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トウキョ版 二十四節気

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記事一覧

夏の終わりは秋のはじまり * 処暑

UVカットパーカーのフードをしっかり被った上に菅笠を被り草引きをしていたら、授与所の窓口に…

桃虚(toukyo)
8か月前
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夏至 * 雨の古本屋さんで悶絶する

十年ぶりに蟲文庫に行った。岡山県倉敷市、文字通り古くからの倉が敷き詰められている美観地区…

桃虚(toukyo)
10か月前
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芒種 * 時をかけるご朱印帳

私のオフィスは神社の社務所で、お守りやお札を授与する窓は映画館のスクリーンのように大きく…

桃虚(toukyo)
11か月前
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小満 * 水張るる田に鴨来たりて地主顔

春祭りに献酒をしてくれたみやちゃんに、撤下神饌(神様からのお返し)の筍山椒を渡しに行った…

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立夏 * 都会の神職 

かつて私にとって粽は想像上の食べ物であった。「せいくらべ」という歌に、粽食べ食べ兄さんが…

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春分 * 桜舞う窓に神差す京阪電車

夏に生まれた双子は、小さなお猿みたいだった未熟児から猛烈に大きくなり、春にはまるまるとし…

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啓蟄 * お供えのフルーツが芋にかわる頃

咲き始めた桃の花を、つがいのひよどりがあちこちつついて、花びらがぱらぱらと落ちてくる。彼らはヒーヨヒーヨと通る声で盛んに喋るのですぐ分かる。この声が聞こえ出すと、神様への果物のお供えがしばらくの間、芋類に変更になる。 なぜかというと、雑食で比較的体の大きいひよどりは、神様にお供えした果物をあっというまに食べてしまうからである。夏みかんなどの柑橘類は中身をくり抜いたようにきれいに食べられ、りんごも彫刻家が削ったように細くなっている。そして彼らは食べながらふんをするので重要文化

清明 * 法螺貝の男

三年前の春、祭りが終わって祭器具を片づけていると、首から法螺貝をぶら下げた男がやってきた…

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雨水 * 荒くたい雹が思い出を刺激する頃

二月の終わり、竹箒で落ち葉を掃いていると雹が降ってきた。それまで見たことのないほど激しい…

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小寒 * 秀吉、私が長いあいだ欲しかったものはこれだったよ

豊臣秀吉が所有していた香炉 銘「千鳥」。 かわいい。 こんなにかわいいのが好きだったんだな…

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大寒 * LDK+N のNとは何の事

神職のふるぽんが、クイックルワイパーを高校3年生の巫女に手渡し、「これ納戸になおしてきて…

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冬至 * 社務所に現れたとんでもない果物

お正月は神職にとって大繁忙期。 ゆえにおせち料理は、もっぱら実家の姉が料理講師をしている…

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小雪 * 巫女の卒論

「今、谷崎潤一郎の卍っていう小説で卒論書いているんですけど」 大学四回生の巫女が紙垂を作…

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霜降 * 参道の正中避けて通るねこ

七五三の着物を着て草履を履いた三歳児が文字通りヨチヨチ歩いてくる。お餅みたいだ。常連の参拝客が群がる。声をかけずにおれないのだ。いやあ、かいらしなぁ。ちゃあんと草履はいてはる。これからマンマンちゃんアンしはんの? かしこいなぁ。今が一番ええ時やなぁ。誰かの称賛に、また誰かが重ねて称賛する。関西弁のイントネーションのせいか、ちょっと遠くから聞いているとまるで音楽のようで、鳥が輪唱しているみたいにも聞こえる。 私のオフィスは参道に面した神社の社務所で、大きく開けた授与所の窓から