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エッセイ

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ポットパイの日

ポットパイの日

近所にポットパイのお店がある。チキンポットパイが有名だけど、それだけじゃなくて色々な種類のポットパイを冷凍で売っている。一人用サイズがあるので、うちは家族一人一人が好みの種類を選ぶ。

たくさんの種類を試したけれど、娘はチキンカレー、夫はマッシュポテトのシェパーズパイが定番になった。息子は何でも食べるけど、王道のチキンかポットロースト。私はその日の気分で選ぶ。

昨日は久しぶりにポットパイの日にし

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海洋哺乳類を飼い慣らすことについて

海洋哺乳類を飼い慣らすことについて

今、訳あって飼育下の海洋哺乳類に関する報告書を読んでいる。海洋哺乳類を飼い慣らして、娯楽・営利目的に使うことに反対している団体がまとめた報告書だから、それがどんなに不適切なことかを立証すべく、悲しい事案ばかりが取り上げられているので、とても暗い気分になる。

思い出すのは、日本の水族館で小さなスペースに閉じ込められていた大きな一頭のシロクマ。ひとりぼっちで、狭い水槽をずっと行ったり来たり、ガラス越

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遠回りして、最後に幸せに辿り着く

遠回りして、最後に幸せに辿り着く

「子ども達は、色々な道を遠回りして、最後に幸せに辿り着く」と私の父が生前に言っていた、と夫から聞いた。何を思って父がそう言ったのか、なぜそれを二回しか会ったことのない夫に伝えたのか、まったくもって謎。

私は特に父と仲が良かったわけでも、でも特に父を嫌っていたわけでもないので、希薄な関係だったと思う。それは父だけでなく、家族全員に対してそうだったので、きっと私の問題なのだろう。

父は、亡くなる前

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ほろ苦く、もの悲しい春

ほろ苦く、もの悲しい春

ふきを近所の友人からもらった。毎年、この季節には裏庭にたくさん生えるそうで、去年ももらって、初めてふきを料理してみた。皮をむくのが面倒だったけど、出来上がったふきを食べたら、その手間も吹き飛ぶおいしさだった。なので、今年ももらって来て料理した。

やっぱり皮むきが一苦労で、むいてる最中は、なんでまたもらって来ちゃったんだろう、と思ったりした。でも、その後で煮たふきを食べたら、やっぱり皮むきの手間が

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隣の芝生とうちの雑草

隣の芝生とうちの雑草

アメリカの家の庭は、たいてい芝生が敷きつめられている。と言うと青々とした芝生のイメージがあると思うけど、冬の間、芝生は枯れていて茶色っぽく、芝刈りも必要ない。暖かくなると、芝が緑色になって元気に伸び始め、毎週のように芝刈りが必要になるわけだけど、今の季節、隣の芝生はまだ茶色っぽい。それなのに、うちの庭だけがすでに青々としている。それは、うちの庭が雑草だらけだから。

たんぽぽ、クローバー、そして名

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国際女性デーのイベントに娘と

国際女性デーのイベントに娘と

国際女性デーのイベントに、娘と一緒に参加した。普段なら、誘われても絶対に行かない会社関係のイベントだけど、今回はなぜか惹かれた。珍しく娘を連れて来てもいいと言われたので、娘に素敵な女性たちと会ってもらって感化させたかったし、何より場所がすごく豪華なホテルだったから、ちょっと行ってみたかった。

テニスばかりしていて、きちんとした洋服を持たない娘のために、一緒に買い物に行って洋服を新調し(娘が面倒く

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心穏やかな一日

心穏やかな一日

オフィスで仕事している時に、娘から電話があって、たった今、運転中に警察に止められた、と言う。スピード違反で捕まったらしい。ママは警察に止められたことないんだけど、怖かったでしょ、と言うと、娘は泣き出して、はい、ごめんなさい、と言った。泣かせるつもりはなかったし、まだ運転中だと言うので、大丈夫だから、とにかく気をつけてね、と慌てて電話を切った。とりあえず、運転に集中してもらわなければ。

