Taichiken

元外資系ビジネスマン。人生2毛作を標榜し、東京から信州に移住。新しいことに挑戦しつつ、…

Taichiken

元外資系ビジネスマン。人生2毛作を標榜し、東京から信州に移住。新しいことに挑戦しつつ、執筆活動も行う。 ライフスタイルから人生、社会問題まで新しい価値観を求めて、今までに経験したトピックスを中心に綴っていきたい。

最近の記事

第9話 ショートストーリー「相棒」

1.11月に思うこと  北アルプスの山々の紅葉はあっという間に松本盆地にまで滑り降りてきた。松本城公園の木々も赤や黄色に色づき本格的な信州の冬がすぐそこまで来ている。ぶどうやりんごといった豊かな実りの秋を楽しんでいる内に季節はもう変わろうとしていた。村山隆二が迎える3年目の信州の冬であった。松本は隆二にとって元々、縁もゆかりもない街だったが、信州に旅した時に篠ノ井線から見た北アルプスの光景に一目惚れして引っ越してきた。  隆二は今までにも何度も家を変えていた。仕事や会社が

    • 浅間山の麓から 第8話 エッセイ「ユッカと私の再生」

      ワインやウイスキーには高価な年代物があるが、我が家には年代物の観葉植物がある。今年で買ってから33年経っているユッカだ。今も我が家のリビングで一緒に暮らしている。 ユッカとの出会いは私の独身時代に始まる。近くのスーパーの園芸コーナーで買ったユッカだった。当初は30センチほどだったユッカは我が家の南側のリビングで温かい日差しをあびてすくすく育ち3年ほどであっという間に2倍以上の高さにまで成長した。 その後、私は結婚してマンションを購入し千葉から東京へ転居することになった。当

      • 浅間山の麓から 第7話 ショートストーリー「半年遅れの墓参り」

        下平健太は緩やかな霊園の階段を登っていた。東京の西、多摩にあるその霊園はJRの駅からバスで30分ほど宅地と武蔵野の林の間を走ったところにある小高い丘の上にあった。暖かな5月の晴れた日。空は広く青く、ゆったりと雲が流れている。 「不義理をしていた自分を赤羽さんは許してくれるだろうか。」健太は階段を一歩一歩登りながら考えていた。霊園にはほとんど参拝者はいない。段々畑のように広がる区画の中で一番奥にある、広く武蔵野丘陵が見渡せる頂上の区画に赤羽家の墓はあった。 墓の前にたどり着

        • 浅間山の麓から 第6話 チャイとノアの話

          1.チャイとノア 家には2匹の犬がいる。名をチャイとノアという。チャイは全身が茶色なのでチャイ、ノアはノアの箱舟からノアと名付けた。チャイは12歳、ノアは2歳。彼らが生まれた日は知らない。 チャイは栃木県那須の知り合いのレストランに迷い込んできたのをオーナーが保護し、紹介された。那須では別荘族の中に夏休みが終わり要らなくなった犬を捨てるという話をよく聞く。チャイもたぶん、そういった種類の犬ではないかと思っている。当初チャイは人間を警戒してなかなか懐かなかった。信用していな

        第9話 ショートストーリー「相棒」

        • 浅間山の麓から 第8話 エッセイ「ユッカと私の再生」

        • 浅間山の麓から 第7話 ショートストーリー「半年遅れの墓参り」

        • 浅間山の麓から 第6話 チャイとノアの話

          浅間山の麓から 第4話 信州の特別な朝食

          信州の特別な朝食 ふと、目を覚まし時計を見ると5:45を少しすぎていた。快晴。窓からはもう青い空と浅間山が見える。浅間山の頂上から今日は噴煙が見えない。裏庭の木では、キビタキたちがもう朝の活動を始めている。 まどろむ気分に踏ん切りをつけるようにぱっと起きて服をきる。9月に入って今日は一気に涼しくなって16度だ。半袖では寒いので薄いカーディガンをはおる。朝の準備を終える頃には6:30になっていた。 早速車に乗り込み家を出る。車のスピーカーから流れるのはユーチューブのモーニ

