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バッキュン

僕たちは冷たいシャッターに閉ざされた軒先の長いおばんざい屋の前でしゃがみ込んでいた。 「君のこと好きじゃなくなってもうてん。」 僕は睡眠不足とアルコールで緩んだ脳みそを何とか奮い立た後、彼女には気づかれないようにだぶつく胃袋をさすった。 「別れたいと思ってる。最近、私は君の話を100%の興味を抱いて聞けなくなってきてるし、君は私が聞いて欲しい時に話を聞いてくれなかった。君は私の癒しにはならない。 あと、君って周りにすっごく気をつかうやんか、私は常に人間丸出し、丸裸の人が

    • 雑記①

      ・荒々しさとか猛々しさを失った男なんてツノのない悪魔、牙がない狼、やる気のあるナマケモノと一緒だよ。 ・Japan Railways(JR)のことをジュニアと呼ぶ男。 ・頭も心も弱いもんだから手がつけらんない。 ・つづきまもる君。 ・クリトリスのクリはクリティカルのクリ。 ・つけまつげは死んだ

      • サンライズカラー①

        四楽八楽、七転び寝起きで大切な試験準備期間を消化しかけていた。 「学ぶために生きると書いて学生なのだ。今のお前は何者だ?」と月並みな自問で自尊をくすぐるものの「ぼくはぼくでーす。それ以上でも、それ以下でも、ましてや、それ以外でもないのですよ。すまみせーん」と前頭葉は舐めた態度で怠惰を決め込んでいる。 口を流れる緩い甘みと迫真を絵に描いた映画くさい演技は、リビングソファに深く腰掛ける僕を寝かしつけた。 ✳︎ 悲鳴にも近い女の怒声で飛び起きた。 「あんた大学にいくらかかってる

        • エロ

          男は助平なもんで、濃ゆい女の表情を愛してやまない。舌先で鼠径部を三十分以上。女を焦らしに焦らしぬいていた。 臨界はとうに超えていたが、二人の初めてということもあって、女はじっと堪えた。部屋中に少しずつ漏れ出た吐息は薄く、ゆっくりと広がっていく。 堰き止められた電気回路は今にも暴発しそうだった。快楽と苦痛は遠いようで近いところに存在し、互いを引き立て合う。 男は中央を目掛けて進み始めた。ただ、核心はつかず、執拗な迂回を重ね、挑発を続けた。 「私に殺されたいの!?」 皮

        バッキュン

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        • オレンジブラウンリップス
          5本
        • 枕元
          3本

        記事

          目を開けるのが億劫だった。今朝、僕は意識と無意識の間でレースカーテンに薄められた陽光を享受しながら、和膚が巻かれた彼女の腿へ左耳を押し当てていた。彼女の膝の少し上から紙を捲る乾いた音が、一定の間隔で僕の右耳へ落ちてくる。なんとも心地よい感じが身体中に広がっていった。 最中、僕の意識は幸福の中へ溺れ、目を覚ます頃にはこれら全てを綺麗さっぱり忘れていた。 僕がこの幸福を思い出したのは、彼女が絵を描くその指を、表情を盗み見ていた時だった。 うなり、手を止め、描く。少し上を向き、手を

          サイゴノデート×ト×ジサツ

          傾く太陽から注ぐ西陽が、生まれたてのこまい木枯らしを照らしていた。台東区立浅草小学校と書かれたキーホルダーをランドセルにぶら下げた裸足の少年と彼の手を力強く握る少女が目の前を横切った。 「信じらんない!」 少女は怒っているようにみえたが、きつく結んだ小さな手から「絶対離さないからね」という柔らかな意志を感じた。僕は彼女の丸っこい手に不恰好な愛情を感じた。 ただ、少年は彼女へ返す表情やら言葉を持ち合わせていないのか、息絶えた巨大カジキのように何処までも引かれていくだけだった

          サイゴノデート×ト×ジサツ

          告白

          僕は感情と理性とを区分けして、整然と頭の中へ、言葉として並べることができないから、君を彼女と重ねることをやめられない。 さっきまで軽快に踊っていた操り人形の糸が突如として、すべて断ち切られるように、君が果てしない何処かにいること、君が思い描く理想とは程遠い誰かであるということを自覚してしまいそうで、言い知れぬ恐怖を感じる。 それは、ほとんど死ぬことのそれと同じだ。 だから、僕は君に好きと言うし、君を強く抱くし、、、 ただ、そんなものは欺瞞でしかないのかもしれない。

