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浅間山の麓から 第7話 ショートストーリー「半年遅れの墓参り」
下平健太は緩やかな霊園の階段を登っていた。東京の西、多摩にあるその霊園はJRの駅からバスで30分ほど宅地と武蔵野の林の間を走ったところにある小高い丘の上にあった。暖かな5月の晴れた日。空は広く青く、ゆったりと雲が流れている。
「不義理をしていた自分を赤羽さんは許してくれるだろうか。」健太は階段を一歩一歩登りながら考えていた。霊園にはほとんど参拝者はいない。段々畑のように広がる区画の中で一番奥にあ
セカンドハーフ通信 第124話 カルピス
カルピス
夏になると汗をかくので、冷たい飲み物が欲しくなる。昼の部はノンアルコールということで主に麦茶やミントティーを飲んでいるが、物足りないと思うときはなにがいいかと考えていた。
最近になってカルピスを飲むことが復活した。復活したとは、子供のころにカルピスをよく飲んでいたからだ。家に来るお中元には必ずカルピスがあり、わくわくしていたのを思い出す。
大の大人がカルピス?とも思うがフリースタイ
セカンドハーフ通信 第121話 特別なブドウ
特別なブドウ
この時期が来るのをずっと楽しみにしていた。特別なぶどうが少しずつ店頭に並び始めるからだ。その名はナガノパープル。長野県だけで生産されている特別なぶどうだ。
ナガノパープルは種無しで、皮も食べられる大粒ブドウだ。1粒が直径2-3センチくらいある。だから数粒でも結構食べた感がある。糖度が高いけれど、巨峰に比べるとさわやかで、品のある甘さが特徴だ。
4年前に初めて食べて、そのおいしさ
セカンドハーフ通信 第120話 軽井沢の夏
軽井沢の夏
軽井沢も本格的な夏を迎えている。標高1000メートルではあるが、昼には30度まで上がるのでかなり暑い。さすがに木陰にいくと高原の涼しい風を感じることができる。
東京との違いは夜になると一気に気温が下がることだ。20度近くなるので熱帯夜ということはない。だからクーラーなしで眠ることができる。
私の一番好きな時間は夕暮れ時だ。夕方5時から6時ごろ、まだ空は明るい。太陽は水平線の近くま
セカンドハーフ通信 第119話 ジャーナリストの特権と責任
ジャーナリストの特権と責任
最近の報道を見て、改めてジャーナリストとはなにかということを考えている。ジャーナリストは様々な媒体を通じて世の中の出来事を自分なりの視点をそえて社会の多くの人に伝えることがその使命だ。
事件が起きるとその現場に入ることができる。また、その当事者に質問をすることができる。そしてその内容を記事として社会に発信することができる。これらはいわばジャーナリストの特権だ。
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