          浅間山の麓から 第4話 信州の特別な朝食

          浅間山の麓から 第4話 サラリーマン時代を振り返る「能力と出世」の話

          「能力と出世」の話 40年近くサラリーマンとして競争社会で働き、今少し客観的に思うのは、能力があるだけでは出世できないということだ。 私は人事を長くやってきた。仕事柄ものすごくたくさんの面接をした。その数は3000人を超えるだろう。また、多くの能力のある人を見てきたし、人の出世(処遇)に関わってきた。その中では、能力があると思う人でも偉くならないケースもたくさん見てきた。 能力があるということはもちろん出世(処遇)の上で重要な要素の1つだが、それだけで出世できるわけでは

          浅間山の麓から 第4話 サラリーマン時代を振り返る「能力と出世」の話

          浅間山の麓から 第3話 コロナが私に問いかけるもの

          コロナが私に問いかけるもの 社会全体にものすごい閉塞感がある。行動が規制されているだけでなく、状況に改善の兆しが見えないこと。ワクチンを巡っての社会の分断。政治不信。貧困者と富裕層の断絶。経済の停滞。 社会全体の様々な問題に対するストレスのみならず、個人としても誰一人として我関せずにはいられない。つまり、いのちの問題として感染しないこと、感染させないことに日々最大限の注意を払わなければいけない。 このような閉塞感の中で心をどう平静に保っていくのか、あるいはヘルシーでいる

          浅間山の麓から 第3話 コロナが私に問いかけるもの

          浅間山の麓から 第2話 Gさんとの別れ

          Gさんとの別れ 2020年の師走に入った頃、突然喪中はがきでGさんの逝去を知った。私はあまりのことに一瞬、頭が真っ白になり、しばらく郵便受けの前で立ち尽くした。 Gさんと私の付き合いは17年前に始まる。彼は世界有数のヘッドハンター会社のスカウトだった。私は20年努めた日本企業から初めての転職を考えていて、彼は新しい会社を紹介してくれた人だった。この時の外資系企業への転職によってその後の私の人生は大きく転換した。彼は私にとってまさに運命を変えてくれた人だった。 彼は私と同

          浅間山の麓から 第2話 Gさんとの別れ

          浅間山の麓から 第1話 東京脱出

          東京脱出 大学以来、今までの人生の殆どを暮らしてきた東京から引っ越すことにした。いくつかの理由がある。会社を辞めたこと、60歳を過ぎたこと、コロナが蔓延したこと、身近な友人が亡くなってこれからを考えたことなどなど。引越し先は長野県軽井沢。5年ほど前から別荘を持っていたところだ。 引っ越すにあたって新しい家を建てた。軽井沢のはずれ、追分というところだ。近くには浅間サンラインがあり、上田までのすばらしいツーリングを可能にしてくれている。私の部屋からは浅間山の頂上が見える。晴れ

          浅間山の麓から 第1話 東京脱出

          セカンドハーフ通信 第125話 夏の果物プルーン

          夏の果物プルーン この時期、信州ではプルーンが店先に並ぶ。プルーンといえばあまーい乾燥したものしか知らなかったが、ここにきて生のプルーンを知った。 生のプルーンは歯ごたえがあり、すこし青りんごのような食感だ。熟しすぎたものよりも紫に少し青みがまざった色合いの頃にかじるとしゃきしゃきとしてうまい。 車を走らせて農産物直売場にいくと様々な種類のプルーンがある。農家が自宅で少量作っているものもあるのだろう。ルミナス、サンタス、アーリーリバー、ツアー、オパールと色々食べてみる。

