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⾼齢者の日常移動。“能動的”と“受動的”がある

📖 文献情報 と 抄録和訳

移動手段の選択と手段的日常生活動作の関連性:地域在住高齢者の観察コホート研究

📕Tamura, Motoki, et al. "Association between choices of transportation means and instrumental activities of daily living: observational cohort study of community-dwelling older adults." BMC public health 23.1 (2023): 1-8. https://doi.org/10.1186/s12889-022-14671-y
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🔑 Key points
🔹⾼齢者が⽇常⽣活で移動するときに、歩いたり、電車や路線バスに乗ったり、自ら車を運転するなど、能動的な「移動⼿段」を維持することが、介護予防に効果的という調査結果を、医療経済研究機構(IHEP)が発表した。
🔹⾼齢者が能動的に交通⼿段を利⽤する機会や環境を、地域社会に増やすことが、⾼齢者の社会的な⾃⽴⽣活を促すのに効果的である可能性がある。

[背景・目的] 高齢者の身体的健康と外出頻度との関連性が報告されており、近年では自治体による高齢者向けの移動支援プログラムが整備されている。先行研究では、外出頻度と機能的健康状態との関連が示されているが、移動手段の選択が手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living, IADL)に与える影響については、ほとんど報告されていない。
●目的:高齢者における移動手段の選択とIADL低下リスクとの関連を評価する。

[方法] 住民健康状態調査のデータを用い、2016年と2019年の2時点の縦断的なパネルデータを用いて、観察型の集団(地域居住者)ベースのコホート研究を実施した。さらに、このパネルデータと要介護認定を受けた人のデータベースを組み合わせ、参加者のIADLを特定した。傾向スコアマッチング法を用いて「能動的移動手段」と「受動的移動手段」の2群に分類し、3年後の手段的自立度の低下リスクを判定した。

✅ 「能動的移動手段」と「受動的移動手段」
・アンケートのデータから、各参加者の曝露状況を、日常の移動手段に関して能動的か受動的かを分けた。
・アンケート項目「外出時の移動手段」において、「徒歩」「シニアカー」「自転車」「バイク」「車(自家用車)」「電車」「路線バス」を総称して「能動的移動手段」と定義した。
・また、「車(他人運転)」「タクシー」を「受動的移動手段」と定義し、曝露変数とした。
・本研究では、自己申告のうち、能動的な交通手段のみを利用しているグループを「能動群」、受動的な交通手段のいずれかを利用しているグループを「受動群」と定義した。

[結果] 能動的手段は6,280人(76.2%)、受動的手段は1,865人(22.6%)が使用した。2019年にIADLが低下した人は999人(12.1%)。傾向スコアマッチングにより、「能動的な移動手段」と「受動的な移動手段」の属性をバランスさせて比較した結果、「受動的な移動手段」は「能動的な移動手段」よりもIADL低下リスクが高く、RR 1.93 (95% CI: 1.62-2.30) と有意に高いことが分かった。

[結論] 高齢者における受動的な移動手段は、3年後のIADL低下のリスクとなる可能性がある。高齢者が積極的に移動手段を利用できる機会や場所を地域社会に増やすことは、高齢者の社会的自立生活を促すために有効であると考えられる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前の文献抄読において、『アクティブトランスポーテーション(Active transportation)』という概念を紹介した。

✅ アクティブ・トランスポーテーション
アクティブトランスポーテーションとは、徒歩や自転車などの自走式の人力移動手段と定義される。
アクティブ・トランスポーテーションは、21世紀の世界的な公衆衛生上の3つの課題(地球規模の気候変動、大気汚染、運動不足の原因)に同時に取り組むことができる。

今回の文献も広く言えばアクティブトランスポーテーションなのだが、「公共交通機関の使用」や「自分での車運転」もアクティブに含まれている。
つまり、身体運動を伴うか、ではなくもっと広くそこに“能動性”があるか、で定義している。

「ダイエットしたいんですけど運動が続かなくて」
「運動したいんですけど、初日から出来なくて」

そんな人に、僕は必ず提案するのが、

「じゃあ、自転車通勤にしたらどうですか?」

だ。
人間というのは、怠惰で弱い生き物である。
自ら苦痛を余剰に選択することなど、続くはずがない。
大事なことは、生活インフラの中に運動を組み込むことだ。
職場への移動、学校への移動・・・、は生活の中で必ず行われる。
それを、『運動』化してしまえばいい、というわけだ。
そうすれば、運動をするために意志力は必要ない。
ただ、生活の中で必要な移動をする(ことが運動になっている)だけ。
事前に頭を使い、実施の際には全く頭を使わないことが理想だ。

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