娘は完璧主

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焦らない、足掻かない、考えない

焦らない、足掻かない、考えない

最近、また怒涛のように色々とあった。息子の車が故障したり、娘が遠征先で腰を怪我したり、私が職場で腹立たしくも悲しい扱いを上司から受けたり。子ども達のために走り回り、やる気をなくした仕事に悩みながら、毎日の家事と犬の世話をこなし、ドタバタとせわしなく過ごす日々。夫と犬だけは、いつもと変わらず平和に過ごしていて、救いとなっていた。

このせわしない日々の中、できるだけ目の前のことに集中して、ゆっくり丁

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癒される香り

癒される香り

最近、癒されている香りについて。私は特に鼻がいいわけでも、匂いに敏感なわけでもない。それでも、心に響いて癒してくれる香りがある。

日本のボディーソープ

近所のお店で、なぜか日本製のボディーソープが一つ、ポツンと売られていた。色々な売れ残りのブランド品や小洒落たアイテムが買える大好きなお店。ちょうどボディーソープが切れていたので買って帰り、お風呂で使った途端、その香りに打ちのめされた。日本の温泉

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娘のテニス: 一年後

娘のテニス: 一年後

約一年前にまさかの逆転負けをした同じ場所で、同じパートナーと、同じチームを相手に、娘のテニスの試合があった。そして、またもや全く同じ展開で、まさかの逆転負けをした。3セット目は、まさにデジャヴ。去年の試合後に娘が泣いたことが思い出されて、私は不安になっていた。

試合後、ベンチにいる娘に笑顔が見えて、少しホッとした。でも、まだ分からない。後で泣くかも…と不安を拭い去れずにいたけど、娘は私のところに

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今年の目標: 穏やかに優しく

今年の目標: 穏やかに優しく

去年の目標は、自分の好きなことをすることだった。そんな簡単で単純なことさえ忘れていて、意識しなければいけなかった一年前からすると、今の状況はとても落ち着いているのに、なぜか心がザワザワする感覚が続いている。

娘との関係だけは平穏で、この冬休みは毎日のように娘のテニスの練習に付き合っている。ここ数年の間、いつも「これが最後かもしれない」と思いながら球拾いをしていた近所のテニスコートで。

昔は、練

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同じ失敗をしない。できる限り…

同じ失敗をしない。できる限り…

「失敗はどんどんしてもいい。でも同じ失敗はするな。新しいことに挑戦して、新しい失敗をしろ」と、私の元上司に以前言われたことが、ずっと心に残っている。もちろん彼は仕事の話をしていたのだけど、人生すべてに当てはめられる気がする。

失敗は成功のもと、とも言うし、失敗は誰でもするものだから仕方ないけど、同じ失敗は繰り返さないようにしたい。失敗から何かを学んでいれば、同じ失敗はしないはず。同じ失敗を繰り返

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娘との会話

娘との会話

自分の好きなことや大切なものをよく分かっている娘が、勉強が好き、と言った時は少し驚いた。高校生くらいから、いつも勉強ばかりしているとは思っていて、親の私が、もう勉強はやめて一緒にテニスの試合(またはアニメ)を見ようよと娘を誘う、という謎の関係だったけれど、やらなければいけないからではなく、好きだから勉強していると知って、納得した。宿題がない休みの間はつまらない、と言うのだから驚きだ。私も何かを学ん

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息子との会話

息子との会話

息子が高校生の頃、親知らずを抜いた。ここアメリカでは大抵、全身麻酔で一気に4本を抜く手術になるので、付き添いが必要で私が付き添った。手術の後は、強い痛み止め薬の影響で酔っ払いのような状態になるということを知らなかった。あまりにも息子の様子がおかしいので、初めは驚いたけれど、すぐに薬の影響だと気づいた。聞きもしないことを一人でベラベラと喋る息子に苦笑い。その時、息子が「僕は子どもが欲しい。二人!男の

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