          セカンドハーフ通信 第125話 夏の果物プルーン

          セカンドハーフ通信 第124話 カルピス

          カルピス 夏になると汗をかくので、冷たい飲み物が欲しくなる。昼の部はノンアルコールということで主に麦茶やミントティーを飲んでいるが、物足りないと思うときはなにがいいかと考えていた。 最近になってカルピスを飲むことが復活した。復活したとは、子供のころにカルピスをよく飲んでいたからだ。家に来るお中元には必ずカルピスがあり、わくわくしていたのを思い出す。 大の大人がカルピス?とも思うがフリースタイルでよしとする。 カルピスは水玉模様のパッケージがなんとなくモダンなイメージだ

          セカンドハーフ通信 第124話 カルピス

          セカンドハーフ通信 第123話 本場のタイ料理

          本場のタイ料理 軽井沢のとなり、小諸に大好きなタイ料理の店がある。正確にいうと、タイの食料品屋さんがあって、その一部が食堂になっている。この辺りにはタイから日本にやってきた女性が多く住んでおり、タイ料理の店も多い。 その店の料理を私は本場のタイ料理だと考えている。いままで東京で食べてきたタイ料理とは明らかに違うものなのだ。 どこが違うかというと、例えば市販のカレールーで作ったカレーとインド料理店のカレーの違いのようなものだ。ここの料理にはたくさんのフレッシュな香辛料が使

          セカンドハーフ通信 第123話 本場のタイ料理

          セカンドハーフ通信 第122話 わんこの病気

          わんこの病気 うちのわんこが急に歩けなくなった。正確に言うと右下肢が麻痺してびっこを引いている。急いで動物病院にいくと、椎間板ヘルニアではないかということだった。しばらく安静が必要で、レントゲンも落ち着いてからにしましょうということになった。 とても元気でどちらかというと落ち着きのないわんこだったが、家の中で静かにしていなくてはいけない。家の中を放し飼いにしているので、自由に上り下りしていた2階の階段や窓際の作りつけのテーブルの周りにゴムの線を張り巡らせ、立ち入り禁止にし

          セカンドハーフ通信 第122話 わんこの病気

          セカンドハーフ通信 第121話 特別なブドウ

          特別なブドウ この時期が来るのをずっと楽しみにしていた。特別なぶどうが少しずつ店頭に並び始めるからだ。その名はナガノパープル。長野県だけで生産されている特別なぶどうだ。 ナガノパープルは種無しで、皮も食べられる大粒ブドウだ。1粒が直径2-3センチくらいある。だから数粒でも結構食べた感がある。糖度が高いけれど、巨峰に比べるとさわやかで、品のある甘さが特徴だ。 4年前に初めて食べて、そのおいしさに衝撃を受けた。本当に食べる宝石と呼ぶにふさわしい。 毎年8月下旬になると長野

          セカンドハーフ通信 第121話 特別なブドウ

          セカンドハーフ通信 第120話 軽井沢の夏

          軽井沢の夏 軽井沢も本格的な夏を迎えている。標高1000メートルではあるが、昼には30度まで上がるのでかなり暑い。さすがに木陰にいくと高原の涼しい風を感じることができる。 東京との違いは夜になると一気に気温が下がることだ。20度近くなるので熱帯夜ということはない。だからクーラーなしで眠ることができる。 私の一番好きな時間は夕暮れ時だ。夕方5時から6時ごろ、まだ空は明るい。太陽は水平線の近くまで下がっているのでその存在が気にならない。太陽の光を斜め下から受けて、空が美しい

          セカンドハーフ通信 第120話 軽井沢の夏

          セカンドハーフ通信 第119話 ジャーナリストの特権と責任

          ジャーナリストの特権と責任 最近の報道を見て、改めてジャーナリストとはなにかということを考えている。ジャーナリストは様々な媒体を通じて世の中の出来事を自分なりの視点をそえて社会の多くの人に伝えることがその使命だ。 事件が起きるとその現場に入ることができる。また、その当事者に質問をすることができる。そしてその内容を記事として社会に発信することができる。これらはいわばジャーナリストの特権だ。 特権をもつ一方で、ジャーナリストが守らなくてはいけない社会的責任がある。情報を得る

          セカンドハーフ通信 第119話 ジャーナリストの特権と責任