる
・浪費(歌だの本だの、友達付き合いだの)に、貴重な時間を使うのをやめる
・店の中に正確な大きい時計をかける
「モモ」より

これらの項目は、効率化されるべき『無駄な』時間だろうか。
それとも、時間をかけることで『大切』と再認識される、削ってはいけない時間だろうか。
答えは、人それぞれあるのだと思う。
だけれども、1つ言えることは、近年はこの『灰色の紳士』が随分と出没しているように思われる。

ところで、今回の抄読論文について。
上の【★】をつけた部分、そこをどう考えるか。
ここは、本当にむずかしい問いだと思うし、解釈の尺度も1つではあり得ない。
介護疲れの問題もある、個々人の人生の問題もある、そして、両親への敬意への解釈も。
参考になったこととして、国によって随分考え方が違うのだな、ということ。
<争いを避ける>の部分のガーナの回答をみてビックリした。
『言葉を交わさない』
『私は両親と言葉を交わしたことがない』
『怒られて怒鳴られても、何も言い返さずに全部受け止めている』

言葉を交わしたことがない、ってどういうこと?、と思った。
だが、そういう国としての文化というか、道徳観というかがあるのだろう。

こういう、たくさんの価値観を知ることで、少なくとも『選択肢』が増えることは確かだ。
その中で、自分と、両親とが、最も納得できるものを選択していくことが望ましいのではないだろうか。
何にせよ、『無駄』や『効率化』といった概念が、大切なものを削る可能性があることには、注意が必要だと思っている。

時間は私を構成する実体である
時間は私を押し流す川だが、私がその川である。
時間は私を破壊する虎だが、私がその虎である。
時間は私を焼きつくす火だが、私がその火なのである。

作家 ホルヘ・ルイス・ボルヘス

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