――死亡したのは埼玉県在住の豊原和之41歳、サラリーマン。

「粉雪こなゆきか……」
「41歳って、粉雪に手を出すにはちょっと高めの年齢ですね」

新米刑事の加藤が豊原の免許証を食い入るように見ている。

昨日の夜、千葉と埼玉の県境の雑木林で豊原の遺体が発見された。死因は薬物中毒。

――粉雪。

最近、若者を中心に出回っている危険ドラッグだ。使用すると、チラチラと雪が舞っているような幻覚を引き起こすことから、そう呼ばれている。しかし、働き盛りの真面目なサラリーマンが、なぜ粉雪に手を出したのか。捜査関係者も首を傾げている。

調べるうちに、豊原には婚約者がいたことが判明した。ただ、9か月前に突然婚約を解消し、その婚約者は北海道の会社社長と結婚したと……。

――普通のサラリーマンと、北海道の大企業の社長。

天秤にかけるには、あまりにも残酷だ。

「世知せち辛がらいですね。気持ちはまぁ、分からなくはないですけど」

パソコンのキーボードをパチパチ叩きながら、加藤はぼそっと言った。

――薬物なんぞに頼らなくても、飛行機1本で本物の粉雪が見られたのに……。

悔しさが募った。

（了）

たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「会員制の粉雪」です。

「粉雪」というと、どうしてもレミオロメンの、あの歌が思い浮かんでしまいます…。

こなぁぁぁぁゆきぃぃぃぃ！！

先週のお題は「夜光おみくじ」でした。

テーマ「創作」でCONGRATULATIONSを頂きました！