          セーブポイント

          「好きだなあ。えーと。今のはね、変な意味の好き。病める時も健やかなる時も一緒にいたいなあの好きで、たまきさん僕と付き合ってくださいの好き。です。」 薄暗い小道でぽつりぽつりそんなことを伝えた。 後、数十歩進むと、大通りがある。 道路の両脇に添えられた背の高い街灯、無数のヘッドライト、嫌でも目につく色合いの大手飲食店の看板がある。 それらが落とす強い光に当てられた二人とそうでない二人。この違いを心得ないほど、僕はウブでも子供でもなかった。 しばらく、小道を二人で意味もなく歩

          セーブポイント

          女セリフ

          何に、何処に使うかは決まってないけれど、女性に言わせたいセリフ。 「早く大人になりたいと思って。」 「いつになったらくたばるの?」 「さぁて、生きますか。。。」 「顔がタイプなもんで。」 「あなたはワタシのこと生まれる前から好きじゃないの?」 「今からやきもち妬くからね。」 「とち狂っちゃうからね、ワタシ。」 「一生溺れてやるから。」 「さもないとぐれちゃうぞ。」 「ワタシの薬指が欲しいの?」

          女セリフ

          オレンジブラウンリップ⑤

          外は賑やかだった。 「アゲハチョウのやつだよ!」 「セフレ!」 「やけつく!」 夜は深まり、会話の断片と大きな笑い声が飛び交っていた。無遠慮な雑音、眩いだけで品のないライトと冷たい夜風は、先ほどから二人の間を漂う甘美なそれを剥ぎ取るには充分だった。 「もう少し飲もうよ。」 沙梨の口から淡と語られたその言葉は、それ以外の選択は許さないという重みを孕んでおり、従わなければ、一緒にいることはないという宣告を暗に佑月へ突きつけた。 佑月は二人の行き先を思い違い、浮き立って

          オレンジブラウンリップ⑤

          おでけけ①

          小田急線藤沢行き快速急行は朝の7:30だと言うのに空いている。 まばらに座席が空いており、他人に席を譲るか譲らないか、あいつはこの駅で降りるのか降りないのかといった心理戦で頭を悩ませることもなかった。 こんな平和な列車が行き着く終点藤沢駅は、絶対に良いところだと訳のわからない合点をして、今日という日に好感が持てた。 藤沢駅に到着。「なんだ藤沢って海見えないじゃん」。好感度が少し下がる。 ふと、昨日の水餃子は我ながら美味かったことを思い出した。 我ながらと言いつつ、ネットに

          おでけけ①

          あ焦がれ

          「嫌いなものは嫌い」。は苦手だけれど、「好きなものは好き」。が得意な人がいた。 それは、ほとんど初恋だった。 女の酸いも甘いも、醜いも美しいも、一通り経験した上で、初めての恋をしたのがその人だった。 人に理解されないこと、馬鹿にされることをとかく恐れていた僕にとって、彼女は鮮烈だった。あれは恋でもあり、憧れでもあったと今になって気付く。 そんな彼女を引きづり散らかしているわけだけど、後悔はない。 確かに僕の行動は幼稚で、押し付けがましかった。これまでの自分では考えられ

          あ焦がれ

          ニンゲン

          「つまらない。人としての魅力ないよね」。 手痛い失敗を経て、こんな想いはもうするまいと必死に自分を育てた。 七年経った。今までにないものを感じるようになったし、見えないものも見えるようになった。行ったこともないところにも行くようになったし、それっぽいことを語るようにもなった。 一言で僕の世界は広がった。はずなのに、段々と狭まっている事に気がついた。 面白いと思う人が減った。良い人も減った。おしゃれな人も減った。尊敬する人も減った。愛する人も減った。自分の好きが増えれば

          ニンゲン

          オウムガエシ

          坂本裕二作品で見られる男女のオウム返し。 「お天気ですね。」 「お天気ですね。」 「このパン美味しそうですね。」 「このパン美味しそうですね。」 「明日は雪、降りますかね。」 「明日は雪、降りますかね。」 単調な会話であるはずなのに、どこかに暖かいものが隠れていて、僕はそれをロマンチックだと感じてしまう。 いつも僕は会話を頑張る。 相槌は欠かさないし、リアクションも気持ち大きめに取る。自分が話す時は身振り手振りを加えて、場面に応じて声色を落としたり上げたりする。 会

          オウムガエシ

          甘ったるいだけで甘いもんじゃない

          甘ったるいだけで甘いもんじゃない

          趣味で殴っても痛がらない人 趣味で殴られても痛くない人

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